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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第四章:ダンジョンを増やそう
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その、四十三 相次ぐダンジョンオープン




その日は特になにも予定していなかったので、黄泉と王庁のダンジョンの作成に充てていた。

概要は作っていたので、改良した気脈の交換だ。

これで数か月は持つようになるだろう。もちろんタワシ君6号もセットにして渡す予定だが、使用回数は少ないほうがいいだろう。

フィルターも受け取ったので気脈の入り口に設置し、丁度最終チェックが終わろうとする頃に坂本補佐がやってきた。

「津田君、王庁から連絡がきたわ。居住区に邪気の獣が出始めたから、早急にダンジョンを設置したいそうよ。進行具合はどうかしら?」

「今のところ問題なく作成が終わっています。あとは向こうで設置した後、回線のチェックを試運転で行って異常がなければ引き渡してもかまわないと思います」

一応≪知る能力≫で問題なし、と出ているが実際に使ってみて不具合がでないとも限らない。最終的には試運転をして確認するべきだろう。

「津田君のスケジュールはどうなっているの?」

「明日、明後日は休みに予定で、その次の日が辻本君に第二ダンジョンのアイテムを相談する予定になっていました。辻本君には電話して延期してもらいましょうか?」

「そうしてちょうだい。明日から王庁に行ってもらって大丈夫ね?」

「はい。設置するとしたら試運転の用意もしてもらっておいてください」

「じゃあ、そう連絡しておくわ。明日、8時半に会議室で待っていて」

慌ただしく話して補佐は帰っていった。






―翌日

「おはようございます」

島田と古田が連れ立ってやってきた。

「おはようございます。このたびはこちらの急な要請にこたえていただき、ありがとうございます」

「どういたしまして。そんなにすぐに効果が出るわけではありませんけど」

「それでも対策をしているのとしていないのでは違いますからね。こちらの気の持ちようも周りの受けとり方も」

「では、説明をしたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

こちらにはキエートと天司が付いている。

「まず、入り口と出口は1か所ずつ、1F入って右側が放送・操作室で左側がダンジョン入り口になります」

設計図をもとに確認作業に入る。

「放送・操作室で操作盤はこうなっています。赤いボタンが邪気のフィルターの元栓です。必ずこれを締めてから終わってください」

操作盤と使用上の注意を説明し、タワシ君6号を入れた段ボール箱をみな1個ずつもって王庁のある世界へと移動することになった。


王庁ではひさぎ様が待っていた。

「お久しぶりです、津田様」

「お久しぶりです、ひさぎ様。こんな姿で失礼します」

段ボールを持ったまま首だけで挨拶をする。

「あ、持ちます」

ひさぎ様の後ろから警官のような服を着た青年たちが征也たちの段ボール箱をさらっていった。

「これから気脈と出入り口の場所に案内します」

とひさぎ様自ら案内してくれた。

そこは学校のような場所のグラウンド横であり、入り口と説明された場所は真新しい体育倉庫のような見た目だった。

入り口を入ると中は意外にしっかりした建物で、右側に救護用ベッドと医薬品の棚があり、左側にはおそらくダンジョンからの移動陣を置くようにしていると予想される丸い円が書かれた何もない場所になっていた。

「左側の円陣にダンジョンからの帰還陣をお願いします。右側は簡易医務室になっています」

そして正面の壁には2つの扉が開いていた。

「ここにダンジョンの出入り口を繋いでください」

「はい」

次に下を指さして

「気脈はここの下に流れている気脈が大禍津日様のフィルターと同じ大きさになっているはずです。他に何か必要な物はありましたでしょうか?」

と尋ねた。

「緊急用の電話をお願いしていたと思いますけど、どこに繋いだらよかったですか?」

「それはこちらの電話にお願いします」

現地で必要なのは出入り口と気脈と帰還陣(出口)と緊急用電話だけだ。

「これで必要な物は全部ですね。では繋ぎますが、大体1時間ぐらいかかります。

 それから、試運転はいつにしましょうか? 最低でも5時間を3回は行いたいと思いますが」

これから繋ぐとなればお昼前には終わるはずだ。その後どうする予定になっているのか。

「お時間あれば今日、昼食をご用意しますので午後からお願いしたいと思っておりますが、そちらのご予定はいかがでしょうか?」

「こちらは大丈夫ですよ。ええっと……明後日までは開いていますから」

明後日の予定になったら辻本君には電話で謝っておこう。

「では、こちらで宿泊の準備もしておきますので、今日明日でお願いします」




午後―

王庁の職員食堂で昼食を取った後、試運転の確認を行う。警備部から100人以上が集まっていた。これに交代要員が後で到着するという。

「島田さん、朝説明をしたので使ってみてください。他の方々もここで覚えていただければいいと思います」

「わかりました。各階には10人前後ずつ入ります。分からないところはお聞きしますのでご教授願います」

そうして始まった試運転は、午後1時より5時間の予定で開始された。

『2分後に開栓します。準備して入室を始めてください』

全館放送はモニターに映る全員が行動したことで正常を確認する。現世でも確認はしていたのだが、≪知る能力≫で知ってはいても王庁の人間が同じように聞こえるのか確証がなかったのだ。

『では、開栓します。5・4・3・2・1・0……、開栓しました』

噴き出してきたのは地上で初めて見た時より酷いヘドロのようなドロドロとした邪気だった。

『魔物が形成されたところから討伐を開始してくれ』

古田が放送マイクから指示する。

島田と古田がモニターで討伐の様子を見ている間に征也はラインの動きを見る。

流れは正常。

溜まっているところも澱んでいるところも今のところは見つからず、問題なく流れている。

ふと、視線を島田と古田に向けると、二人とも厳しい表情だ。

モニター越しに見える討伐している者は次々に形成されていく魔物に段々疲れはじめ、そして苛立っていく。


開栓から1時間半

『交代時間です。拾った霊珠を持って交代してください』

第二陣が送りこまれる。

帰ってきた者たちは、用意してあった水や食料に我先にと手を伸ばす。

魔物の数が多く水分などを口にする余裕もなく、誰もが滝のような汗を流していた。


そして第二陣が入って2時間

『交代時間です。拾った霊珠を持って交代してください』

第一陣が再びダンジョンに入っていく。

但し、最下層の3層に入っている面々は一度も交代していない。

「さすがに副隊長さんたちは強いですねぇ」

「精鋭ですから」

「明日は午前中に各階それぞれで設定できる方法を見てもらって、午後は好きに扱ってみてください」

「よろしいのですか?」

「使うのはそちらですし、使いたい機能があれば教えますよ」



そうして翌日、夕方には

「ありがとうございました」

王庁の面々に見送られて、いつもの会議室へと戻ってきた。

ほう…………

安堵のため息が漏れたところで

「あら、津田君たち帰ってきたのね」

坂本補佐が真っ赤な口紅を艶めかせて笑っている。

ああ、これは面倒な。

今度は何だろう。

「黄泉から連絡があったわ。王庁から帰ったら至急ダンジョンを設置してほしいって」

「はい…………」

何だろう。王庁と黄泉は仲良さそうなのに、妙に張り合っている気がする。





そしてまた2日間、今度は黄泉でダンジョンを設置したのだった。

さすがに疲れたと連休をもらった。








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