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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二章:どうしよう、ダンジョンを作ることになってしまった…
17/70

その、じゅうし 試運転3回目(後編)

後篇です。




14時57分―

欲を出したまだ駆け出しの中年男が1階から2階へと降りた。男は師匠から2階へは決して下りないようにと厳命を受けていたのに。

「ばっかもーん!」

案の定、見つかって激怒された。

「生死にかかわると、あれほど言ったではないか! さっさと1階へ戻らんか!」

「は、はい……、しかし……」

「まだいうか! ほら、さっさと…………」

グルルルルル…………

しかしお説教の途中で魔物が現れて彼は師匠の前から逃げたが

「ぎぃやぁぁあああああああああ!」

角を曲がってきた魔物に気付かずに遭遇してしまい、身体を引き裂かれて惨殺されてしまった。

モニタールームから見ていた征也は

「あ、あれ!」

魔物の遭遇を予想していた。しかし、天司とキエートは

「行ってはいけません。放っておくべきです」

「そうですよ、津田様」

と、引き留める。

「でも!」

「行ってはいけません」

「これで助けに行ったら、後々『何であの人は助けて、自分たちは助けてもらえなかったのか』と揉めごとの原因となりますので、最初から全て助けません」

腕を掴まれて動けず、モニターを振り返った時には

『ぎぃやぁぁああああああああ!』

と魔物に人が引き裂かれていた。

モニター越しとはいえ人が引き裂かれている様子に血の気が引いて気分が悪くなった。

「ちょっと……ごめん」

ふらりとモニターを離れる。

「大丈夫ですか? 顔色が酷いですよ?」

「医務室へ行きましょう。ベッドで少し休んだ方が良いでしょう」

天司が征也に肩を貸しながら医務室へと誘導する。

征也に対しては優しい2人が、どうして術者にはあれほど冷たいことを言うのだろうか。

征也はまだまだ自分が甘いことを自覚してはいなかった。



16時―

『捜査霊課より、16時をお知らせします』

ゴーン

時報の声はキエートになっていた。征也はまだ気分が悪くなって医務室に行ったきり復帰していない。

『1階の方々は交代です。

既に実力に見合わない者たちが、2階に下りて魔物から殺害されています。

気を引き締めて降りてください』

バシュ……

『何だお前! あっ! 俺の霊珠盗るな』

魔物が術に倒された。倒した魔物の霊珠を採った男に非難が浴びせられる。

『止めを刺したのは俺だぞ!』

すかさず男は反論するが、組んでいるであろう3人組の男たちから総攻撃を受けている。

『俺が戦っていたのを最後だけやったんだろ!』

『霊力削いだのは俺達だぞ! この卑怯者!』

それに男も負けてはいない。

『俺に向かってきたのを仕留めただけだろう! 逃がしたのはお前らの失敗だろ! これは俺のものだ!』

モニターの奥では霊珠を廻って喧嘩が始まっていた。

かなり大物の霊珠だからこそ、誰も主張をやめようとしない。

「あー、こういう問題もありなんですね。まあ、津田様に見つかるまで放置しておいてもいいでしょう」

同様の事がモニター越しにあちこちで起っていたが、喧嘩しては魔物に襲われたり他の術者たちに横取られたりして争いは絶えないようだ。

キエートは問題を放置して征也には当分の間秘密にしておこうと思った。



18時―

『捜査霊課より、18時をお知らせします』

ゴーン

少々覇気のない声で時報を伝えるのは征也だ。ようやく回復したようで、モニター室に戻ってきた。

モニター越しだったためか大分回復して、

「気脈から取り込む量が……」

とか、

「ダンジョン内が一定に保たれるように……」

とか、

「邪気の出入りの量の調節を……」

とか、話し合うことが出来るようになってきていた。

これまでは気脈の邪気を全て引き込んでいたが、これからは必要量だけを引き込むようにしたい。

明らかに無理をしている征也にキエートが話しかける。

「津田様、貴方は神になったのですよ。人が死んだくらいで動揺してはいけません」

「死んだくらいって……」

冷静なキエートに征也が絶句する。

