その、四十一 お見合い、再び
3連休の週明け、征也は坂本補佐に呼び出された。
「津田君、悪いのだけどもう一回お見合いしない?」
「はぁ……? 唯さんに不満が? 梓さんは実家に帰ってしまいましたし、また空きの争いがありましたか?」
「そうじゃないの。日本以外では新しい神である津田君に元々の神々が近づくことを嫌ったから、海外からのアプローチはもうないわ。
お見合いしてもらう東山家は東日本で最大規模の術者の家柄よ。4月の時には適当な女子がいないと争いに入らなかったの。でも今回東山家は神に対して適切に対処していないと次期当主の次女を押してきたわ。
家柄上簡単に断ることは無理なの。受けてもらえるかしら?」
心底困った表情をする補佐に
「わかりました。離れている間はダンジョンをオートで回しますので何かあった場合はそちらで対処してもらえますか?」
「ええ、トラブルはこちらで何とかするわ。
日程は津田君に合わせるそうだから、今月中にお願い」
「どこに連絡すればいいですか?」
「本人ダンジョンの6階で頑張っているから呼べば出てくるわ」
「6階……本人強いんですね」
8カラットが出る6階は霊課以外ではまだ10人程度しか入っていない。唯と梓とは大違いだ。
「ええ」
銀と春仁がデータを読み上げる。
「東山加奈、21歳、大学3年生。東山家次期当主の次女で現当主の孫です。10歳から19歳までは婚約者があったが、相手の方が霊力が低くコンプレックスゆえに霊力暴走事故を起こして破談となっています。現在では父親の手伝いをしながら大学に通っています」
「4月から式神を使い征様の様子を探っていました。唯さんと発展せず梓さんは帰国、征様の性格も大丈夫と今回のお見合いを申し込んだ様です」
と教えてくれた。補佐も頷いていることから事実なのだろう。
「ありがとう、ていうか性格が大丈夫って何?」
「穏やかで温和、上手くいけば落とせそう、だそうです。
元々東山家は一般人から神になった征様に距離をとって来ました。当主はDVや面倒事を嫌い、娘を出さないつもりだったそうです」
「ですが征様がダンジョン作成という実績を作り、周囲の話を聞きながら物事を進めているためにお見合いさせる気になったそうです」
補足説明に何とも渋い顔をする。
「人の話を聞きながらじゃなくて、案を出すと周囲が全力で乗って来るんだよね。別にダンジョンを3つも4つも造る気なかったし、最後の第二ダンジョンなんて完全にノリだけだし。治療用のお茶会なんてホントーに思い付きで補佐と志津さんが何とかするまで形になるなんて思ってなかったんだよ」
征也は天を仰いでため息をつく。
「その東山加奈さんが上がって準備が出来たら呼んでください」
「津田君、図太くなってきた? 最初のお見合いの時は右往左往してたのに」
意外そうな顔をした補佐に
「怖いことは早く終わらせたいという、ある意味小心者なだけです」
と返す。引き伸ばすと神経が削られる気がするのだ。
「そう? じゃ彼女上がって来たら連絡するわ」
あちら側は加奈と母親、弟君(霊課との顔合わせも兼ねてやって来たらしい)、こちら側は征也・天司・キエートである。一応の挨拶を済ませると、後は二人で、となった。
「津田様は唯さんをどう思ってらっしゃるのですか?」
いきなりこれだった。
「唯さんの事、知っているの?」
「ええ、年が近い女術者ですからね。互いに存じております。腕はだいぶ違いますが……」
「まあ、あー、そうだね。6階に入ってたくらいだしね。えーっと……俺、消去法で唯さんと結婚すると思っていた。こんな事態になるとは思ってなかったから困ってる。不義理はしたくないしね。
これで答え良い?」
ごめんよ、唯さん。大して気に掛けてなくて。でも、恋愛する気なかったんだよ、ホント。なんかめっちゃ予定詰まり出してたしね。
「つまり、まだ恋愛に至ってはいなかった、ということですね? では私と恋をしましょう! きっと楽しいと思いますよ」
「……恋って必要? ……今さらだけど、俺、あんまり感情を揺らすと周囲に影響するんだよ。これでも一応神力強い方だから。約束は4月に決められたみたいで破りたくないし」
「ならば尚更幸せになり必要があります! 絶対必要ですの!」
強い。不義理したくないとも、約束破りたくないとも言っているが、全然全く聞いていない。キエートタイプか彼女。
「…………とりあえず婚約者候補って事でいい? 唯さんも同じ立場だし、今頼んであるのはお茶会の主客か末客だけど、その辺りは補佐に聴いてみてくれ」
「はい、承りました」
「このお見合い、君の方はどう思っていたの?」
「出来れば4月に入ろうかと思っておりましたが、父が私の事を聞いかけて一般人から神になった者がDVでもすれば一瞬で殺されてしまうと止められていたのですが、津田様なら大丈夫だろうと今回送ってもらいました。
「そうなんだ」
別に本人としては問題ないらしい。
「ヌシの事はダンジョン津田と呼ぶことになった」
「はい?」
突然やってきたウカノミタマ様がそんなことを言い出した。
「じゃからの?」
「いえ、普通に名前ではいけませんか?」
「真名を呼ばれてしまえば色々響くでの? それとも真名を自分で変えるか」
「そんなことも出来るのですか?」
「上位の神なら可能じゃ」
ということで≪知る能力≫を使い真名を決めて変える。流石に、ダンジョン津田、はあんまりだ。
征也が変えたことで天司も変えるが、銀たちは苗字の≪服部≫が知られていないからとそのまま使い続けることした。




