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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二部:管理・整備が始まるよ
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こぼれ話:弟は上京するそうだ②


 マンションから10分ほどの場所にあるカフェで軽く昼食をとることにした。

「午後は家電探してショッピングセンターに行く?」

「そうね、今日不動産屋巡りして明日買い物して明後日観光して帰る予定だったけど。カーテンとか家電もある程度揃っていたし、時間空きそうね」

「マンションの周辺見て回って必要なところ確認してもいいんじゃない? それか観光を増やすとか、インテリアに凝ってみるとか……あ、インテリアと言えばショッピングセンターで買うかインテリアショップで買うかどうする?」

弟と言っても随分長く離れて暮らしていたのでどんな趣味しているのかはさっぱり分からない。引っ越し費用より買った方が安いと思うのでこっちで買うのだろう。

「寝具とタンスと机くらいでしょ? ショッピングセンターね。どうしてもって言うなら後で自分のお金で買いなさい。いくら国公立でもアパートのお家賃なくなっても一人暮らしだから出費と仕送り辛い」

「気にしないよ。シンプルイズベストだ」

そうだね、家賃分なくなっても生活費は必要だから。

「本棚も必要かな? あと…バス用品とかタオルとかはないから。シャンプーとか……」

「そこは統也の趣味で買って貰いましょ。それはいいとして、何時から上京して構わないの? すぐ荷物送っても大丈夫?」

「日付と時間指定で連絡……いや統也が受け取ればいいんじゃない? 荷物送ってすぐこっち来るとか」

「わかった」

「兄さん、こっちに少し慣れたいから早めに来ても大丈夫?」

「うーん、4月になったら多分こっち見に来られなくなりそうだから早めの方がいいかもね。その時には鍵も渡しとかないと」

初めてのお祭りの準備で色々と指示がありそうなので、今から心配だ。家は住まないと痛むと言うし、空けているより早めに住んでもらった方がいい。

「お待たせしました~」

店員さんがランチを運んできた。ワンプレートにスープとドリンクの付いたセットだ。

「わーい」

「いただきまーす」

車酔いに苦しんでいたとは思えない程喜んで飛びついた。

「そういえば兄さんは自炊?」

「前は自炊だったけど今は作って貰ってる」

式神に、という言葉は飲み込んだ。

「寮だったね。寮の食事ってどんな感じ?」

「普通。ご飯に主菜と小鉢と汁物、くらいかな。他の人は結構凄いの頼んでる人もいるけど」

「凄いのって?」

「寮の下に日本料理の高級なお店が入っているの。そこに頼んで食べてる人もいたけど、それは小市民の俺としては無理だった」

「えー」

「兄さんの所って給料良いの?」

「うん。出来高制で取り分7割か8割くらいかな。料理に凝る人は凝るけど俺はあんまり、もう切って煮込むだけとか切って炒めるだけとか」

一人暮らしを始めて最初は真面目に自炊していたが1年も経たないうちにほとんど一品料理になっていた。一人前で食材を腐らせないようにっていうのは結構難しい、母の凄さを思い知ったよね。

「最初から色々揃えるより必要になってから買い足した方が良かった?」

「そうだね、鍋2つとフライパン位あれば。結局使わない物とか場所とるだけだし、これに使いたいってなったら買えばいいんじゃない?」

最初にないと困るもの以外は不便さを感じてから買えばいいと思う。母は必要物品のメモを整理している。

「ねぇ兄さんっていつもこんなおしゃれな所で食べてるの?」

「いや、ほとんど自炊か寮で作って貰ってる。こういうカフェに来るのは少ないかな。同僚と行くならレストランだし上司や関係者と行くなら日本料理だし」

カフェは基本チェーン店ばかり、同僚は天司や赤井・穴井など、上司と関係者は主に補佐と志津さんと茶会の関連だ。居心地が悪くて仕方なかった高級な店も仕事用の外面を被っていれば慣れてきた。特に志津さんには箸の持ち方をきっちり矯正された。

