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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第四章:ダンジョンを増やそう
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その、三十九 お茶会の試運転





茶の樹も香木も神力を肥料にして収穫することが出来たし、茶葉は粉末にして抹茶にも出来た。


神力を入れた水は寮の料理人さん達が前日からの仕込みにも使ってくれている。安倍と川村の指導の元、完全管理で使用されているらしい。



そして本日、治癒の茶事の試運転である。

既に前日事細かにメディカルチェックを受けた方々が3階の待合に来ている。もちろん全員が車椅子の重症者だ。

最初は少人数からということで3人を迎えて行うそうだ。かなり重症の心臓病、糖尿病、脳卒中の方だと言う。本人と付添いの方が1人付けられており、付き添いが勝手に飲み食いしないようにも見ているとか。



客を迎える亭主はもちろん志津がし、主に話を聞いたり振ったりする主客に唯、世話係のような立場の末客に天司が配置され、赤井は裏方の水屋に入った。

補佐は征也と別室のモニタールームで茶事の進行と水屋の様子、厨房から水屋に運ばれるルートなど全体を見ている。浜岡も何かあった時に走らされるためモニタールームに待機だ。




茶事が進行し、最初に異変に気付いたのは糖尿病でほとんど目が見えないと言う男であった。

懐石料理の後に出された菓子を見ながら

「んんっ? 見える……? 目が、見えた……」

と呟いた。

サングラスは茶事の間だけ頼んで取ってもらっていたので見えるようになったことに気付いたのだ。

男は主菓子をまじまじと見て、その次に周囲を見回しながら

「見えるぞ!」

と叫ぶような呆然とするような声を上げた。


次は、脳卒中で半身が動かないと言う男が気付いた。

隣の糖尿病の男の声を聴いて動かない身体を動かしてみたらしい。

「ぅぅう? ……動くぞ? 動くぞ?」

指を動かし、手を動かし、腕を動かして、自分の腕を信じられないと言う表情で見つめている。


中立ちで一旦別の部屋に入った後、再び入って来るころに最後の男が薄く反応した。

「なんだか呼吸が楽になったようだ」

人工呼吸器をつけている男をモニタールームから見ていた征也は『しまった』と思った。

そうして彼は濃茶を飲むときになって初めて完全に人工呼吸器を外していた。

前半に香木の香りを嗅がなかったのである。




3人は茶事の後、速やかに病院へ帰る。

翌日の朝、再びメディカルチェックを受けて午後には坂本補佐の元へ結果が送られてきた。

「みなさん昨日はお疲れ様でした。

結果が来たわ。ほぼ3人とも治りそうよ。少し血糖値が高い所と血圧が高い所以外、他に異常はないそうよ。

でもどうしてなのかしら? 血糖値の方はまだわかるのよ?目も腎臓も末梢神経も悪くなるほど重症度が他よりも全身に広がっているようでしたから。でも、血圧の方はどうなのかしら? 治りにくいのか、効きにくいのか?」

補佐の疑問の答えとして

「昨日、人工呼吸器を酸素マスクと言う形でつけていらっしゃいましたよね? 食事の時も鼻に付けていらっしゃったし。香木の香りが後半に完全に外すまで届かなかった可能性があります」

と、征也は昨日の失敗を挙げた。

「そう、酸素マスクね。食事の方ばかり気にして盲点だったわね」

「かといって最初から外すのは命に関わりますし、ここは今後の課題としておきましょう」

確認用ノートに書き込んでおく。

「茶道に興味をもたれた感触もありませんでしたわね?」

志津が残念そうに補佐に聴く。

「仕方ありませんわ。今回の目的はあくまで治療ですもの。喜び勇んで冷静になった後で茶道の良さが身に染みてくるのではありませんか?」

補佐も志津には気を使っているのだろう。半分くらい重病を押してきているので記憶の中にあるかすら分からないのに、無理にでもフォローするなんて。

「そうね、可能性は低いけれど、そうあってくれるといいわね」

「明日は2名ですが大丈夫ですか? お疲れなのでは?」

「大丈夫ですわ」

これでやり方については補佐達が進めてくれるだろう。



抹茶は多分1か月に5~7人分くらいなら作れるだろう。

式神君がちょっと時間差を作る方法を考案してくれたし、天司が機械を持ってきてくれている。







そして、

「終わった~!!」

辻本がレポート課題を終わらせたのが3連休前日の夜、日付の変わる前。

「明日の9:00開始には間に合いませんが、これ出したらすぐこっち戻ってきます」

テストは仕方ないが、レポートは文献探しなどを手伝った。

これで辻本君もダンジョン作成仲間だ。





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