その、二十四 神社をつくろう
新年、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。
ダンジョンの入り口を見て帰ろうとした征也たちは、家から大分離れてキエートが付いてきていないことに気が付いた。
「あれ、キエートは? 見なかった?」
「あ、そういえば」
松本も周囲を見回すが、キエートの姿はない。
「津田様~ぁ! 神社を作りましょう! 神社♪」
キエートが上から降ってきた。
「は?」
「これだけの空き場所があれば神社も出来るでしょう!」
「良いですね、キエート様。あちらの家を更地にして神社を建てましょう。きっとダンジョンに来る術者たちが参拝してくれるでしょう!」
混乱する征也をおいてけぼりにして松本もなぜか乗り気だ。
「さっそく霊課に連絡を入れましょう!」
「ちょっと! ちょっと!」
慌てて止めようとするが
「大丈夫です!」
「こちらですべて手配しますから心配しないで下さい!」
良い笑顔で言い切られてしまった。
「そ、そうじゃないんだケド……」
夕方、天司が帰ってきた。
「征さん、ダンジョンの家の方へ行かれたのでしょう? いかがでしたか?」
「良いと思うよ。思ったよりずっと機能的に作ってあったし、丈夫そうだったしね」
それを聞いて満足そうな顔をして次の話題を出してきた。
「松本に聴きましたが、あの家の隣に神社を建てるという話になったそうですね」
「あ、うん」
聴かなくてよかったのに。というか征也の意志など完全に忘れられているらしい。神様になったばかりの頃に信仰が薄れて神様の消えた神社の後釜になるつもりだと言ったはずなのだが。
「それで神社の造りと境内の配置図を考えてみたのですが、どう思います?」
天司の差し出したノートのページには神明造の神社設計図と配置図と素材などが詳細に書かれていた。
「俺、そういうの詳しくないから。ていうか、神様の消えた神社の後釜になる予定だったから!」
「大丈夫です。こちらで手配しますから、何も心配しないで下さい」
どうしてこう、誰も人の話をきかないのか?
「…………あ、えっと、…………はい」
もう、駄目だ。軌道修正も説得もできない。
「それで、これでいいですか? 神明造よりも流造りの方がいいですか? それとも他の造りをご希望でしょうか? 何かご要望はありませんか?」
「いや、もう、これでいいよ。………………………………………あれ? 最近神社に使う木材って大きな木が少なくなって困っているんじゃなかったっけ?」
確か有名な神社の木材も輸入しているって聞いたことがあったはずだが?
「まあ、そうですね。
でも大丈夫ですよ。捜査霊課の力でなんとかして調達しますから。
気にしないで下さい」
どっかから力づくで持ってくるのだろうか?
促成栽培の方法でもあればいいのに。
……………………………あ、あった。知る能力で検索をかけると、異空間を作ってその中できちんと設定すれば10日で樹齢1000年になるぐらい促成栽培することが出来ることが判明したのだ。しかも苗木が1本あれば複製して大量に作り出すことが可能だ。
神力って、凄い。
「あー、天司君。無理に調達してこなくって大丈夫だから。苗木1本あれば異空間で大量に促成栽培できるから。無理してよそから持ってこなくていいよ」
「そうですか? では、苗木をお持ちしますね」
「うん」
ああ、同意してしまった。また自分で自分の首を締め上げている。
「どのくらい大木を育てられますか?」
「うーん、初めてだから何とも言えないけど、設定上は10日で樹齢1000年位まで育てられると思う。100~200本くらいかなあ? やってみないと分からないけど」
「では、そのあたりで宮大工の方々と相談してみますね」
「うん、乾燥もさせるんだっけ? 切って1年位。それも理論上は1日でできる、ハズ。失敗しなければ」
「分りました。1度作ってみてください」
2時間もしないうちにヒノキの苗木が5本征也の手元に届いた。
「天司君て相変わらずこういう手配速いよね」
そう言いながら空間をつくる。
「んー、多分大きくなるからー、根っこも広がるし……1aごとに1本植えてさらに広く必要になったら広げるか? でも空間を広げるには後だと大変みたいだから…………4aごとに1本として200本なら……800m×1㎞か?
差し当たって2㎞四方で作っておけば安心、かなぁ?」
空間を作り、気候・土壌・地形・降水量を設定し、雑草なども入れておく。
「苗木の方を複製して…………」
知る能力をフルに使い正確に複製の作り方を再現し、5本から200本に増やす。
それを等間隔に埋めていき、雨を降らせる。
「最初の2時間は1時間で1年、次の2時間は30分で1年、その次の2時間は20分で1年、次が15分で1年、そのあとはずっと10分ごとに1年が経過するように設定して……っと」
全ての設定にチェックを入れて1時間ほどで終了した。
翌日―
「お社って普通に買えるんだね。ホームページで写真とサイズと値段が書いてあってびっくりした。
うん、あれでよくない? 大きなの建てなくっても」
「ダメです~! 絶・対・に! ダメです!」
自分の家を持たずに他の神の去った家(神社)でいっか、とか思っていた征也には全く作る気が無い。作るとしても既製品で十分だと思っていたりする。
「大きなの建てても管理も大変そうだし、新しい神社とか参拝者も少ないんじゃない? そこまでして立てなくてもいいと思うんだ」
「ダメです! 津田様は最上位の力を持つ神なのです! 自覚を持ってください! しっかりした何百年たっても大丈夫な神社が必要なんです!」
「んー」
イマイチピンとこない。
「天司君は神社ほしい?」
苦笑いをしている天司は
「欲しいと言うか必要と言うか……。そうですね、そこまで既製品がいいとおっしゃるなら従神の社を作ってもらうことにしますか。彼らは現状中級クラスの力しかありませんし、依代もありますから力の制御に絶対欠かせないものと言う訳でもありませんからね」
と銀たちの社を注文にすることを勧める。
「力の制御に社って関係するの?」
「当・然・で・す!」
キエートは目を真っ赤にして迫ってくる。
「神社と言うのは土地神が力の流れの起点にしたり、信仰を得て神力に変えたりするために重要なものですから。
まあ、普通の神々はそうですが、征さんは管理する土地も信仰を集める必要もありませんから。絶対必要、という訳ではありませんが、他の神々との兼ね合いもありますし作っておいた方が無難でしょう」
「そう?」
「ええ、昨日のヒノキはどうしました?」
「ああ」
見に行ってみると、樹齢50年程の樹がきちんと育っていた。
「どーかな? 品質チェックはいましてみたけど問題なさそうだよ」
「では、大きく育ててそのあとは時間を止めておいてください」
「りょうかーい」
天司の言葉に従って設定しておく。
「神社の概要と要望は聞きましたので、打ち合わせと設計はこちらで行っておきます」
こうして、神社を作ることになったのだった。
どんなに知る能力でチートなことができるとしても、そのこと自体を知らなければ意味がないのです。




