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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第四章:ダンジョンを増やそう
38/70

その、三十五 ご協力をお願いします。

作者は茶道は習ったことがありません。

すべて妄想ですから、本気にしないで下さい。



 土日を挟んで月曜日、朝から神直毘神と大直毘神が来ていた。

「大分色々と手を広げておるようじゃの?」

「はい、お久しぶりです」

「お主が言ったように大気脈を点検したところ、狭くなっておる所が数多く見つかったわ。戻せるところは戻したがの、手遅れな程狭まっている所も見つかった」

「全くじゃ、ここまで狭くなっている所が多いとは思わなんだ」

二柱の神はそろってため息をつく。

「して、気脈のバイパス術をするゆえ、手を貸しておくれ」

「はい、いつからどうしましょう?」

予想通りだ。できれば7月の開業前最終試運転の前には終わって欲しいが。

「明後日の日の出とともに始めようかと思っておる」

「全部で11カ所あるが、一度にはできぬ。半分に分けて2班で行うつもりじゃ」

「…………それは、2カ所同時進行で行うということですか?」

解釈があっていれば同時に2カ所からラインを引いてくることになる。太いラインをもう一本用意した方がいいか。

「うむ、そうじゃ。前半が終わってから3日間の休息を設ける。その間に後半の準備もしてもらうことになっておる」

「あまり時間を開けると後半の分が破裂しそうでな、準備も急がせておるのじゃ」

そこまで酷くなるなら定期点検しろよ、と言いたい。

何でそうなるまで放って置いたんだ。

「そちらもそのつもりで頼んだぞ」

「では、我らは準備があるゆえ」

「明後日また来る」

といって慌ただしく帰って行った。


「あら? もうお帰りになられたの?」

2柱が帰った後で補佐が御茶を持ってきた。

「はい。大気脈に狭窄が11カ所も見つかって、明後日からバイパス術がはじまるのでその準備に忙しいそうです」

「そうなの」

「明後日から来週まで、俺もそっちにかかりきりになると思います」

「わかったわ」

そう言うと、補佐はなにやら取り出して渡して去って行く。

「給与明細よ。見ておいてね」

補佐を見送り封筒に入った給与明細を見て

「…………見なかったことにしよう」

一瞬頭に入ってきた給与額を瞬時に忘れた。

……庶民には一生見ることのない金額だったことだけは記しておこう。

征也は詳細を見なかったが先月のバイパス術の際の霊珠と耐久実験の霊珠を霊課に渡していた。その買取金額が大きかったために、びっくりさせられたと言ってもいいだろう。




午前10時5分、安倍と征也、そして40代後半くらいの優しそうだが底知れない笑みを浮かべた女性が玄関前の車に乗り込もうとしていた。川村と名乗ったその女性を見て、征也は密かに女傑VS女傑にならないことを祈った。

安倍の運転で赤井宅へ向かう。

「津田様は茶道に詳しくないとお聞きしましたが」

「完全に初心者です。一応本は読んで予習しましたが、先日のお茶会は天司君のコピーで乗り切っただけで実際はほとんどわかりません。失礼なことをするかもしれませんが、気にしないで下さい」

正直に話しておく。でないと、何かしでかしたときに問題になりそうなのだ。

「そうですか、でしたら何故茶事を使おうと思われたのですか?」

「補佐から何か重症の病気を治療するように言われたんです。でも、二の足踏んでいたところで丁度お茶会に招かれて、いろいろと工夫したらゆっくり体調を整えられて反動も少ないかと思ったんです。それを補佐に話したら進めるように言われました。

