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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二章:どうしよう、ダンジョンを作ることになってしまった…
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その、きゅう  美人? ブス? それって主観の問題じゃ……?

ピンポーン

朝からチャイムの音がする。

『はい、どちら様でしょうか?』

「私、イワナガヒメとコノハナサクヤヒメの先触れの木霊こだまでございます。

津田様に御目通り願いたいのですが、御取次ぎいただけませんでしょうか?」

『ご丁寧にどうも、少々お待ち願います。すぐ参りますので』

春仁のその返事から3分もしないうちに扉が開いた。

ドアの前には大人の姿だけど小学校入学位の背丈の人がいる。

木霊って子どもなのか? 大人なのか? 

ついでに性別不詳、男なの? 女なの?

「おはようございます、津田です。木霊さんでいらっしゃいますか?」

「ああ、私のようなものに敬語は必要ありません。先ほど従神の方へお話いたしましたが先触れですので、比売様方がこちらへ参りたいと申しております。

御目通り願えますでしょうか?」

ちゃんと覚えているよ。神話の中でもちゃんと記憶している。山神様の娘で長寿の神様と繁栄の神様の姉妹だよね。

夫がアレだったけど。

「ああ、敬語はなしで話しますね。いつ来るつもりで用意しているの?」

「可能ならば今すぐにでも!」

「そ、そう? 家は狭いから、会議室でいいですか?」

今すぐとか、気が早すぎだよ。

「そ、それは捜査霊課の、という事でしょうか?」

何だか顔色が悪い。それに酷く怯えている?

「そうだけど……?」

『主様、もしや捜査霊課が神々の裁定や仲裁をしていることで怖がられているのではないかと……』

怯えの原因をシャツになっている銀が補足してくれる。

「あれ、大丈夫? 大丈夫だよ、何も悪いことしてないから! 会議室の方が話聞かれないからファミレスとか喫茶店よりましかと思っただけで! そっちがいいならお店でも構わないよ!」

「は、はい。では、会議室以外の場所でお願いいたします」

『話を聞かれたくないならカラオケでも良かったのでは? ものすごく怯えていますよ』

ごめんなさい、反省しています。こんなに怯えられるなんて思わなかったんだ。

「ちょっと歩くけど、カラオケはどう? 個室だから話は聞かれないと思うよ?」

「はい、ありがとうございます」

木霊を連れてアパートの階段を下りる。天司にはテレパシーで連絡を入れておく。

「一応訊くけど、姫神様方の御用件はなんだかわかるかな?」

「はい、津田様が最近、ダンジョンなるものを開発なさったとか。そのお話をお聞きしたいそうです」

「ああ、その話。かなり広まっているの?」

「ええ、神々の中には興味を持つ者も多くいると聞いております。何しろこの邪気の増え方はここ千年でも異常です。特に富士樹海を管轄範囲とする御二方には大変頭の痛い問題なのです」

単位が千年ときましたか。さらに富士樹海。それって自殺の名所と有名な所だよね? 最近有名になりすぎて対策されたらしいけど、今までの邪気、絶対溜まっているはずだよ…………そんなことを考えながら征也はカラオケ前に立っている天司に手を上げる。

 相手に気付き、木霊は青ざめた。

「大丈夫だよ、彼は葉月天司君。ダンジョンの説明の捕捉をしてくれるってさ。この計画の実行者は俺以外に天司君とキエートがいるんだ」

「は、はひ!」

完全に怯えて声が裏返っている。可愛そうだったかもしれないが、自分一人で全般的な解説が不可能な以上は話し合いの場に同席を求めるしかない。

ごめんよ、頼りがいが無くって。

「天司君、こちら木霊……さん?」

「津田さん、木霊は木霊でいいんですよ。彼らに性別ないんですから」

そうなんだ。

「わかった。で、イワナガヒメ様とコノハナサクヤヒメ様が管轄の富士樹海の邪気をどうにかしたいと、ダンジョンについて説明を聞きたい、らしい。だよね?」

「はい! そうでしゅ!」

あ、噛んだ。

「すいません、3人……じゃなかった5人でおねがいします」

「はい、ここに名前と電話番号をお願いします。あ、機種は何がいいですか?」

「ええっと、…………でおねがいします」

「かしこまりました。…………………………3階307号室ですね」

受付表を渡されてエレベーターを上がる。

307号に着いて、すぐに木霊が反応した。

「イワヒメ様! サクヤヒメ様!」

木霊は半泣きで感動の再会のようだった(実際の所、単に捜査霊課が怖かっただけだったのだが)。

 木霊の向かった先を見た時、思った。

(凄い美人と凄い可愛い子……あれ? どっちか『ブスだから』って理由で実家に送り返されてなかったっけ?)

