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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
間章:嫁? いや、余裕ないからほっといてくれ!
19/70

その、じゅうろく お嫁さん狂騒曲

そこ数時間で(本人にとっては)盛り沢山なショックを与えられます。




 翌日、定時に仕事から帰ってくると、なにやら会議室がうるさい。

「私は帰りません! 津田殿を婿にして≪グリーンライト≫に迎えるのです!」

甲高い声は昨日キエートが眠らせたミーファという女神の声だ。

一応昨日キエートから聞いたが、自世界で魔法を使うことを許可して魔術の進化とともに魔力・神力が足りなくなって困っているA4クラスの女神だそうだ。

但し、昨日征也が強力に神力を注いで完成した≪世界渡り禁止の呪≫によってほとんどこちらの人間と変わらない程度に神力を奪われてしまったようだが。

ガチャ

征也が扉を開くと一斉に目が向いた。いつもいる天司・キエートの他に捜査霊課の課長・課長補佐や他の面々もいる。

引きつった征也は一言。

「他の世界行きたくない」

会議室にホッとした空気が流れるが、一か所だけ怒りに燃える場所があった。そう、ミーファである。

「何故ですの? 最高神の私の場所に来たくないなどと!」

彼女は自分の元に来たがるのは自分の世界の住人で格下の存在であり、他の世界の、それも自分よりもすごく格上の神ではないことを全く解ってはいない。

「知らない神の所になんて行きたくないし! それに、君怖い!」

怖い者には近づきたくない、征也の切実な思い出あった。

とにかく自分に自信がありであろう絶世の美少女の女神は、絶対断られることなどありはしないと思っている。

その絶対の自信が何とも怖いのだ。

「強制送還! 強制送還して!」

「ああやっぱり。頼んでありますよ」

キエートは征也の言いたいことは分っていたようだ。

『こちら時空管理局です。地球の神々からの苦情により、上位の神誘拐未遂の罪で強制送還及び世界の魔力回収1/3が相当と判断されました』

「いやああああ! なんてことを! 津田殿助けて!」

この世の終わりのような悲鳴を上げてミーファは征也に助けを求めたが、征也は引きつった顔で一歩下がって

「じ、自業自得、なんじゃない?」

と言っただけだった。

こおおおおおおおおおお

ミーファはさらに何か言おうとしたが、突然現れた光と風の渦の中に巻き込まれていった。

後で聞いた話、ミーファは自分の神力は人並みになり、元々自分の世界に力が無くて困っていたのにさらに魔力回収で取られてしまったら、世界をそのまま維持すること自体が難しくなってしまうだろう、とのことだった。

また、時空管理局が今回の事を拡散してくれているそうなので、今後こういう誘拐は極めて少なくなるだろうと言われて少し安心した。


翌日、初給料のために捜査霊課の応接室に通されていた。

初給料は≪健康の神様≫の分と≪ダンジョン作成管理・霊珠代≫に分かれており、総額で既に一般的な生涯賃金をはるかに上回る給料明細を貰って目を疑った。

あれだけ頑張っているバイトよりも遥かに副業の給料が高いことにも地味に傷ついた。

「今何か必要なモノはあるかね?」

「ええっと、……健康の神様の元になる医学書……解剖学と生理学の本を探しているんですが、普通の図書館にはあまり置いてなくてどれがいいかと思っているんですが」

お金をもらう以上はしっかり成果を発揮するべきだろう。図書館に置いてある一般向けではなく、医学生が読むような専門書が欲しいのだが本屋に行っても分厚いのを見るだけで中身を読む気が失せてしまう。

「ああそうだね。だったら医学部に頼んでみよう」

課長はあっさり医学部に頼むなどと言っているが、そんなに簡単なことだろうか?