「津田様はお魚を食べますよね?」

「うん?」

「ぴちぴち跳ねているお魚を捌くとき、どんな感情を持ちますか?」

「え、……?」

意図が判らず何と答えていいのかわからない征也は口ごもる。

「最初から神として生まれた私から見れば、人も魚も変わりありません。

人の方が似たような姿をしているだけで、魚とも話が出来ますから同じに見えます。

それが、神なのです。

神は人ではありません。

人も魚も、動物も植物も、生きとし生ける者全てを同じに見て贔屓をしてはいけません。

贔屓にせず、全て世界の循環が上手くいくように手を貸す、それが上級神の役割なのです」

キエートは言葉を重ねる。征也は大人しく聴いている。

「私は神々を管理するために生まれた存在です。神以外はどうでもよい存在です。

それが役割というものです。

津田様は人から神になったために人を贔屓に見ていらっしゃいます。

しかし、人は循環する世の一部であって、世界そのものではありません。

今の人の行いからするとそう遠くない未来に世界から切り捨てられることになるでしょう。

その時、神として人類の滅亡を見るのに、たった1人の人間が亡くなったくらいで動揺していたらどうするのです?」

「その時のための練習ですよ、今は」

天司が横から宥めてくれる。

「今のままなら、いずれそうなるでしょう。

征さんは今まで人として生きてきて、人としての倫理や恐怖を持っています。そこから新たに神としての価値観を得るのは、短期間では難しいでしょう。

だからこそ、このダンジョンを作りながらゆっくりでいいので神としての倫理や価値観を理解してもらおうと思っています。

今日のダンジョン内での死は予測されたものでした。

そのうち予測できない死にも遭うでしょう。

ダンジョン作りというのは、実は征さんに与えられた神となるための時間なのだろうと推測しています。

そうして段々と神となり得るのです」

あの神々のことなのでそんなことはないと思うしダンジョン作りも思い付きを口にしただけなのだが、キエートの言い分と合わせて天司の言うことを聞いてみれば征也には天の采配とも思えた。

征也には神としての考え方はできないし、理解できていない。

そもそも人間としても理解力のある方ではないのである。

今のところは、そう言うことにしておこう、と思う。



19時45分―

『捜査霊課より、19時45分をお知らせします。

これより気脈を閉じます。

邪気は階段前に回収しますので、1階は入口前へ、2階は1階への階段前へ、3階は2階への階段前へ向かってください。

そこの魔物が倒されたら今回の試運転は終了となります。

各自捜査霊課の会議室へお戻りください。

なお、21時までに戻られなかった場合は、強制排出の上、罰金となりますのでご了承ください』

キエートの放送と同時に征也はタワシ君3号を3個投入した。

階段前に術者たちが集まる頃にはタワシ君3号たちは本日最大の魔物になってくれているだろう。そして普通の術者に討伐できず捜査霊課の面々が退治することになるだろう。

『ぐわぁぁあああああ!』

『こいつ! 術が効かない!』

予想通り普通の術者の術は効かないようだ。

ざしゅっ

2階階段横で斬撃の音がして鬼の首がごろり、と落ちる。

結構グロイ。

1階・3階共に鬼の首が落ちた。

鬼が綺麗に消滅した後、そこに残るは大粒の霊珠だ。

『『『『おおおおお』』』』

見た事もない大粒の霊珠に術者たちが目の色を変える。

キエートがダンジョン内放送をする。

『試運転、終了です。各自ご帰還ください』

現在時刻、丁度20時になった。



21時―

ダンジョンが閉じられ、迷子の3人は強制排出の上で罰金となった。

聞いてみれば地図を魔物に燃やされた、くしゃくしゃにしてなくしたので迷子になっていたと言う。

引き上がられた死体は、一人は師匠が持ち帰った。一人は直筆の誓約書のコピーを添えて家に送った。

「大丈夫ですか?」

「征様、今日は一緒に休みましょう?」

皆、終始征也を気遣っていたが、春仁と天司の間には何故主の危機を教えなかったのかとかなり険悪な空気が漂っていた。







神様になるのも意識を変化させるのも楽ではありません。

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