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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第一章:どうしよう、神さまになってしまった…
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その、さん 神様として雇われました

神様になって意外な現実的収入とお仕事の取引先(?)。


「ああ、来てしまった……………」

霞が関のビル群を見上げながらつぶやく。

「来てしまいましたね。不安ですか?」

「俺はこれからどうなるんだ……………普通の神様たちですら扱いが慎重になる捜査霊課に行くんだろ? これから俺はどうなるんだ?」

同じ言葉を繰り返す俺に天司君は緊張をほぐすように笑った。

「大丈夫ですって。そんなに心配する程のことじゃありません。捜査霊課とは普通の神様たちのいざこざを処理する謂わば裁判所的な業務を行っているのですよ。

 何も悪いことをした訳ではないので気楽に入って下さい」

そう言って警察庁の中へと案内した。

「さあどうぞ」

案内されたのは学校の教室程度の広さの部屋だった。

「失礼します」

恐る恐る入ってみると、目の前に狐がいた。

『貴方が新しく神になったっちゅう津田様かいな?』

「き、狐が……しゃべった……」

まず狐が都内にいることに驚き、さらにしゃべったことに呆然とした。

『そら、しゃべりますがな。うち、管狐でっせ?』

「津田さんは元々普通の人ですし驚くのも無理ありませんよ。神流さんは関西弁になり切れていない変な言葉遣いですからねえ」

『健康の神になったんでっしゃろ? まずはうちの肩こりから治してくださいな』

「肩こり……」

「まず、両手を肩において神力を集中させるんです」

管狐におっかなびっくりで両手を両肩と思われる場所に置き、神力を込める。

『アアいい気持ちや。あんさん才能あるでぇ』

管狐に言われても困る。

「こんにちわー! キエートちゃんでーす! 津田様いらっしゃいますかー?」

キエートがいきなりドアを突撃してきた。

「おおっ! 初仕事は成功のようですねえ。その調子でどんどん御願い事を叶えて行ってください!」

「それで、キエートさんは何の御用だったのでしょう?」

冷静に天司君がつっこむ。心なしか声が冷たい。

「いやあ、ポイントカードを届けに来たんですよ。今の御願い事で一ポイント。ほら、カードに『一』って書いてあるでしょう?」

青い手のひらサイズのカードの真ん中に小さく『一』と書いてある。

「はあ、ポイントってなんだ?」

「人間って面白いことを考えますよね? なんと! 五千ポイント貯まると神様として昇格できるのです!」

「ええっと……今日のが一ポイント? 一日一ポイントで一年に三百六十五ポイント? 約三年で千ポイント、十五年かかる計算か?」

「お願いごとによってポイント数は変わってきますよ? それに長きにわたる時を生きる神の昇格ポイントは十万ポイントなんですから、かなり優遇されています」

「昇格しなくてもいいんだよな?」

「もちろんしなくっても構いませんが、後でお小言をたっぷり貰うと思ってください。何て言っても上級神と同じだけの力を持っているのですからね? しっかりお役目を果たさないとお叱りがありますよ」

「げええ。怒られるのは嫌だ」

「では頑張って行きましょう! 葉月様はこっちのポイントカードです」

キエートは天司君に赤いポイントカードを渡す。

「葉月様のお仕事は当分の間天神様の下請けですね」

「ああ、日本最大の学問の神様だからね。解ったよ」

「津田様のお仕事は藤野八幡宮の下請けをやっていただきます。津田様の地区で一番大きな神社の神様に当たります」

「うん、知ってる。藤野八幡宮の下請けだね。難しいのはパスで」

「下請けなのでそこまで難しい依頼は来ませんよ。ではでは」

言うだけ言うとキエートは消えて行った。

バタバタバタ

「新しい神様来たんですって?」

「どんな方なんですか?」

「こら! 失礼のない様にしろ」

高校生くらいの男女が入ってきた。

「私、赤井由利奈です。よろしくお願いしまーす」

「随分調子がいいな、なにを企んでいる?」

元気に自己紹介した少女を天司君が牽制する。仲が悪いのだろうか?

