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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第四章:ダンジョンを増やそう
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その、二十八 集団演習






翌日、山村は十数人の部下を連れて会議室へとやってきた。

「今日もよろしく頼むぜ」

「おはようございます。

 この人数では大分狭いですけどお座りください。

 説明を始めていいですか? それとももう説明してあります?」

「力ごとに3組に分かれることだけは指示してある」

ええっと、それって何も説明してないんじゃないでしょうか……?

全員が着席したのを見計らって説明を開始する。

「今日は皆さんの力量ごとの階に入ってもらいます。

初心者はダンジョン2階で1.5カラットを、中級者は5階で8カラットを、上級者は最下層で20カラットを相手してもらいます。

 山村さん、どう分かれますか?」

「あー、上位4人、中級8人、下5人だ。おい、お前ら力ごとに別れろ」

指示を出すと綺麗に分かれてくれた。

「2階と5階は地図がありますので、迷子にならないように見ておいてください。

時間は15分後、9時開始です。4時間通して行いますので、13時の放送が聞こえたら各自戻ってきてください。

あ、13時半になったら迎えに行きますから迷子になっても心配はいりませんよー」

のほほーんと予定を話す征也の後で山村が檄を飛ばす。

「ノルマは一人霊珠20個! 足りなかったら基礎練2倍!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

良い返事に部下たちに慕われているなー、とほほえましく思う。

但し、実際に口にしたら岸田辺りから激しい反撃を受けるだろう。征也は部下たちの微妙に引きつった口元には全く気付いていない。鈍いのはなかなか改善されないらしい。

「では、後ろの扉から入ってください。右が2階の入り口で左が5階の入り口です。最下層には連れて行きますから。

あ、こちらにペットボトルのスポーツドリンクは用意してあります。一応包帯もありますので必要な方はどうぞ」

「「ありがとうございます!」」

彼らは武器のチェックをしたり精神統一を行ったりして扉の前で準備をする。

「はい、3分前です。皆さん中へどうぞ」

そう告げると上位4人と山村以外は扉の中へと入って行く。

「最下層へはこちらから入ってください。

山村さんは左の部屋のモニターを見ていてもらっていいでしょうか?」

「分った」

何もない最下層を上位4人は見回す。

「明かりがついている下の所に排気口があるのは見えますか? 一人一つずつついてください。

そこから邪気が出ますから、魔物が形成されて動き出したら討伐を開始してください。それから、霊珠はその都度取らないと後から出てきた魔物が吸収してしまうことがありますので危険です。

13時になったら迎えに来ます」

そう言って征也はモニタールームへ戻る。

山村と隊員たちの姿を確認してから

『9時になりました。始めます』

と全館放送を行った。ラインから一斉に邪気が流れ込み、排気口から噴き出した邪気が魔物を形成し始める。

『ごぉらー! 2階固まるな! 散れ!』

入口付近に固まっていたのを放送で怒鳴りつける。

最下層組は順調に狩りを始めた。

征也はダンジョンのシステムチェックも兼ねているのでラインの流れや魔物の形成・排気口の機能など細かくチェックを入れる。特に新しく改造したフィルターの確認に神経を使っている。

手元に淹れてくれるお茶にも手を付けずに確認作業を行っている。

『ぬぉぉぉぉ…………!』

『とぉぉりゃぁぁぁぁ…………!』

あちこちで奮闘している声が聞こえる。

「うん、どこも大丈夫。異常なし」

一通りチェックを終えてお茶に気付いて振り返ると、予想に反して天司ではなく清雅が目に入った。

「あれ? 浜岡君、学校は?」

「課長補佐から学校休んでこっちの報告をしろって命令されました」

何を思い出したのか非常に情けない顔をしている。

「そーなんだ? じゃ、会議室から椅子持ってきたら? 立ちっぱなしじゃ疲れるでしょ」

「はい……」

清雅は椅子を取りに行った。

「ふん、悪くねぇ」

「何でしょう?」

ふと漏らした言葉に思わず反応してしまった。

「モニター視るだけじゃつまんねぇと思ってたが、戦いの動きをみられるならまあ、いいかってことだ。

お、田代は腕上げたか」

「あ、リモコン使います? ズームにもできますから」

リモコンで画面を切り替えながら部下の様子をチェックし、なにやら呟いている。断片的にしか聞き取れないが、誰がどこを強化したほうがいいとか、どこを伸ばしたほうがいいとか、そんな意味の事を呟いている。

良い上司なんだよねぇ。

時計を見ればもうすぐ11時、部下たちは段々疲労して必死になってきている。

「浜岡君、給湯室のおっきな炊飯器にスイッチ入っているか見てきてくれる? スイッチ入ってなかったら押してきて」

「分りました」

手持無沙汰だった浜岡は飛んでいく。

12時過ぎ、部下たちは疲労困憊のようで魔物のいない場所で座り込んでいる者もいる。5階は孤軍奮闘を続けている者も多いし、最下層はまだ気力があり動きも悪くなっていない。

2階は全員合流して交代しながら休んでいるが、今度は山村も怒らない。

「初心者の人たちはリタイヤさせます?」

「いや、もうしばらく入れておこう。あいつら最近先輩に頼ってばかりだからな、助けが来ない状況で少しは成長しようとあがいてみればいい」

と返事が返ってきた。自分のやるべきチェックは終わったし、山村が見ていればいいか、と思い声をかける。

「何かあったら会議室の方にいますから呼んでください」

征也は昨日のうちに唯に頼んでおいたが、一人で大丈夫かと塩おにぎりを作っている様子を見に行く。清雅は課長補佐に報告に行ったきり帰ってきていない。

お茶を作って冷やし沢庵を切りながら3升の炊飯器なので多分全員に行き渡るかと思うけどどうかなぁ、と思っていると12時半の時計が見えた。

『12時45分です。残り15分、気を付けて戦ってください』

全館放送に隊員たちは希望が見えたかのような表情をした。そんなに辛かったかい?

13時、気脈の流れを止める。

『終了です! 各自戻ってきてください! 途中の魔物は回収しておきますのでまっすぐ帰ってきて大丈夫です!』

放送と同時に気脈へタワシ君4号(こびりつき汚れも根こそぎ落とすという改良版)を投入し、残った魔物と気脈に残った邪気でできた魔物は誰も居ない4階へ転送して処理する。

「お疲れ様でした。戻りましょう」

最下層の4人を会議室へ戻し、次々に扉から帰ってくる隊員たちを迎える。

「帰った人からおにぎりとお漬物をどうぞ。キーパーには冷たいお茶が入ってますから、ご自由にお飲みください」

「「「はー」」」

ほとんどはまずお茶を一気に飲んでからおにぎりに手を付ける。

皆一様にヘロヘロになっているが、動くときは這っている割にしっかり食べている。食べられない程になった人はいないようなので意外とみんなしぶといらしい。

「全員帰って来たか」

「落ち着いたらアンケート用紙に記入してください」

名前・階層・討伐数以外は自由記入欄となっていて、要望を書くことも可能だ。


回収後、時間が長かったとか休息所が欲しかったという要望が多かった。

それを見て山村が眉根を寄せたので、その後の訓練は厳しくなるかもしれない。



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