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一回目

声とはじまり



平日の夜。

工業団地は煙を吐出し月明かりを遮り、夜空を赤く染めている。

産業道路は休みを知らず大型自動車が行き交い、静寂をゆるさない。

高層集合住宅の立ち並ぶ住宅団地は、迎えた夜をあざ笑うように光に満ちている。

工業団地と住宅団地を隔てる様に設けられた産業道路沿いに並ぶ緑地帯。

男は帰路を急ぐ訳でもなく、ゆっくりと歩いていた。

木々の隙間から工業団地と住宅団地の明かりが差し込む。

見上げた空の赤さに思う事は何もない。

普段通りであり、通常運転。

変わらない日常。

変わらない夜空。

ふと気付く。

強く輝く星がひとしずく。

飛行機か?やっぱり星?まぁなんにせよ。

「綺麗だな」

呟いた言葉は赤い夜空へと消える。

彼はまた歩き出す。

いつも通り。

週末の夜を歩く。



休日。

休日のおやつの時間。

立ち並ぶ高層集合住宅の隙間の公園に一人の男が立っている。

彼の側には家の形状をした遊具が発色よく佇んでいる。

真っ赤な屋根、黄色い骨組み、青い滑り台。

木々は明るい緑色と所々には少し早目の紅葉が見られる。

しかしながら、色とりどりの世界は彼にとって違う世界に映る。

目に映る景色は黒と白の世界。

モノクロの世界。

全部白黒だな。ほんと。

「ええ」

彼の考えを読む様に、頭の中で声がする。

彼の頭の中には何かが存在している。

酸素とか炭素とか水素とか窒素とか、人間を構成するそれとはまた別の何か。

現在不可思議現象の真っ只中。

何だかな。まったく。

「何かしらね」

困ったもんだ。

「ええ本当に」

彼は「はぁ」と溜息を付く。

悩んでてもしょうがない。とりあえず歩いてみるか。

彼は頭に不可解を抱え、とりあえずの一歩を踏み出す。

色を探しに。



見慣れた風景を、ただただ歩いてる。

当てがない為、ただただ何となく進むと言う迷走状態。

比較的大規模な住宅団地のこの場所は、色を探すとしては有効的ではない。

単調で、単色。

色が圧倒的に少ない。

同じ様な建物に、同じ様な道。

そのくせ妙に入り組み、まるで迷宮に迷い込んだ様な感覚にさせる。

「遭難する事もあるから気を付けるべき」

しないから遭難。何だ団地で遭難って。ハイレベル過ぎる。

「何処なら遭難するというの?」

それは山とかそういった。

「いえ。ここらへんだと」

しない。まずここら辺では遭難しない。

湾に面したこの土地で起こるとしたら、それは海での遭難事故となる。

現在は住宅団地を歩く彼にはその可能性は無い。

海までの直線距離は一キロ弱。

仮に迷ったとしても工業団地を通るか、若しくはマリーナを抜ける。

迷走中だとしても海に迷い込む事は無い。

「それは海の遭難と山の遭難にはあわないだけでしょう?団地の遭難にあう可能性は大いにある」

それは大いにあるな。でもその団地の遭難って何だ。

「色々あると思うのだけれど。例えば貴方、普段ベンチで寝てるでしょう?」

寝てないな。

「いくらなんでも寒いと思う」

だから、寝てないから。

現在の四季は秋の入り口。

夏は暑く、冬は寒い程度の在り来たりで当たり前の四季を楽しめる住みやすい地域。

それでもベンチで寝るには寒い。

「記憶違い?」

改ざんレベルでな!

「記憶が無いから仕方が無い」

今朝の記憶ぐらい覚えておけ。垂れ流しにも程がある。


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