「いやだなあ、企んでなんかいませんよ。ただ健康の神さまなんでしょ? だったら美容も管轄かなあって。仲良くしていて損はないでしょ?」

こっそり理由を言うが神の耳を持ってしまった俺にははっきり言って丸聞こえだ。やっぱり打算的なのか、女って……。

「そばかす治してくれないかなーって」

「そばかす位なら何とか、多分」

「本当? やった!」

俺は彼女の頬に触れてそばかすを治す。ゆっくり消えて行くそばかすを見ていたら、確かに美容の神にもなれそうな気がしてきた。

「治った! 治った!」

手鏡を片手にぴょんぴょん撥ねて喜びを表現する赤井ちゃんに俺は和んでいた。

「ポイントカード増えました?」

「え、ああ、一・五になっている。美容ポイントはもしかして低いのか?」

「かもしれませんね。こちらが高山課長。それからこっちが穴井喜一君、赤井君と同じ高校二年生だ」

頭の上の方が薄くなっている五十代半ばと思われる高山課長は厳しそうな視線を送ると、頷きを持って挨拶にした。

「よろしくお願いします」

「僕は穴井、分らないことがあったら何でも聞いてください。できる範囲で教えますから」

「ありがとう」

とりあえず課長を除いて怖くなさそうな面々で安心した。

「とにかく、雇用契約を結ぼう。君が医療の神でよかったよ。医療の神と言うことは医療費の削減につながって予算もとって来易くなるからね」

高山課長が優しく教えてくれる。意外に話しやすいのかもしれない。

「はあ、そう言うものですか?」

「そういうものだ。一応出来高払いで、0・五ポイントで都の最低八時間日給は保証しよう。どうだね?」

どうだね? と言われてもどうしよう、と言うのが俺の言い分だ。

「はあ、頑張っては見ますが、何分初めての事ですから何とも……」

「そうだろうが、キエート様が依頼を持ってくる。その時にやり方を聞いて頑張ってみてくれ」

「キエートかあ、キエートはなあ……今一不安が残るあの娘」

お調子者でハンバーグが好きなイメージしかない。

「あれでそれなりに神さま情報局の中では優秀な方なのだよ」

「神さま情報局ってなんなんですか?」

「簡単に言うと神様の管理局の事だ。神様が不正をしていないかとか、どこの神様が消えたとか、どこで神様が発生したとかそういう情報をチェックするところだ。もちろん、生れたばかりの神様を教育して独り立ちさせるのもここの仕事の一つだ。だから安心して任せておきなさい」

彼は安心させるように俺の肩を叩く。

「はあ…………」

「日々の日誌は葉月から貰うといい。どんな願い事を叶えたのか日誌にして提出すること。以上で私の話は終わりだ。今日は帰っていいよ」

帰宅許可をもらったのでさしあたって空間移動で自分の家の目も前まできた。

「ね、怖くなかったでしょ?」

天司君も一緒に付いてきた。

「どうしてついて来たんだ?」

「いやだな。これから藤野八幡宮に一応お参りに行っておく方がいいかと思って。付いてきた方が心強いかと思ったのですけど、一人でも大丈夫ですか?」

神様に挨拶。俺の顔はさあっと蒼くなった。

「ほら、そんな顔しないで下さい。ささっと行って終わらせましょう」

「あ、明日にしよう。今日は疲れているから」

「駄目です! ほら、すぐ行きますよ」

そう言って天司君は空間転移で藤野八幡宮の鳥居の前まで移動する。

「ほら、大丈夫ですから」

「うー」

「さあ行きましょう」

唸る俺を引きずって鳥居の中に入って行く。

ちゃりん

からから

二礼二拍手

「えっと、これから下請けをする津田征也と申します。以後よろしくお願いします」

『おお、お前さんが。数日前に神になったばかりというておったな。八幡様は忙しいお方だ。この藤野八幡宮を預かっている藤野じゃ。以後よしなに』

近所のおじいちゃんと話しているみたいだ、それがこの藤野様との初対面の感想だった。

「ほら、大丈夫だったでしょ?」

「まあな、藤野様、優しい神様みたいでよかった」




怖がりながらも結局は押し切られてしまう征也君。

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