その、五十九 適応力を考えて作ってね
出雲から帰ると、今度は寒いエリアの配置と育成に取り掛かった。
帰ってすぐに多数の式を使って暑いエリアを見回らせたが特に問題はなく、枯れることなくきちんと育っているようだった。
式たちは植物の入力を終えて、霊薬レシピと作成方法の入力を進めている。
「お久しぶりでーす」
辻本がやって来た。霊課以外の皆様は洞窟エリアで苦戦し、デパートエリアに入ったのはほんの数人らしい。
薬草エリアには魔物が館のみしか出現しない予定で、地道に配置を頑張っている。館は北の館と東・西の館が向かい合う形で固まって設置し、北の館の2階に上の階から降りてきて東・西の館で魔物を倒して鍵をそれぞれ受け取ってその2本を合わせることで北の館の地下から次のエリアに行けるようする。東の館は主人と執事、西の館は女主人とメイドがいる。
「と言う感じでどう?」
「そーですねぇ。……上の階の暑いエリアはもう少し衣装を考えません? 暑い地方の服装に」
「うーん、……アラビア系とか? そこは辻本君に任せよう」
「分かりました。寒いエリアは西洋風の衣装で問題なさそうですけど。
そうだ、仔ギツネコ呼び出し機能とか付けませんか? 主人に薬草の知識を語って貰って作りたくなる人もいるでしょうし」
「そうだなぁ、付けておこう」
各館の主たちは『知る能力』で仕入れた薬草の知識や調合・霊薬の使用方法や栽培方法などを入れてある。術者の皆様に語って貰えたらと思う。
「……ところで、ここまでたどり着けないと苦情が来そうですが、その辺りはどうします?」
「あー、うん。それね。補佐が色々考えているみたいだけど、霊薬作れる人って少ないらしい。それで講座を設けて終了した人に卒業記念みたいに直通の鍵を渡したらどうかって」
「ああ、確かに知ってる人は知っている、みたいなところがありますからね」
「まぁ、とにかく俺らは配置と育成を進めよう。とりあえず武家屋敷の日本庭園エリアまで」
「ですね」
地味にダメージを受けながら進んでいく。
「津田様、時間あるかニャ?」
第二ダンジョンを任せているキツネコが肩に降りてきた。
「何? 何か問題あった?」
「人は変化に弱いニャ? 熱いエリアの湿度差と寒いエリアの温度差で体調崩さないと良いニャ?
それ薬草も採って移動するときに悪くならないといいニャ?」
言われるまで作成に必死で気付かなかったが十分ありあえる事態だ。各所に配してある館の中はエアコン効いているしと思ったが、それも体に良くないかもしれない。
「……どうしよう……」
まだオープンしていないため考える時間はあるが、術者の健康と命に関わる重大な欠陥だ。
「どうするべきか…………キツネコ、分身の術とかできなかったよね? 霊珠貰って薬草採って来るとかなしだよね?」
頭を抱えている征也にキツネコが
「新しく作ればいいニャ。暇なときは薬を作ってダンジョンの家で売れば時間の無駄にもならないニャ!」
と胸を張って提案する。
「そっかー」
実はキツネコ、第一ダンジョンのコンが部下がいることが羨ましいのだ。そんなことは表に出さずせっせと新しい式を勧める。
「薬草を取って来るだけの奴でなくとも、育成の調整や気候の調整も頼めばいいニャ? そうすればエリア内を回るから倒れている術者も館に運べるニャ?」
「そっか、放っておけって言われそうだけど後味悪そうだよね。
キツネコ……キツネコ……仔ギツネコ?」
「それでいいニャ」
言外に『津田様にセンスは求めていません』と聞こえた。
「何匹必要? 薬草採りに行くの2匹くらいいた方がいい?」
「ニャッ!」
はい、がニャになるのは仕様だ。
「あと育成担当と気候担当?」
「ニャッ!」
「ダンジョンの家での販売担当もいる?」
「ニャッ!」
「その位?」
「ニャッ! 全員に霊薬作成機能も付けるといいニャ!」
「そうだね。ついでにどこか霊薬を作れる場所をつけようか。キツネコたちの控室みたいな」
「ニャッ!」
キツネコの顔がぱっと輝いた。
「『狐さんのおうち』の反対側にどうかな?」
「ニャッ! 『狐さんのおうち』みたいなのがいいニャ!」
寝殿造りが気に入っているのか。中は結構現代的だが。
「今度また考えてみるから出来たらまた見てくれ」
「ニャッ! じゃあダンジョンに帰るニャ!」
「ああ、ありがとう」
キツネコは上機嫌で帰って行った。
その後、辻本にも相談して5匹の仔ギツネコを作成することに決めた。
「源氏物語の六条院風で用意してみた」
キツネコたちは大喜びで、不公平にならないように第一ダンジョンのコンたちにも邸宅を用意した。
思わず気脈の流れも任せたい気分になったが、そこは自分の仕事だと思いとどまった。
黄泉も王庁も1か月点検も3か月点検も気脈が滞った様子はなく問題なしだ。使い勝手も特に問題はないという話だった。




