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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第三章:ダンジョンは、どうにかこうにか拡大中
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その二十二  耐久実験(不知火編)



そして迎えた土曜日、不知火がやってきたのは丁度征也たちが朝食を終えたころだった。

「おはようございます。津田様、何やらご相談があるとお聞きしましたが」

「おはよう不知火さん。一般術者としての意見を聞きたいので、相談というか実験に付き合ってくれませんか?」

征也はいつもの会議室に案内する。

「今ダンジョンの作成を進めているのだけど、魔物の強度を設定するのに一般術者の限界がどの程度なのかがよく分からないんですよ。

なにしろ俺はド素人から神様になって強さの過程が無かったので。

今の所1階が0.25カラットまで、2階・3階が1カラットまで、4階が4カラットまで作っているんですけど、5階以上をどうするか迷っているんです。

強いと邪気を多く浄化できますけど強すぎると術者の方が負けてしまって意味がありませんから、そのバランスがどうかと思いまして……」

長々とこれまでの説明をする。

「なるほど、では私がダンジョンを使用する一般術者がどこまで対応できるかを判断すればよいのですね?」

「はい。何度か連戦してもらって5階を移動することが出来ないと判断されれば、その強度ということにできます。

今回は最下層の闘技場で強度を設定して戦ってもらおうと思いますが、大丈夫ですか?」

「了承しました」

征也は不知火と最下層に降りる。

「何もない所ですね」

「ええ、ここは試験会場の予定になっています」

「試験会場? どういうことです?」

「1階から2階に入るときの試験は魔物の討伐数を条件に入場制限する予定ですが、3階から4階に入るためにはここで一定の連戦をこなして勝利した者だけが入れるようにしようかと思っているんですよ。その時の試験会場です。

ここの魔物は0.5カラットから130カラットまで設定が出来ます。

差し当たって4カラットからスタートしても良いですか?」

不知火は愛用の剣を構える。

「お願いします」

「3連戦ごとに1カラット上げます。途中止めたくなったら教えてください。

では始めます」

不知火は最初少し戸惑ったようだったが、すぐに慣れて次々に討伐居ていく。

7カラットに入った辺りで表情が険しくなり、8カラット、9カラットで必死なように見えた。

11カラットになると防戦一方でかなり苦しそうだ。

そして12カラットの時

「止めてください」

2戦目中に次を止めようと声を掛けられた。

「はい、止めました」

回線を閉じて不知火に声をかけると最後の魔物を倒したところだった。

「大丈夫ですか?」

ペットボトルのスポーツ飲料を渡すと500ml一気に飲み干した。

「大丈夫です。最後に戦っていた魔物が12カラット、でしょうか?」

「12カラット2戦目で終了しました。7カラットに入った辺りから表情険しそうでしたね」

「ああ、私も7カラットに入ってから厳しいと感じ始めました。10カラットまではそれでも倒せると踏んだが、最後は無理だと感じた。

私も女神に認められる力量だと自負し普段から鍛錬は欠かしたことが無い。だが恐らく修行を積んだ熟練者なら6カラット程度が連戦の限界ではないでしょうか?

才能と技術のある者であれば10カラットの連戦辺りで限界が来るでしょう。

まあ、突出した才のある捜査霊課の面々であればわけが違いますから、彼らは別基準と考えた方が良いでしょう」

ソーデスネ

「時に、3階のような休息所を作ることは考えていらっしゃるのでしょうか?

差し出がましいようですが、前回試運転で参加させていただいた3階と同じような広さであれば休息所を中継点として、魔物が多少強くても凌げる可能性は高くなるでしょう」

「そうですね、6カラットになる場所には休息所を作っておこうかと思っています。ただ4カラットを4階と5階にするか、若しくは4カラットを4階だけにして5階はもう少し魔物の強度を上げた方がいいのかということを悩んでいるんですよね」

うーん、と頭を巡らすがはっきり言って征也にはあまり判断する材料が少なすぎる。

「今日はお疲れのようですからまた後日、今度は4カラットと6カラットで連戦していただいてからでいいので意見を聞かせてもらえますか?」

「回復するのはそう時間がかかる事ではありません。そろそろ昼食の時間なのでお昼を食べたらまた実験をしてみましょう」

「大丈夫ですか?」

「ええ」

ダンジョンを上がって霊課の食堂に行く。今日の定食は豚の生姜焼きとひじきと煮豆だった。




「では、始めますよー」

「いつでもどうぞ」

昼食を食べてお腹が落ち着くまでゆっくりした後で、耐久実験を再開した。

4階を4カラット、5階を6カラットと想定しての実験であり、排気口を2カ所同時に使用して4カラットを15体の後6カラットとどこまで対戦できるかを調べることになった。

不知火はあっさりと4カラットの対戦を終え、6カラットも20体を越えてもなお余裕をもって戦っていた。

開始から3時間になり終了の声をかける。

「終わりです! お疲れ様でした!」

「ああ」

ざっしゅっ

最後の魔物である土蜘蛛を切り倒して終了となった。

「どうでしたか?」

「まあまあ骨のある魔物であったが、熟練者ならこの程度の連戦は可能でしょう。むしろ4カラットを長く続けるよりも6カラットで一気に邪気を処理してしまったほうが術者としても楽なのではないでしょうか?」

「そうですか? では、4階に入った者は5階にも入れるようにしても大丈夫だと思いますか? それともまた試験を設けた方がいいのでしょうか?」

「4カラットと対戦できるのであればそれなりの熟練者と見ることが出来ます。これ以上は試験を設けるほどではないと愚考します」

「そうですか。では5階は6カラットで調整して、試験はなしで進めて行こうと思います。

ご協力ありがとうございました」

「いえ、お役にたてたのなら幸いです」

不知火にはお礼を言って討伐した分の霊珠を渡して報酬とする。

「7月の3連休に最後の試運転を行う予定ですので、良かったら参加してください」

「最後の、ということは開業が近いと言うことですか?」

「最終試運転で大きな問題が無ければ8月のお盆明けには本格開業をする予定です。

何事もなく開業できればいいんですけどね」

そう笑った征也に不知火は

「ではまた参加させていただきますね」

と言って帰って行った。



捜査霊課の面々にも話して最終的に5階は6カラットで調整することに決まった。



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