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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二章:どうしよう、ダンジョンを作ることになってしまった…
16/70

その、じゅうさん 試運転3回目(前篇)

今回は前後篇です。

酷くはありませんが、残酷描写ありですのでお気を付け下さい。

 



 本日は試運転3回目、初の一般人霊能力者を入れての試運転だ。ゴールデンウィークも明日で終わるため、明日反省会が出来るようにするための日程である。

一般人を入れて大丈夫だと判断された2回目の翌日から募集がかけられ、前日12時の締め切りまでに19人が申し込みをしたと言う。まだ作り始めて半月しかたっていないのに、どこからそんなに人が来るのだろうか? 

ちなみに試運転の割には結構な金額の入場料をとるらしい。1階のみと2階以降は金額に2倍の差がある。……試験運転なのに……。

「いいんです! 霊珠がいっぱいとれるのは確認済みなんですから!」

「格安だよ。大安売りだ」

というキエートと高山課長の言葉に押し切られてしまった。

捜査霊課の大会議室に集められた彼らは、部屋の後ろで何階に入るかの申請書と、死んでも怪我しても文句はない、というような誓約書にサインした後で入場料を払っていた。

入場料を支払う隣では、水や携帯食・ダンジョン内の地図なども売っているらしい地図は分るが、何からでも金を稼ごうとしているみたいだ。

 征也・天司・キエートはいつもの会議室で待機し、ダンジョン内の様子が見渡せる状態にモニターを設置してあるものを最終確認していた。大会議室の様子もここから見ることが出来る。

銀たちは

「術者として状態を見て参ります」

「異変が無いか正確にチェックしておきます」

「「ダンジョン初参加に行ってきます!」」

と言って嬉々として参加者の中に交じって行った。

 高山課長が注意事項を説明した後、征也が放送を流す。

『お集まりの皆さん、おはようございます。ダンジョンは午前8時より開門いたします。

 採集は自由ですが、ダンジョン内にごみは捨てないようお願いいたします。

 ダンジョンは午後8時に閉じますが、気脈が閉じるのは午後7時45分、それから邪気を前の階への階段付近へ集めて、階段近くで魔物が倒されましたら終了となります。

ダンジョンが閉じるのは午後9時となっております。時間までに必ずお戻りください。お戻りにならなかった場合は強制排出の上、入場料と同額の罰金を徴収致します。

 1階のみの申請の方は2階へ勝手に下りないで下さい。こちらで止めることはできませんので、後で入場料の3倍の罰金を徴収となります』

放送が終わると、段々時間が近づいてくる。

5分前

3分前

1分前

5

4

3

2

1



8時―

『では、8時です。開門してください』

その放送で挑戦者たちは一斉に門から入る。2階に入る者が先に入り、1階にのみ入る者がそれに続いて行く。

 ダンジョン内の気脈を邪気がなめらかに流れていく。特に問題なさそうだ。



9時―

『捜査霊課より、9時をお知らせいたします』

時報をダンジョン内放送で伝えるが、喧噪であまり聞こえないようだ。ほとんど人が反応してくれない。鐘を鳴らすのも考えた方がいいかもしれない。



10時―

『捜査霊課より、10時をお知らせします』

ゴーン

銅鑼の音を大音響で流してみた。

『捜査霊課より、10時をお知らせします。1階部分から第1班は戻ってください。繰り返します、1階部分から第1班は戻ってください』

若くて経験の浅い1階の者たちに交代するように放送する。2時間おきに交代して2回まで入れるようにしたためで、申請も本人または師匠がすることになっている。

当然過信している素人もいるのだが、そこは霊珠を取るのに死ぬものも多いと聞くので自己責任だ。今回はあらかじめ、死人が必ず出るだろう、と聞かされている。予防策は取らないことにしてある。

「じゃあ、タワシ君3号、……投入!」

タワシ君3号は気脈からダンジョン内に入るための分岐点から投入して、階ごとに滑って行く。3階の隅が今現在の最終到達点となっている。

「では行きますか」

タワシ君3号は10分ほどでダンジョン内の気脈を回って最終到達点にたどり着いたのを見計らって、ダンジョン内に征也と天司が転移する。

3つの気脈から一つずつ入れたタワシ君3号は、天司を保護者とした征也が倒すことになっている。

ダンジョンが現在オート機能で動いているため、征也も動くことが出来るのだ。

「タワシ君3号、幽霊3体になってるね」

幽霊はダンジョンの中で現在最も厄介な魔物と捜査霊課の面々から評されている。2・3階にいるのだが、強さの幅が極端に広いため自分の力量よりも高いのか低いのか分からないのだ。

