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終の回

空を闇が支配したところで住宅団地の端に到着。

街路灯には明かりが灯り、集合住宅からは人工的な白い輝きが闇を打ち消している。

住宅団地の端には小さな公園。

公園は街路灯も無く、木とジャングルジムとベンチだけの設定。

配置は中心にジャングルジム、囲む様に木々。

敷き詰められた落ち葉の中に、ぽつんと色の剥げたジャングルジムが居る画は、寂しい以上に悲しさを感じさせる。

彼はベンチに腰掛ける。

見つからなかったな。色。

「ええ」

けどまぁ。なんだ。楽しかったからいいかな。

「ええ」

ん?お前も楽しかったのか?

「それよりジャングルジム」

明らかに話を逸らした風だな。下手過ぎるだろ逸らすの。

「黙れ。あれって不思議な遊具」

そうか?

「遊び方が微妙。登って如何すればいい?」

如何って。

「やはり一番上に乗って相手を落とした方が勝ちのようなゲームをするべき?」

しないべき。怪我するから。それこそアクロバティック骨折するかもしれないから。

「ロマンティック骨折かも」

何その骨折で愛が芽生える風なの。

「貴方の骨は私が折る!」

嬉しくない!つーかお前が折るのか。ジャングルジム関係ないな。

「私の愛から逃げられない様に折り曲げてジャングルジムに閉じ込める」

怖!

「ジャングルジムは危険」

ジャングルジムというより、ロマンティック骨折がな。

何よりも危険なロマンティック骨折。

それはそうと。

「では」

何だ?

「てっぺんに登ってゆっくりする」

それは……凄く普通だな。

「登ってみましょう」

いやいや。それなんか嫌だな。

彼は暗い公園でジャングルジムに登る画を想像する。

高みから見下ろす世界。

征服感と達成感。

明らかに不審者だった。

「何故?」

夜のジャングルジムに大人が一人上ってたら引くだろ。つーか怖い。

「大丈夫。誰も来ない。それにこれだけ木に囲まれているのだから、通行人がいたとしても見えない」

それはそうだろうけど。でもな。

「登りたくても登れない」

うーん。

彼はジャングルジムの頂上を見る。

そんなに登りたいのか?

「貴方の目から入った情報しかない。それだけしかない」

そっか。

彼はベンチから立ち上がる。

ジャングルジムに手を掛け、登る。

予想通りの不審者確定。

いやいや。思った以上に高いなこれ。

「落ちないように」

心配してくれた。

「面白いから」

ふりか。落ちないからな、絶対。

「ロマンティック骨折には気を付けて」

それ事故じゃないからな。

登頂終了。

彼は頂上で腰を下ろす。

地上から約二.五メートルの高さ。

この程度の高さでも、大きく世界が変わった様に感じる。

見慣れた団地も、見慣れが木々も、見慣れた夜空も。

彼は空を仰ぐ。

「汚いな」

彼は赤く濁った夜空に向かって呟いた。

ん?あれ?赤い。

赤い夜空。

普段通りで何時も通りな通常運転。

木々は緑と少々の紅葉。

その隙間からきらきらと覗く住宅団地の色とりどりの光。

工業団地は灰色の煙を吐き出し夜空を赤く染める。

産業道路は絶え間なく色彩を運ぶ。

「確かに汚いけれど」

声だけの存在は一度言葉を区切る。

空は赤色の雲がうごめいている。

「なかなか素敵」

うごめく雲の隙間から薄らと月が覗く。

そうか?

「ええ。色があるとこんなに違うのね」

ん?もしかしてお前も黒と白しか見えてなかったのか?

「あなたの視界が全てだから当たり前でしょう」

あぁなるほど。気付かなかった。つーか、待てよ。

「何?」

記憶が無いんだよな。

「ええ」

色って覚えてたか?

「いいえ」

お前の所為か。

「多分」

多分!全部多分だな。まぁいいか。楽しかったから。

「うん」

素直な返事に彼は驚きの表情を浮かべる。

口元は直ぐに笑いへと変わる。

もう一度見上げた夜空は、変わらず赤く濁っている。

変わらない夜空、変わらない時間、変わらない世界。

少しだけ変わった彼の休日。

変わり始めた日常。

これはただのはじまりの物語。

彼と声の不思議の物語。



まておい。

「何?」

結局何なんだ。お前。

「さあ。全てに答えがある訳ではないでしょう」




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