表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二部:管理・整備が始まるよ
58/70

その、五十五 やっと2人目






 本日、治癒の茶事の日である。不測の事態に備えて会議室に待機しながら、カフェの方の進行状況を安倍に聞いている。

「工事についてですが……」

 厨房の工事とカフェと茶室の間に仕切りを入れ、2階の貸し切りが出来るようにと仕切りにするウォールドアが取り付けられた。

 元々2階には茶室と立礼席、茶の湯の関連の本を収納した小さな図書館が置かれ、それ以外の場所は今の会議室のように自由に使う予定だったのだ。茶室は予約制で一般開放、広い場所はカフェ、図書館も一般開放することにして少し本棚と冊数を増やした。

「後は上の階の内装と動線の確認・従業員教育を終えれば大体終了です。オープンは10月の第四月曜日を予定しています」

「月曜日にオープンですか?」

「ええ、ここは住宅街で大学も近くにあることから、競合する店のない平日の朝のお客様が一番多いと見込んでいますから。逆に休日はダンジョンの方ばかりで客足も少ないかと見越しています」

「ああ……朝から食べる所がないって作ったんですよね。分かりました」

営業は年中無休の予定だが、お祭りのときは定食がなくなると言う。

「本当は11月に予定していたのですが、皆さま待っていらっしゃるようなので」

「この付近、朝は少ないですからね。パンはあるけど」

胃に優しいがガッツリご飯が食べたいと言われているのだ。今も工事が終わったばかりの所で今度厨房担当となる人に無理を言って、おにぎりだけでもと受付に届けて貰っている状態だ。うん、みんな食い意地張っているからなー。

「はい。

 それと別件ですが、本日4回目の狐召喚の試験があります。

 召喚の志願者はほとんどが治癒の茶事を希望しているので、別に茶会の日を儲けるよりも連日の方が目立たないだろうと言う配慮です。

 もしこれ以上見つからないようであれば、年明け以降に補佐がもう少し条件を緩和したものができないかと相談にのるそうです」

「分かりました。松林さん一人にずっと任せるのもかわいそうだしね。

 でも、狐さんのことだから出来れば今度松林さんの所にウカノミタマ様がいらっしゃるときに、一緒に話し合いをお願いしたいですね」

「ああ、それがいいでしょうね。補佐にもそう伝えておきます」

安倍が事務室に帰るのと一緒に征也は松林の報告書を見に行った。

 進化が始まってまだ数日だが、報告書の記録によると4階の攻略が上手く進んでいるようだ。感想欄に今までよりずっと楽に進軍できるようになったし、攻撃も上がり力の制御も出来るようになったとある。