 妙齢の女性が和服を着ている姿によく似ている。地上でであっても実体がしっかりしてさえいれば、きっと見間違てしまうだろう。

 征也は何も言わずに深呼吸すると霊力を高め、3体の幽霊それぞれの四方から霊気を放った。四方から攻撃を受けた3体の幽霊たちは一瞬高い声で遠吠えのような悲鳴を上げたかと思うと、すぐに消えて行った。彼らのいた証を示すのは床に残った大粒の霊珠だけ。

 征也は気脈のルートを何度も修正したりしているうちに繊細な力の制御を覚えていた。そのため、床や壁を傷つけないように魔物を消し去るといったことも簡単にできるようになったのだ。

ここ最近めっきり感覚で行動することが大事になり、それを着実にこなしてきたからこそ出来るようになったが、本人としては何故出来るようになったのかは『神様になったから?』と思っているのだった。



12時―

『捜査霊課より、12時をお知らせします』

ゴーン

銅鑼の音を大音響で流すと大体の人が気付いてくれる。

 しかし、魔物が目の前に居ても大きな音で集中力が切れるからどうなのだろう? いいのか悪いのか。

「ああ、1階と2階は大会議室に上がって食事をとるようですね。階段に集まって来ています。……3階は休息所の結界内で昼食をとるようです。階段に向かっている人もいますから、残るのは2/3くらいでしょうか」

「うん、俺たちもタワシ君が魔物になったのを倒したらお昼にしよう」

タワシ君3号は、今度は鬼2体と土蜘蛛になって襲ってきた。

「土蜘蛛って、見た目気持ち悪いよね」

自分で作ったダンジョンではあるが、魔物の設定などしている訳ではない。つまり、魔物は勝手に自分で姿を作っているのだ。当然征也の趣味ではない。

「さあ、お昼にしましょう。今日は術者の皆さんと同じお弁当を取ってあります。ああ、デザートは付けてもらいましたよ。征さん、甘いものお好きでしょう?」

「うん」

「私も甘いものは大好きですー」

そう言って彼らはモニターから目を離し、ヘッドフォンもそこに置いて行ってしまった。

捜査霊課の術者も征也たちも見ていない時間。そして誰も倒さない魔物たち。当然、その時間魔物は倒されず強大化していく。…………誰にも知られずに、じわじわと。



12時42分―

それは起った。

「……ハア…………、ハァ…………」

青年の荒い息がダンジョン内の石の壁に響く。青年は他の術者たちよりも多くの霊珠を取ろうとして、時間がもったいないと周囲よりも昼食を早く済ませて出て来たのだ。だから、誰も助けに来ない。

ザシュッ

魔物が背後から青年を切りつける。

「アグッ……………………」

ザン

「グッ…………………!」

魔物に嬲られるがままの彼は、実戦経験が足りず連戦はまだ早かった。独学で師匠がおらず自分の力を客観的に知ることが無く、それまでは霊力が強かったために過信していたのだ。数回の戦闘で自分の霊力が枯渇寸前まで達していたのに気付かずに。

ドサッ

とうとう彼は力尽きて倒れてしまった。

ジュル、ジュル……………

魔物が彼の血を吸い上げる。

やがて彼が他の術者に見つかる頃には、体を喰われて頭だけになっていた。

後で死体になった青年に征也が気付くのは、お昼から戻ってきた後。その時の征也は天司とキエートとともにお昼のデザートに夢中で気づきもしなかった。



13時―

捜査霊課で交っている者は魔物を苦も無く倒していくが、お昼で強化された魔物にかなりの術者たちが苦戦していた。

天司・征也が術者のいない場所へと緊急出動するくらいには数が多く強大になっていた。天司と征也は15分もしないうちに大粒の霊珠を7・8個持ち帰ってきた。

「んー、大漁だねー」

征也は既に並の術者を凌ぐ精度と威力のある術の使い手となっていた。これくらいなら苦も無くできる。

「あと、残りは……ん?」

征也がなにかボールのようなものを見つけた。

「何でボール?」

「違います。これは人の頭でしょう。恐らく、魔物に殺されたのでしょうね。ご愁傷様です」

征也はまじまじと見るが、モニター内に映っている頭は小さくて、よく判らない。

「これはこのまましておきましょう。見せしめも大事ですし」

「何言っているの?」

意味が解らない。何でダンジョンに見せしめが必要なのか?

「ダンジョン内が生死にかかわる程危険であると言う事、そして捜査霊課が危機に際して助けないことを示すのです」

征也はあっさり言う天司に、結局頭が本当に死体だったのかを確かめることも怖くて、そこを放置してしまった。



14時―

『捜査霊課より、14時をお知らせします』

ゴーン

1階は交代の時間となる。1階はお昼の時間も担当者がいたため安定して狩っていれば問題ない。

タワシ君3号を再び投入する。

タワシ君3号の進化する魔物が、段々強力になって行っているのは気のせいではないはずだ。今後の調整が必要だろう。



まだまだ小心者。

もっとどっしり構えていいんだよ、征也君。

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