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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二章:どうしよう、ダンジョンを作ることになってしまった…
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その、じゅうに  実は外敵がいました

「知りません。会ってません。見なかったことにします」by征也



「はあ……」

「どーしたの? キエート?」

窓の枠に手を突いて外を見回すキエートはなにやら憂鬱な溜息を吐いている。

「何でもありません! 津田様はきっとお守りしますから!」

「何? 何の話? 俺の話を俺抜きで進めるの、いいかげん止めれくれる?!」

どうやら征也の話なのに征也に話すつもりが全くないらしい。

「ダンジョンの作成を気に入らない存在がいる、ということですよ」

天司が補足説明してくれる。

「どーいうこと?」

「邪気を力の源にしている神、邪気で人を操って報酬を得ている者、それに似たようなことをして詐欺まがいのことをしている術者などですね」

「ふーん……。ダンジョンが出来ても邪気がちょっとだけ気脈から抜けるだけで、ほとんど変わらないんだけどね?」

「初めての試みですから過剰に反応するのは仕方ないかと」

天司の苦笑いとキエートの苦虫をかみつぶしたような表情に何と返していいものだろうか?




そんな話をしていた夕方、ちょっと外へと出たところで

バリバリバリッ

征也の背後で凄まじい音がした。

「え、な、なに?」

「征さんが攻撃されたんですよ」

一緒に出ていた天司が後方をするどい視線で見ている。

何? と視線を巡らすと20代半ばくらいの美青年が薄ら笑いで立っていた。恐ろしく端正な青年は

「うーん…………4500カラット、位かなー?」

邪気が凝り固まって付喪神化した存在のようだ。邪気だけでなく色々な気が混じって複雑な存在となっているらしい。恐らく中級クラスの神であるキエートに匹敵する力を持っているであろう。

昼間天司が言っていた邪気を力の源にしている神、というのはこの青年の事だと気付いた。

……めずらしく知る能力が機能している。

「征さん、そんな冷静な……」

のんびりした推定の声に天司が半眼になっている。

「おーい、お兄さーん! ダンジョンが気に入らなくって攻撃したのー?」

さらにのんびり声を掛けて見る。

「ああ」

「別に空気中の邪気は変わんないよー。気脈からちょっとだけ邪気が抜けるだけでー」

「どうしてわかる」

青年はわずかに眉をひそめた。

「だってダンジョンに来るのは霊能力者しかいないんだよ? 霊能力者って少ないでしょ? しかも魔物が強すぎると負けちゃうから、1体でそんなに浄化処理できないし。

どう頑張ってもちょっとしか減らないじゃない?

まあ、神様が出張ってくればまた別かもしれないけど、そうなったらダンジョン関係なくない?」

説明すると彼も同意してくれたのだが

「まあ、そうなんだが……」

渋い顔だ。

「で、何て呼んだらいいですか?」

とりあえず呼び名を聞いてみた。

「闇深彦、とでも呼んでおけ。

だが、ダンジョンの存在は認めない」

「駄目?」

「邪気は私の力となる。たとえわずかであっても減らすなど許さない」

「えーっとー。だったらダンジョンに入って邪気持っていく?

っていうか、闇深彦さんが大量に邪気吸収して処理しなかったせいで俺が処理させられているんじゃない? それって俺に文句言うんじゃなくって職務怠慢の自業自得だろ? 邪気しっかり吸収しろよ!」

「そんなことを言われるとは………」

「征さん! 闇深彦が邪気を吸収するとさらに邪気が膨れ上がるでしょ!」

言っていることが無茶苦茶で逆切れ気味の征也、何とも言えない顔の闇深彦、こめかみを抑えている天司、三者三様である。

「むぅ……。あれ、闇深彦さんはどうしてダンジョンの事を知っているの?」

「神の世界では有名だ。最初はすぐ頓挫すると思われていて私も放置していたのだがな。一昨日から一般術者にダンジョン公開の募集がかかっている。順調言進行していることが解るだろう。故に始末しようとしたのだ」

悪い奴なのだろうが、普通に答えてくれる。

「今日は番犬もいることだし、帰るか」

ふっと消えて行った。

「番犬…………? もしかして天司君の事?」

「他に誰がいるんですか」

「……かえろっか」

「はい」

後で買い物に出たはずなのにお店に着く前に引き返したことに気付いて、がっくり力を落としたことは内緒だ。




「えええええ! 津田様、闇深彦に会ったんですか!?」

会議室に待っていたキエートがわずかな残り香を感じ取って悲鳴を上げる。

「うん。普通に話せるお兄さんだったけど?」

「騙されないで下さい! あいつはとっても狡猾で口が上手いんです!」

「そーなんだ。…………そういえば、何で直接1人で会いに来たんだろう?

ほら、普通は誰かに斥候に行かせて情報収集するとか、護衛を引き連れて来るとかあるよね?」

大ボスが一人で会いに来るなんて、不用心じゃないか?

「さあ、それは分りませんけど。情報収集は普段のアルバイト以外はほとんど私と葉月様しか接触していませんから無駄だと思ったのかもしれませんし、葉月様が一緒なら足手まといになる部下は置いて来たのでは?」

「最初の1回しか攻撃されなかったし」

「葉月様の力は異常なため、最初の不意打ちで傷付けられなかったらそれ以上は無駄だと思ったのでしょう」

「うーん、俺って普通人だよね? 何でこんなことになってんだろ?」

「ですから! αを浴びて神様になった時点で普通人から卒業したんです! いいかげん意識を切り替えてくださいよ」

呆れたような諦めたような声のキエートとは毎回似たような会話を繰り返している。



―――



「闇深彦様、接触に成功いたしました」

電話をしているのは征也に自ら闇深彦と名乗った青年だった。

『して?』

電話の声が先を促す。

「現段階で彼が執着している者はありません。ほぼ感情の起伏がなく、あっても一過性で長続きすることない性格のようです。質を取ろうにも執着はなく、恐怖も漠然としていて動かすには難しいようです」

『他には』

「予想以上にこちらの事をなにも知りませんでした。闇深彦様の名を名乗った私に向かって、ダンジョンを作ることになったのは私の職務怠慢だから自業自得だ、邪気をしっかり吸収しろ、などと発言しておりましたので」

『……わかった。一度戻れ』

起伏のない平坦な声が体温を感じさせない冷たさを与える。

「かしこまりました」

電話を切り、彼は闇に溶けて消えた。








何事も新規事業は注目されるものです。

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