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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第一章:どうしよう、神さまになってしまった…
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こぼれ話:赤井ちゃんの傘

こぼれ話と統合します。



「赤井ちゃん、はい」

津田さんからポンとエンジ色の傘が渡された。捜査霊課の事務所、今日は晴れていて傘は必要ない。

「え、何ですか?」

受け取ってしまって口から出たのは間抜けな声だった。

「晴雨兼用の傘だよ。赤井ちゃん明日誕生日なんでしょ?」

ニコニコと津田さんから人の好い微笑みが漏れている。

「はい。でも、どうしてご存じなんでしょう?」

当然の疑問だろう。

「? 坂本課長補佐が明日誕生日だから何かプレゼントを考えろって言われて。あ、嫌だった? 誕生日って個人情報だよね?」

慌ててワタワタし始める津田さんに笑ってお礼を言う。

「いえ、ありがとうございます。でも意外だったので」

いつも課長補佐や同僚たちからは仕事の消耗品である紙や墨などを貰う。他のものが貰えるなんて思ってもみなかったのだ。

よく見るとエンジ色の傘は花柄の透かしの入った落ち着いた和風の物だ。一部黒い部分があって全体の上品さを引き立てている。贈り物などし慣れない様子だからきっと悩んだのだろう。

「いやー、女の子のプレゼントなんて選んだことないから困っちゃって。そばかす治してほしいとか言われたから美容系かな? とか思ったけど俺はそっち方面全然だから。

日傘でちょっと可愛いのならまあ、いいかなって。ほら、4月5月は紫外線多から自分の日傘をちょっと忘れたときとかに置き傘。

使わなくてもいいし、気にしないでね」

「いえ、使わせてもらいます。みんな仕事用の紙とか墨とかばっかりくれるので、こういうのはなかったので驚いただけですよ」

そう言って笑って見せれば津田さんは安心した様に笑った。

躾の厳しい家に生まれた赤井の周囲にはきっちりしたものが配され好きにおしゃれもできなかったが、赤が入っていようとこの日傘なら文句も言われまい。多分四苦八苦しながら選んだであろう本人は気付いていないが、捜査霊課の先輩に貰ったと言えば駄目押しになるだろう。

「仕事用か~。俺まだそういうのわからないんだ。経費節約になるんだろうけど、ごめんね」

「気にしないで下さい。嬉しかったです」

「うん、じゃあね」

そう言って帰って行く津田さんを見送りながら、赤井は書類をまとめて提出した後に日傘を差そうと思うのだった。丁度今日は空も晴れている。



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