その、四十二 お手本があれば、大丈夫?
皆さま、お久しぶりです。
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少し時間のできた征也は神社の方がどうなっているのかを見に行った。
「だいぶ建ってきたなぁ……」
と2つの社を見ながら近づくと、天司と何故か泣いている大工さんらしき人達。
よく見てみると、何か話しながら木材が宙に浮きひとりでに組立っていく。きっと天司が神力で動かしているのだろう。ありえない速さで骨組みが建っていく。社は目に見えて形になって行った。
「大工さん達も気の毒に…………。きっと宮大工さん達、自分で神社を建てる神様って見た事ないと思うんだ」
「良いじゃありませんか、早く神社が建つんですから。人件費も抑えられますよー」
キエートは人の嘆きなど気にも留めない。
「おーい、天司君―」
「征さん」
「どーして君がこんなことしてるの? それ本業の人たちの仕事でしょ?!」
涙目のおじさん達がうんうんと同調してくれた。
「しかしそれでは10月の出雲であるお披露目に間に合いません。逆算すると9月には参拝客に来てもらわなければなりませんし、お盆を挟みますから合間に神鏡などへの魂入れも必要なので7月までに作ってもらいたいのです。
ですから総合的に見て神力で早く行うことにしました。
お手本の神社はいろいろありましたので、大丈夫ですよ」
と答えながらも木材を動かし回廊の壁を塗っている。よくそんな同時にいくつもの事が出来るなと感心する。
「そんなに急がなくても……」
「社のない神はどうしても扱いが軽くなりますからね。新参者ならなおさらです」
「だったら小さいサイズで作ればよかったでしょ?」
と言って既に設置された右近と左近の台座を指差す。
「大きい方がいいですよー」
とキエートが付けたし、天司が
「この大きさでも大丈夫です。後は屋根を貼って完成です。神社の周囲には回廊を造っているので、征さんは楼門の額を書いてください」
と重ねる。
「は?」
手渡されたのは大きな和紙。これに書けって事なのか?
「パソコンで書いたら? 自分で書くの嫌だよ」
自分の神社があるだけでも心苦しいのに、その入り口に自分の字があるとか、もう無理。
「分りました。書体は何にしましょう?」
「…………行書体?」
見に行って15分も経たないうちに2つの神社の本殿と拝殿が骨組みだけの形から完成していた。
「相手は神様なんだ! しっかりしろ、俺!」
「あれは神様だから! 俺に出来ることじゃないんだっ!」
「むしろできなくて人間!」
「あれは神、あれは神…………」
宮大工さんの職人魂を盛大に傷つけプライドは粉々だろう。それでも天司は平然としているので、征也は口元が引きつるのを隠せなかった。
「では、他の所をお願いします。征さん帰りましょう」
唖然としたままの征也を引っ張っていく。
「他の所って、何?」
「参道の石畳と、授与所と社務所ですね。他に手水舎や鳥居などもあります。
そうそう、従神以外に直毘神と禍津日神とウカノミタマ様、オモイカネ神の社も小さいですが楼門の外に置こうと頼んであります。事後承諾になりますがよろしかったでしょうか?」
「いいよ、お世話になったしね」
以外と征也が考えた手水舎と鳥居以外にも建てる物が色々とあった。
それからも天司はちょっとずつ時間を見つけては現場へ行ったらしく、7月中には神社として成立していた。
誰が言い出したのか知らないが、宗教団体として法人化の書類が申請してあるとか。宗教法人は宗教団体として数年の実績が必要だからと普通法人にしてあるとか。
「もう、いい加減、怒った方がいいよね?」
この事後承諾。
工事の予定は計画書を見て知っていた。にもかかわらず勝手に短縮。
配置の中身が変わったのは、まあお世話になったし良しとしよう。
さらに団体を法人化してその所有になったとか? 固定資産税いくらだろう、とか悩んだのに。
「俺の悩んだ時間、返せー」
怒りたいけど、実際に怒るのは面倒なことになりそうなので、呟くだけにしておいた。
ああ、俺って小心者……。
もうちょっと上手く立ち回れたら……。
征也の悩みは尽きないのである。




