その、三十七 第二ダンジョンを依頼したい
会議室には天司・キエートの他にいつもの神々と補佐や志津が集っていた(神々は何故か大掃除後、何度も暇つぶしにやってくるため気にせず進める)。
「では皆さん、7月の最終試運転までにすることの予定として2つ考えています。1つは治療の茶事を進めること。メディカルチェックの前後を比較して、プラシーボ効果でないことをきちんとしたデータを取ることで証明することです」
「津田君、今どこまで進んでいるの?」
補佐の質問に
「茶葉と香木は使えるように育っています。しかしまだ機材や石臼をどこかから借りて来ると言う話は出ていません」
茶畑は神域の中で式神も一緒に時間を早めて作成している。≪知る能力≫というものは便利なもので、式神に知識を入れると誰に聞くこともなくひとりでに動き出して茶の木の苗を育て始めた。
香木は半寄生型の樹木だったり、傷んだところに出てくる樹枝だったりして細かい調整も必要だったが、そこは何とか神力でフォローしながら採取できるまでになった。
「そう、1台買った方がいいかもしれないわね」
「そ、そこまでしてもらわなくても大丈夫ですよ」
専業の茶製造者になる程ではないはずだ。
「あら、お気になさらなくってもよろしくてよ。先日の気脈のバイパス術で採れた霊珠が上質でたくさんあるもの」
志津までそんなことを言う。
「つ、次行きましょ、次。先日ダンジョンRPGのゲームをする人にダンジョンのロマンが無いと言い切られたので横穴を作って本格的なダンジョンを第2ダンジョンとして造ろうと思います。
一般用のダンジョンが8カラットまでなので第2ダンジョンに行くともっとレベルの高い魔物やレアアイテムが出て来るようにしようと話しましたがどうでしょう?」
「強い魔物なら多く浄化できてよいのではあるまいか?」
確かに現世のダンジョンの比べると王庁と黄泉は浄化量が断然違う。
「しかしそうなると人の強度の方が心配になるぞ?」
「ではこういうのではどうじゃ? 作るだけ作ってみて津田殿たちが入ってみて大丈夫なら公開してみるのは?」
オモイカネ神は完全に征也たちが反則的に強いことを忘れているらしい。
まあ、不知火か穴井辺りに頼めば協力してくれるだろう。
「それでですね、お抹茶と第2ダンジョンは先に茶道の方を整えようと思うんですよ。ダンジョンは今のがある事ですし、辻本君が頑張って考えてくれるでしょう」
征也が丸投げした先にいた辻本は若干血の気が引きながら、
「どんな感じにしたいのですか? 洞窟風とかいろいろありますけど」
「ん? そうだね、定番のものを入れてくれ。鍾乳洞とか駅とかみたいなやつ? 入口出たら別の入り口に飛ばされるようなやつとかも? あ、魔王城とかも造って……あ、洋風の城と和風の城と両方作ってみるとか面白そう!」
好きなだけ注文を付けられた辻本は早くも涙目だ。
「お、俺大学ありますし……」
「もうすぐ前期テストでしょ? そのあとでいいよ?」
確かに8月に入ればテストは終わるが、お盆の時期に入るため忙しくなるのだ。
「そういえばマッピングするのもダンジョンの楽しみだとか言ってたから地図は配らなくていいよね?」
辻本は首だけで、こくこくと頷いた。
「そう言えば征さん、通常の地図はどうするつもりでしたか?」
前回みずちの水に濡らされたり鬼火に焼かれたりして使い物にならなくなっていた。
「知り合いに頼んでラミネート加工をして貰うことにしたよ? 試運転までには納品してもらうように50枚ずつ頼んであるから十分だと思うけど。
王庁と黄泉の分も頼んであるから7月末までは来るよ。気にしないで」
辻本はがっくり首を落としたまま動かない。
「俺も出来るだけ手伝うから3連休は見に来てね? お願い」
征也のお願いを断ったりしたら周囲から批難が凄いことになる。穴井のアイコンタクトで征也に同意を返した。
月末に滑り込みで辻本が計画案を持ってきた。
『第二ダンジョン 第1次案』
と書かれた内容はとても楽しそうだった。
「まず、入口は4階と5階からになっています。
4階は洞窟のイメージで作りましたので、実在する鍾乳洞を参考に高低差で困るような場所は修正しました。
5階は駅ダンジョンと呼ばれるような地下鉄をモデルにしてあります。出入り口になる場所はそれぞれ1カ所のみで他はまた別の出入り口に飛ばされるようにします。
図のように駅エリアは4階の鍾乳洞エリアをクリアした後で出入り口に移動するようになりますから5階から入ってきたルートと合わせて2カ所の入り口があることになりますが、2カ所は合流するので実質1カ所になります。
次が魔王城西洋版で魔王を倒します。各部屋から持ってきたアイテムを魔王の間の奥の鏡の間で正しく配置すれば次のステージへ入れます。
そして最後が魔王城和風版として日本の城を入れることになりました。最終的に天守閣にたどり着いてラスボスを倒せばクリアです。
どうでしょうか?」
「ああっ! 楽しそうな案ですねぇ! 津田様! これやりましょう!」
辻本は評価を青ざめた表情で待ち、キエートは計画案を楽しそうに読んだ感想に喜色を表す。
「うん、いいと思うよ? 探検気分も迷路気分も楽しめるし。
……辻本君、顔色青いけど大丈夫? 学校大変かな? 何なら外枠だけ作っておいてアイテムとかはテスト終わって殻にしてもいいしね? あ、3連休の1回だけは見ておいてほしいけど」
血の気のない顔に征也の方が心配になってくる。
「はい、すいません。ごめんなさい。3連休には夏休みに入りますから、今だけ休ませてください!」
「うん、学生の本分は勉強だからね? そっちが最優先なんだけど、わがまま言ってごめんね?」
「とんでもございません!」
頭をぶんぶん振っている。神に謝らせるなど何と言われるかわかったものではないのだが、征也は困った顔をして普通に人と同じく謝っている。
征也が最近神になったばかりの元人間だと辻本が知るのはその後結構経ってからの事だったりする。