「それで津田君、お見合いしなさい」

「は?」

突然言われたこと言葉に頭がついて行かなかった。

課長曰く、4月の中旬にはαを受けたのが征也と天司であると特定され、保護している捜査霊課に神妻候補が殺到した。

天司は正式な婚約者がいるために辞退したがために、征也のみが対象となってしまった。

捜査霊課としても血で血を洗う争奪戦になりかねないため対応を求められ、国内国外で一人ずつの候補者を見合いさせると通達した。

そして、一昨日に最終的な神妻候補者が2人揃ったと言う事であった。

征也が神になったばかりで混乱していて、さらにダンジョンの作成までやることになっているので、心労を後に伸ばそうと神妻の話は話さなかったことを伝えられる。

「ああ、そうなんですか」

もう言葉もない。

「もう少ししてから見合いの話をする予定だったんだけどね」

昨日一昨日の異世界からの女神の件が伝わり、女神が婿にして異世界に連れて行く発言が問題となり、すぐにでも見合いを、と言われているそうだ。

「土曜日、開いているかね?」

「はい」

「では、土曜日に見合いをするからそのつもりで。いつも通り会議室へ10時に来てくれ」

「はい」

大きなため息をつきながら応接室を出ていつもの会議室へと向かった。



「大丈夫ですか?」

会議室へ戻って天司が声を掛けるが

「うん、大丈夫、じゃないかも……。いや大丈夫。大丈夫だよ」

自己暗示のように大丈夫とブツブツ呟く征也は絶対大丈夫には見えない。

「差し当たって彼女たちの情報を聞くだけでいいので聞いておいてください」

と言って天司は手元の書類に目を落とした。

一人目は国外から、名前は梓・シュベルツ。

魔術結社≪暁の誓約≫のメンバーで、大学まで飛び級で卒業して今は魔術師としての腕を磨いている17歳。

高い霊力を持つが、腕はまだ未熟。

霊力の高い両親から契約妊娠で生まれ、高い霊力を持っているが期待されたほどではないためサーシャの元へ預けられて育つ。

後見人のサーシャは≪暁の誓約≫の古参幹部ではあるが最近は力を失いつつあり、梓が神妻となり力を得ることで組織内での勢いを回復しようとしている。

また、≪暁の誓約≫の方では、上手くいって梓が征也に気に入られれば取り立てるが、征也に嫌われれば神の怒りを買ったとして切り捨てるつもりである。

「それって権力争いに使われているってことだよね? 面倒臭い……」

「そうですね、でも大体そんなもんでしょう」

二人目は国内から、名前は連城唯。

神道系呪術集団≪月の水≫の最高幹部の1人、連城拓海の3女。

高い霊力と技術を持つ大学4年生で、既に卒論のみとなっているために上京してきている。

連城氏は高い霊力を持つ女性4人と関係を持って2男3女の子どもがおり、第二愛人の娘として生まれて7歳で母を亡くしてからは正妻のもとで育てられた。

正妻は現在第三愛人と争っているが女児を産んでいないために政略結婚の道具として唯を育て、唯が征也に気に入られて≪月の水≫を手に入れられれば娘として優遇し、征也の怒りを買えば妾の子として切り捨てる予定だと言う。

「こっちも面倒臭い。どうしてこう普通な候補者がいないの?」

「神力が強いので、引き込められたら得ですが、怒りを買った場合は困るので、捨てやすい微妙な立場の候補者を推薦しているようです」

「その≪月の水≫って確か≪変若水≫のことだよね?」

月読の尊が作る若返りの水があったはずだ。

「ええそうです。御存知でしたか」

「ちょっとだけ勉強した」

捜査霊課として膨大な知識を持つ天司に比べれば、本当にちょっとではあるが。

「土曜日にはオーダーしたスーツが出来上がっているはずです。午前中に取りに行きましょう」

猫ホラーが解消した翌日に天司に無理矢理引っ張って行かれて捜査霊課の経費で作らされたスーツがあるのだ。

「オーダーしたのはこのため?」

「ええ、ここまで早くなるとは思いませんでしたが」

オーダーした時には既に神妻の話が来ていたのだろう。天司は苦笑いだった。

「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。候補は候補ですから」

「ううん……」

天司に宥められるが征也の溜息は消えないのだった。



こうして征也はお見合いへと向かう羽目になったのだった。




連続ショックで≪もうどうでもいい病≫を発病している模様の征也君。

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