『うわああああ!!』

どこかの部屋で歓声が上がった。

「な、何? どうしたの?」

思わず廊下に出てキョロキョロしてしまった。

「落ち着いてください。あちらの方向はきっと、狐の召喚に成功したのでしょう」

「あ、そうか。全然いなかったのに出たから」

安倍の言葉に征也は納得の呟きを漏らした。

『うおおおおおお!!』

歓声を聞きながら

「松林さんに早く後輩をご紹介できるといいですね」

「津田様、<狐さんのおうち>の方は大丈夫ですか?」

「大丈夫です。今日1人来るなら後家の残り6軒ですね」

「少し確認してきます」

安倍は小走りで駆けて行き、すぐに戻って来た。

「今日は2人発見されました。大学生の女性と定年退職した男性だそうです。

 女性は妹さんの病気の、男性は娘さん家族の交通事故の後遺症の治療を、それぞれ望んでいらっしゃるということです。

 茶事は明日、正午の茶事を行います」

「分かりました。

 ちょっと松林さんの所へ行ってきます。一人先輩で大変でしょうけど、他に実践で教えられる人いませんし」

「先に教えておいた方がいいでしょうね」

征也は丁度お昼休みの松林に連絡してお邪魔させてもらった。

「まあまあ、やっと後輩が出来るのですね!」

「ええ、今日は補佐が邸宅の案内と説明をするそうなので、明日以降に顔合わせをすることになると思います」

2匹の狐さんを両脇に、松林は嬉しそうだ。

「その2人も身売りしてきたのか?」

「身売り?」

「豊!」

松林は慌てて止めようとしたが、止まらず補足が入る。

「うちの頭は子どもの病気を治してもらうのと引き換えに、この仕事に身売りしたって聞いてるぜ?」

「何か人聞きの悪い言い方はやめて。

 確かに治癒の茶事は高いからこの仕事して貰ってるけど、ちゃんとお給金払ってるし、ぼったくりもしていないから! 適正価格だから!」

「おう! 信用してるぜ」

そこをキッチリ確認したかったのか、豊と呼ばれた狐はニヤッと笑った。

「明日の午後に最初気を付けることを話してもらう予定ですが、新人さんの体力と霊力次第なので時間は移動するかもしれません」

「はい分かりました。

 よろしければその新人さんの明日の予定を教えて頂けますか?」

「ええっと、今日の午前中が試験で1匹召喚して貰いました。

 午後からは邸宅の説明、その後ダンジョンに入って貰ってチュートリアル……出入りの仕方と怪我したところを直すやり方を説明。それから狐さんとの生活の話、最後に茶事の打ち合わせになります。

 明日は朝から2匹目を呼んでもらい、2匹でのダンジョン攻略の後治療。ここまでが一連のチュートリアルになります。その後家族の茶事へのお見送り、昼食となります。

 昼食の後で松林さんに来て貰う予定ですが、気力・体力・霊力が力尽きて疲れている場合は休息時間を取ります。場所はいつもの会議室です。ご一緒に狐さんが1・2匹着いて来てもらえると助かります。

 明後日以降は通常通りの、と言ってはおかしいのですがそれぞれでダンジョン攻略に着手して貰います。

 それと、相談はポチとコンにしていたんでしたよね?」

「はい、攻略はポチさんに、妖狐である皆さんのことはコンさんに相談していました。最近は4階に入ったのでタマさんにも相談させて頂いています」

「ではそっちも来て貰えるよう頼んでおきます」

「それなら安心ですね」

進化が始まって今日で9日目、5匹を進化させてようやく4階を攻略できたそうだ。今は1本目の尻尾の上限が来ていない狐さんと進化後の狐さんの経験値回収に努めながら、進化の霊力を溜めているそうだ。

「では、明日またご連絡します」

「お待ちしております」

会議室へ戻ったら既に補佐が話をしていた。

「~で、石川さんの所は娘さんとお孫さんの1人分を召喚者として稼ぐことで、もう一人のお孫さんの分はご自分で用意なさると言うことでよろしいのですね?」

「はい、出来れば娘婿がこの事故で亡くなりましたので、返済額は可能な限り少なく私がいなくなっても大丈夫なようにと考えております。返済後、孫がまだ幼いので生活費や学費の面で体力・霊力が可能であれば働かせて頂きたい」

召喚できる人は少ないため、こちらとしても是非長く勤めて貰いたい。松林が召喚者としてどの程度なのかは知らないが、松林と同じ技量で大体今の攻略ペースで進めば1人分2年程度で終わる予定だ。

「分かりました。長期をご希望と言うことでそのように計らいます。

 古井さんは全額をこちらで返済と言うことでいいのね?」

「はい。

 私も家族の生活費と妹の学費があるので長く続けていけたらと思っています」

古井さんはまだ卒業論文が終わっていないそうで、最初は土日と夕方の3時間を目安に始めるという。文系なので実験など拘束時間が厳しいわけではないのが救いだと言っていた。

 金利は固定で住宅ローン並と聞いた。住宅ローンなら数千万の世界だが数億を同じ金利とか、大変だろう。双方とも家族が全力でサポートすると言う。まあ、そうだろう。

「古井さんも長期勤務をご希望と言うことで」

こちらも長く働いてくれそうだ。



 翌日、話し合いがあり、治癒の茶事も滞りなく終えられたと連絡があった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