今日はその…………何と言いますか、下準備に必要なものをご相談しようかと思いまして」

「事情は分かりました。納得いくようにお手伝いいたします」

一体補佐は何と説明して送り出したのか? 目が猛禽類のようになっているではないか。

「川村さんは茶道に関して長いんですか?」

「ええ、そうですね。高校時代からもう30年以上になります」

なるほど、高校の茶道部から出発したのか。

「今日のことは補佐から何と聞いていらしたのですか?」

「特別な茶事で使用する抹茶とお香を決めるから手伝うように、と」

「あぁ…………」

何て雑な説明だ。それでは何が特別なのか説明になっていないだろう。

「そろそろ着きます」

安倍がさした先には周りより少し大きな純和風の家が建っていた。



赤井の家に入ると主に川村が挨拶をして部屋に案内された。

「先週はお招きいただきありがとうございました。本日はお時間を頂いてありがとうございます」

「赤井志津でございます。孫がいつもお世話になっております」

一通りの挨拶が終わった所で、征也は本題に入る。

「ご相談というのは……」

治療のための茶事を行いたいこと、自分が初心者で師匠がいないこと、抹茶と水・香木に神気を混ぜて霊課主催にしたいこと、などを話した。

「そう言う訳でお力添えいただきたいのですが、お願いできますでしょうか?」

「そう言う事でしたら、私もご協力いたします」

承諾を貰って一安心だ。

「ありがとうございます」

「では、何から始めましょうか?」

促されて

「まず、抹茶と香木の品種から始めたいと思います。樹を育てるのにも時間がかかると思いますし」

伸ばすだけなら問題ないが、抹茶の樹は毎年手入れをしている樹のはずだから、時間も手間もかかるはずだ。

「それもそうですね」

と志津は抹茶の銘柄と特徴を説明していく。川村も補足を入れながらの解説で、段々志津と川村の話し合いになって行った。双方同じ品種を推薦したために

「では、安倍さんお願いしますね」

抹茶の品種は意外にすぐ決まった。

濃茶と薄茶の品種は最終的に同じにすることになった。

「はい、津田様苗木は何本必要でしょうか?」

「一応5本お願いします。最初2本を植えて見て残りは上手くいかなかったときの予備にしようと思います」

安倍がメモをして、川村が次へ進める。

「次は香木ですね」

「津田さんは通年香木で通すおつもりですか?」

尋ねられて思い出した。本によると確か……

「風炉の時期は香木で炉の時期は練香、でしたか? しかし、練香に加工した時に効果が保てるかわかりませんから、そこは保留でお願いします」

本で読んだが、そこまで厳密に考えていなかった。

「そうでしたか」

「では……」

川村と志津が再び相談を始めるが、段々争い始めた。

「あー、1種類ではなく2種類でもいいですか? もしかしたら練香が使えないかもしれませんから」

恐れていた通り女傑VS女傑の言い争いが始まってしまったので、一応止めてみた。聞いている方が胃に穴が開きそうだ。黙って平然と聞いている安倍さん強い。

「それもありましたね」

「しかし、ここで考えるよりも香を扱っているお店に行った方がよろしいかもしれません。最近は輸入されてくる香木の量も減ってきておりますし」

「はい」

そういう問題もあるんだった・

「では、お店に行ってから考えることにして、他の問題点はどうでしょう。今上がっているものを全て教えていただきたいのだけれど」

志津が先を促したので征也は全てあげる。

「はい、今考えている問題点はまず場所ですね。

場所の問題1つ目は正座です。和室で正座すると足の悪い人には難しいと思うんですよ。それで本に少し載っていたのですが立礼式はどうかと。これなら足が悪くても大丈夫ですし、車椅子でも参加が可能なのではないかと思いました。

場所の2つ目は茶室をどこで借りるかです。お香の効果などが残るかもしれませんから、これもどうしようかと。

次は料理の事です。神気を入れたお水を使ってもらいたいと思っていますが、それは可能なのかどうか。

最後に一番大事なことですが、初心者にどう対応するのかです。利用する人で茶道を学んでいる人は少ないと思いますのでどうするのか、ということです。事前に解説書を配って読んでもらうとか、当日上手に誘導するとか……・。

今の所考えているのはこの位です。他に思いつくことはありますか?」

一気に話してしまったが、どれから進めるか。

しばらくそれぞれが考えて、川村が口を開いた。

「津田様、ダンジョンの隣の土地ですが神社を作った向かいの土地も霊課の所有です。いっそのこと茶室をつくりませんか?」

「は?」

今度は何ですか? 一体どれだけ作るつもりですか?

「私もダンジョンの話は伺っております。土地があるなら旅館を作ってはいかがかしら?術者も休める旅館を作り、その一角に茶室をつくっては? 患者となる方々は全国各地にいらっしゃるでしょうし、付添いの方が宿泊する場所も必要になって来るのではありませんか?

 その旅館の料理人に神力の入ったお水を使うように命じれば料理の事も茶室の事も解決するでしょう」

話しがあさっての方向に大きくなっていく。

「そ、そのあたりは課長と補佐に聞いてみないと……」

……逃げた。

確かにダンジョン周辺は泊まるところは少ないし、あってもビジネスホテル程度だ。病人が心配な付添いの宿泊施設も必要かもしれないが、手を広げすぎだろう。

「お待ちください。旅館を建てるなら今から設計も含めて開業までに数年かかります。その間どうするのかを考えてはいかがでしょうか?

 補佐からは最悪の場合、霊課の3階にある和室を使っても構わないと言われております」

と年単位で時間がかかりそうになるのを安倍が止める。確かに霊課別館の3階には20畳ほどの和室があった。浜岡はお茶会前に色々と和室で作法を習ったと聞く。思い出したように志津も

「霊課の寮の料理人も懐石料理に詳しかったと記憶しております。開業するまでは霊課の和室で行うとすれば貸茶室の問題も解決しますね」

と話した。霊課の寮の1階には料亭が入っており、ぜいたくにも料亭の食事ができるのだ。食費は天引きで自炊もできるが便利なので寮の人はよく利用しているらしい。ちなみに小市民思考の征也は1食の値段を聞いて青くなり、必死で自炊を主張した過去がある。

「ええ、料理人たちもよく心得ていることでしょうし頼めますね」

皆うんうんと頷き

「残った問題は初心者を相手にいかに茶事を運営するかですね」

と川村が残りを指摘する。志津も頷きながら付け加える。

「ええ、立礼式でも問題ないでしょう。むしろ車椅子でしか参加できないような重症の方こそ、このような茶事を必要とされているのではありませんか?」

ごもっとも。もうここまで来たら茶事がどうの、茶道がどうの、というよりも実行のためにどうやって必要項目を押し込むかになってきたような気がする。

「津田様、一度にお呼びする人数は決めていらっしゃいますか?」

「正式な茶事で初心者となりますと、慣れてくれば別ですが最初に多くは受け入れが難しいかと」

川村と志津が難しい顔をしている。

「それは任せます。確か3階は仕切りが出来るはずですから、少人数にも対応できると思います。場合によっては補助者か世話人を付けてもいいかもしれません」

主人が出来るほど茶道に詳しい訳ではないので、任せるしかない。3階は6畳・6畳・8畳に区切ることができたはずだ。

 そこへ安倍が入ってきた。

「お香の予約ができました。本日13時に相談時間を取っていただけるそうです」

見ないと思ったらお香のお店に予約を入れていたのか。

「お昼にしましょうか」

志津の提案で一旦話し合いは中断となった。



 午後からはお香の店で色々見せてもらって話しをした結果、白檀と伽羅で調整することに決まり香木を買って帰る。

 志津も霊課に来て、補佐と課長と川村を連れて応接室へ篭ってしまった。




何をするにしても話が大きくなっていく。

胃が痛いね、征也君。

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