「さっき言ってたみたいな? 高級レストランとか行ってみたい!」

「私も! 高校のマナー講座でちゃんと習ったんだよ」

翠と渚はロイヤルミルクティーを頼んでいた。

「今度ね」

「こらこら、やめなさい」

「えー」

「せっかく来たのにー」

母は止めるが妹たちは不満、統也は苦笑いしている。

「いいお店は予約が必要なんだよ。今日は金曜だし週末は混むしね」

「それにいいお店に入るにはそれなりにおしゃれな恰好じゃないと駄目なのよ? そんな格好して入ったら針の筵じゃない」

母はよくわかっている。一度だけ物凄く場違いな格好をした人を見たが、あれは心臓に悪い。

「スニーカーとジーンズはやめようね。行きたいなら準備を整えてからだよ」

「ドレスコードって奴だろ? 僕も一応習ったけど実際使ってみないと覚えないよね」

高校のマナー講座なんてそんなものだろう。

「あ、スーツは買ったの? 入学式はスーツだよね?」

「買ったわ。今補正に出している所よ」

「あとちょっと足が長かったらなぁ」

弟よ、それ典型的な父方の体型である胴長短足を受け継いだ俺に言わないで。君は母方の血が混じっているだけまだマシなのだから。聞けば2センチ程裾上げしたそうな。身長7センチ違うのに座高一緒ってなんだよ、それ俺の足が短いってことだよね!?

「もう、ちょっと浮いたから連れてきてあげたけど、そうそう贅沢できないのよ?」

母が困ったように言う。

「浮いたって何が?」

「統也が前期で合格したから後期に予定していた受験費用が浮いたのと、征也が年末にくれた分で2人分の飛行機代できたこと。本当は連れてこない予定だったのに」

「2回上京って前期と後期ってことだったんだね」

「家出るなら国公立しか駄目だって言われたよ。一応滑り止めに私立も1か所受けたけど」

仕方ないか。奨学金借りても就職どうなるか分かんないし、リスクを回避する方面で進んだようだがちゃんと国立に受かったので良かったのだろう。征也がどこまで手出ししてもいいか分からないし。

「さて、そろそろ食べた?」

「うん」

「もう出る?」

「じゃあ、行こうか」

もだもだしている征也を気にせずに、一行は綺麗に食べてしまって店を出る。

「いつ引っ越して来る? 家電とかの配達の日時は自分で受け取れるように設定しておいて欲しい」

「忙しいの?」

「うん、4月の中旬までは。ああお祭りがあるから統也は暇だったら見に来るといいよ。お祭りっていうか桜のアトラクション? を担当している。周りの桜は散ってる頃だけど満開の桜が見られるよ」

お祭り自体は神社の方でやってくれる。



 まずはショッピングセンターで家具を買う。ブラウンのシンプルなデザインでまとめ配達依頼、来週の末には引っ越しするそうな。色々買っていたが全部まとめて配送なので持って帰るものはない。

 次に電気屋に行って洗濯機を買う。そこはすんなりいったが、次のパソコンを買う場面で頭を抱えていた。うん、高いよね。

「征也のお古とかないの?」

「ごめん、前の壊して今使ってるのしかない」

「」

「予算足りない?」

「そうね。これにするの?」

もうひとランク安い方をちらちらと見ている。だが母よ、よく見るんだ。全然スペックが違うだろう。

「……統也、そのうち節約して生活費から返してくれ。俺が出すよ、母さんそっちはスペック違う、落ちる」

あんまり手出ししない方がいいと思うんだけどなぁ…これも先行投資か。征也も機械に強い方ではないが、坂宮と松本の話を聞くうちに理解できるようになったものもある。

「…ごめん兄さん、お願いします。お金貯めたら返す」

統也は征也より知識があったのだろう、青くなっていたのが元のように生気が戻って来た。使えなくはないが使い勝手には大分差が出るのだ、同じことするにも時間がかかるだろう。

「しょうがないわねぇ」

多分今夜のお宿で違いについての解説があるだろう。

「はぁ~。買い物、長かった…………」

「お疲れ、流石に僕も疲れた」

母と妹たちは見るだけだと言って美容機器の所を見に行っている。

「……女って凄いね」

「……全くだよ」







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