木霊が抱き着いていたのは、怜悧な潔癖系美女と優しげで可愛らしい美少女だった。

「あれ、もしかして、価値観の問題か?」

「何がですか? ああ、もしかしてニニギ命の神話ですか?」

「そう、あれって絶対美人だよね? 現代と当時だと大分差があるのかな?」

確か平安美人は下膨れで糸目の女性が美人だったはず。現代とは大分美人の基準が違うのだろう。

「違いますよ。単にイワナガヒメの美貌が怒ったら怖そうだったからだそうです。

ちなみにニニギ命は、コノハナサクヤヒメとも嫡出を認めないなど揉め事を起しているので、ヘタレで定評があります」

「嫌な定評だね」

「まあ、それはさておき、今は姫神様方の立ち位置ですかね」

あっさり話題を変えてきた。

「立ち位置? 何か問題? といっても、今から富士樹海に気脈の設定変えるのは無理だよ?」

「「何ですって!!」」

確かに怖い。美人の怒った顔。

「お、落ち着いてください」

あっという間に天司の後ろに隠れた。あれ、俺もヘタレ属性か? と少々落ち込みながら。

「そうですよ。まだ、ダンジョンシステムは稼働しておりません。

近くの気脈から少しずつ邪気を入れながら調節をしていくことになっていますので、大きな気脈から大量の邪気を取り出すことはできません。

少しずつでも邪気が気脈から抜ければそれだけ全体量が減って、気が楽になるかもしれませんが。

 それに、今の所は試運転のみで捜査霊課で対応していますが、今後規模を拡大していく場合には魔物を倒すための術者が足りなくなってくると考えられます。魔物を倒すことで採取した霊珠は持ち帰り自由にしようかと思っておりますので、その方面でお知り合いの術者がいらっしゃるならご連絡お願いいたします」

さすが天司君。澱みなく説明してくれる。

「そうか、そう言う問題もあったのね」

「確かに少しずつでも浄化して貰えれば全体量は減るけれど……」

思案顔のイワナガヒメと不満顔のコノハナサクヤヒメ。

「いいわ、知り合いの術者を紹介しましょう。但し、その術者の採取した霊珠の一部はこちらに渡してもらうわ」

「それは術者と交渉なさってください。その術者についてこちらで把握している訳でもありませんから」

「それもそうね。貴方達には極力裁定を任せたくはないし」

なんだか、険悪な空気がそこはかとなく漂っている気がする。さっきも木霊が異常に怯えていたし。

「木霊ちゃん、木霊ちゃん」

こっそり征也は木霊を呼び寄せた。

「なんか、険悪な感じだけど、何か裁定されて嫌なことでもあったの? 俺は最近入ったばっかりだから何も知らされていないんだ」

木霊はビクビク震えながら首をガクガクと縦に振った。

「最近サクヤヒメ様が離婚をようやく許可されたのですが、慰謝料の件で話し合いがもたれた時に思ったよりもニニギ様の諦めが悪くて……。こういうのは金額よりも気持ちの問題なのですが、条件は揃っているので捜査霊課としても微妙なストーカーなのに注意して下さらなかったんですよ。だから優しい姉君のイワヒメ様は御怒りなのです。

 妹君のサクヤヒメ様は姉君の所へ帰れると、ニニギ様の対応など気にも留めておいでではなかったのですけどね………………どちらかというとサクヤヒメ様のストーカー度の方が………………」

木霊は何を思い出したのか遠い目をしていた。

「姉妹の仲良いんだね」

「ええ、とっても……とっても……。そう、サクヤヒメ様は特に…………フフフフフ…………」

木霊は遠い目から段々虚ろな目になってきた。何があったんだ、木霊ちゃんや。いや、聞きたくない。可愛い美少女が美人の姉をストーカーしてるとか、聞きたくないから。

「うん、そろそろあっちを止めようか」

現実に引き戻すためにイワナガヒメと天司の方を向かせる。

「天司君、試運転にイワナガヒメ様の知り合いの術者さんを呼べばいいの?」

「ええ」

「術者さんは木霊ちゃんが連絡を取り持ってくれるの?」

「はい、姫神様方にも連絡が行くようにします」

「それって、携帯電話?」

「は、はい! 最近使いこなせるようになりました! 木霊連絡網の携帯電話!」

大丈夫なのか? それって……。

本日のカラオケ料金、3時間パック5人分は天司が経費で落とした。




岩の女神様。

神話で言われている程、ブスではなかったのだ。

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