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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第一章:どうしよう、神さまになってしまった…
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その、よん 神様の初仕事

猫が好きな征也君、猫が怖い征也君。

 猫が来る。

 野良猫が追ってくる。

 そりゃ、一匹二匹なら可愛いですませられるさ。だが、何十匹も追いかけられると、それはもうホラーである。

「キエート―」

「はいはいーどうしました?」

「神様になった途端、猫が、猫が寄ってくる………あと、時々イタチとか狸っぽいモノも寄ってくる。烏も寄ってくる…………何故だー」

半泣きの俺に苦笑いでキエートは応える。

「それはですねぇ、津田様の神気がただ漏れになっているからなんですよ? 神気は生き物にとって心地の良いモノ。特の動物は本能に忠実ですから寄ってくるものなのですよ」

「じゃあ、神気を押さえられる様にならないと、この猫猫ホラーは解消されないと……」

「そう言うことですね。頑張って神気のコントロールをしてみてください」

忙しいのか言うだけ言って、あっという間にキエートは帰って行った。そんなことを言われても…………。

「あ、天司君に聞くか」

空間転移で捜査霊課に行くと、天司君は何やら書類に向かって唸っていた。

「あ、」

「! 津田さん、どうされたのですか?」

「あ、ごめん。忙しいならいいよ」

「いえ、これ急ぎませんから。それよりどうされましたか?」

「天司君、神気のコントロールってどうしている?」

「特に何も? 普段は閉めていますし、何かあるときだけ少々放出するように気を付けていますが、何か?」

「頼む、教えてくれ」

そう言って猫ホラー状態を説明した。

「それは難儀な…………。まずは神気の感じ方から始めましょうか?」

「はい、神気自体あんまりよく判っていません。何となくで強めることはできるけど」

「ではそのなんとなくを強く感じてみて下さい。内側から外側に流れているのがわかりますか?」

年齢は逆だが、まるで教師と生徒である。

「うーん、うーん……………………」

「………………分からないのであれば無理はしなくっても…………」

「いや、無理にでも覚えないと…………いいかげん猫が嫌いになってくる。俺は本来猫好きなんだ。本気で猫が嫌いになる前に何かしないと…………………」

「既に猫恐怖症にはなっているようですけど……………………」

天司君のつぶやきは気にも留めずひたすら神気の気配を探った。

「あった! これだ………これを閉めれば………閉まったぁ」

「ちゃんと開けられるか確認してくださいよ」

「開く、開いた、閉まった。ちゃんとできる。これで猫から解放される! 烏に絡まれない! 変な動物にも懐かれない」

ああ、素晴らしき普通の日々! と、感動している俺の横で天司が苦笑いをしている。いいじゃないか、元々霊力も何もない俺が神の力なんぞを扱っているのだぞ。ちょっと位有頂天になっても罰は当たるまい。

「よかったですね」

「ありがとう! これで普通の日々に戻れるよ」

天司君は小躍りしている俺に冷や水を浴びせるようなことを言う。

「では、僕から一つ宿題を出しましょう。夢渡りが出来るようになってください」

「夢渡り?」

「そうです。神社の絵馬を一つとってその絵馬を書いた人の夢の中へ入るのです。そして願い事を叶えてきてください」

うう、難しい。

「ええっと…………………まず、絵馬を取ってくる」

「はい」

「絵馬を書いた人を見つける」

「そうです」

「書いた人の夢に入る」

「はい」

「そして願いを叶える」

「そうです」

四つも課題があるじゃないか。

「難しい………………」

「やればできます。神社の方にはこちらから連絡を入れておきますので、好きな絵馬を選択してください」

「出来るのか? 俺」

また不安になってくる。ずると呆れたような声を掛けられる。

「貴方は毎回大丈夫か? と心配しては何とかなっているじゃありませんか。大丈夫です。きっとできます」

「うー」

「大丈夫ですから」

完全に性格を見切られて宥められている。これは拙いかもしれない。今でもアップアップ言って居るのにさらに無理難題言われるかもしれない。

「夢に入るってどうすればいいんだ?」

「詳しく聞きますか? それとも知る能力で感覚的に知ることもできますよ? 一度試してみてください」

「はい、試してみます」

これからは天司君に頼るのはやめよう。宿題が増えたら怖い。


        ……


 夜、俺は悩んでいた。

「うーん、うーん」

仕事の帰り、絵馬を数枚貰って来た。ちゃんと捜査霊課から連絡が入っていたらしく、神主さんが初心者用に厳選した絵馬だ。

その中身は

『ニキビが治りますように』

『水虫が治りますように』

『腰痛が治りますように』

『肩こりが治りますように』

の四種類だ。最初の二枚は若い神様初心者でもとっつきやすい様に、後の二枚はとてもよくある願い事だからだという。

「よし、ニキビにしよう。そばかす治したことあるんだからニキビも大丈夫だろう? 大丈夫だよな? 大丈夫だ! 言い切ってしまえ! 大丈夫だ!」

 絵馬を前に唸る男、はたから見ていたら気味悪いだろうが、幸いこの部屋には俺一人しかいない。俺は一応これでも一人暮らしなのだ。

「よし、知る能力で願い主を探知!」

これはあっさりできた。確かに酷いニキビの少女だった。

「別にニキビあっても十分じゃ?」

目鼻立ちはくっきりしているし、大きな目は可愛い。思わず自分と比べてしまう。俺はニキビもそばかすもない代わりに致命的に顔の造りが地味なのだ。モブなのだ。

「いやいや、御願い事、御願い事、ちゃんと叶えないとポイント貯まらないし生活にゆとりを!」

知る能力で夢を渡る方法を知る。

「ええっと、絵馬を枕に敷いて眠って…………」

 ものの数秒で俺は彼女の意識の中に入った。

「これが、夢の世界?」

フワフワとした雲の上のような世界。

「あんた誰?」

ニキビの彼女は思いっきり警戒している。

「誰って言われても困るけど……一応健康の神様?」

「健康の神様が何の用? 私、いたって健康なんだけど?」

へらり、と笑ったために彼女の警戒心を更に刺激したらしい。

「あれ? 藤野八幡宮にニキビ治してって絵馬書かなかった?」

「な、何で知っているのよ!」

彼女の動揺が酷くなる。

「ニキビも管轄だから?」

「な! ニキビも健康なの?」

「とりあえず、ほら、顔出して」

 俺は彼女の鼻先に指を置いて神力を込める。

「きちんとお礼参りには来るようにー」

 それだけ言い残して俺は夢の世界を後にした。

 ぱちり

 目が覚めた。

「ええっと、彼女は……」

 知る能力を通して彼女の顔を拝ませてもらう。綺麗にニキビは消えていた。

「とりあえず宿題は終わりだな」

 ポイントカードを見ると0・五だけ増えていた。

「やっぱり美容ポイントは低いらしい。これからは肩こり専門とかしてみようかな? 管狐に才能あるとか言われたし」




なんだかんだと言って、結局頑張って出来てしまう征也君。

次回、新章です。

やっとダンジョンの話題が出ます。

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