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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第5章何無荒野編~三地区編【壱】
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第5章第85話【聖光】救出戦その三 VS【聖光】


 白夜達がひかりに会う少し前、国立科学研究所の所長室では。


 「私に用とは何でしょう? 柵、それに後ろには……さんらも? 」


 国立科学研究所の所長、高屋は研究員の柵から用があると言われ、柵を所長室に招き入れたのである。


 「用とはですね。へへ、あなたから所長の座を奪いにきたんですよ。さぁ、高屋を殺せ」


 「はい」


 「すぐに」


 柵は(いら)ついていた。この所長室へ案内したのが愛しの【聖光(ホーリー)】だったから。しかし、扉が閉まり、油断しきっている高屋の様子を見て、柵は人生最大の喜びを感じた。


 「貴様らの企みなど全て把握している。私をひょろとしたもやしだと思っているのならば大間違いだ」


 「がっ」


 「あっ」


 「何?」


 柵の抱いた有頂天な気持ちはすぐに冷める。高屋は来ていた白衣を脱ぎ捨て、次の瞬間、体が一回り大きくなる。何と、筋肉を盛り上げたのだ。そのせいで中に着ていたワイシャツはパツパツになる。直後に襲ってきた子飼いの研究員三人を瞬く間に無力化した。その光景に柵は立ち尽くしてしまう。


 「どうしましたか? 怖くて動けないのですか? ふぅー、全くクーデターを起こすならもっと強くなければいけませんよ」


 高屋は元の大人しい口調に戻し、柵を嘲笑(あざわら)う。これには柵も無理矢理動かざるおえない。例え、高屋が柵よりも圧倒的に強くてもだ。そうしなければ自分のプライドが許さない。


 「高屋ぁぁぁぁ」


 柵は高屋に持っていたナイフを取りだし、向かっていった。






 「ふぅ~、こんなものか、対したことない」


 高屋は足元に倒れ伏す柵の様子を退屈そうな顔で(つぶや)いた。しかし、柵はどこかの悪の秘密結社と手を組んでいる。柵とその子飼いの研究員三人で本当にここを制圧できると思っていたのか? そんなはずがない。必ず、その秘密結社から人員が送られてくるはずだ。この研究所には国の秘蔵の研究データがたくさんある。そう思うと、まだ戦いは始まったばかりだと高屋は心を引き締めるのだった。


 「おーい、電くん。こちらは終わった。そちらはどうだい?」


 高屋はここの副所長である人物に持っていたインカムをつけて、話しかける。


 「おーい。聞こえるか? 聞こえるー」


 しかし、副所長から応答はない。嫌な感じがする高屋はそう思った。副所長はモニター室で侵入者をチェックするよう頼んである。他の研究員は有給、謹慎、病欠という名目で自宅に帰してある。貴重な人材だ。柵程度の男に殺されでもしたら大変である。


 そのため、実質この研究所にいるのは所長と副所長の二人だけである。そして、その副所長と連絡がつかない。高屋は白衣を着直して、様子を見るために外へ出た。すると、ひかりに話しかける者達が居たのだった。






 「近衛さん。部外者にお引き取りを」


 「承知しました」


 高屋は白夜達に驚いた。ただ、【聖光(ホーリー)】の情報から柵達とは別口だろうと推測した。そして、なぜここに来たのかを考える。ある程度、推測がついたところで近衛に指示を出す。


 「聖なる光は闇を払う。ここに光が無いならば、私がひかりとなって追い払わん」


 ひかりは一瞬の内に光に包まれる。そして、光が止み、そこに居たのは白のフルフェイスに全体的に白と金色で構成された戦闘スーツを身に(まと)った姿になる。ひかりの姿、それは(ちまた)では【聖光(ホーリー)】と呼ばれる。白夜達二人に会ったときは変身デバイスを壊されていたので、二人は実物を見たことはない。


 「ひか(ねぇ)


 「ひかりお姉ちゃん」


 「……では参る」


  白夜と風華、両者の声にも反応しない。二人が混乱しつつ中、戦闘が始まった。


 「頼む、ひか(ねぇ)正気に戻ってくれ」


 『聖雨(ホーリーレイン)


 「師匠、危ない」


 「くっ……」


 白夜はもう一度声をかけるが、応答は無情にも光の雨という攻撃だった。この光の雨は先端が鋭く光っており、まともに食らえばひとたまりもない。白夜は真横に移動し続けて、この光の雨を防ぐ。


 「何か、正気に戻させる方法は……」


 「おい、もたもたしてっとこっちが死んじまうぞ」


 「でも……」


 「でもじゃねぇ。いつものあんたらしくないぞ。白夜も含めてな」


 理佐は精彩の欠いている二人を叱責(しっせき)する。そして単独で【聖光(ホーリー)】の前へ立つ。


 「手加減できるような奴じゃねぇ。全力で行かせてもらうぞ。『刈衣(かりぎぬ)』」


 『聖域(ホーリーガード)


 理佐の大鎌はひかりの出した光の障壁によって防がれる。しかし、ここで引くのはまずいと理佐は大鎌を振り続ける。


 「もう間合いは見切った。『瞬光(しゅんこう)』『暴聖馬(ユニコーン)』」


 「間合いに……がっあ」


 ひかりは一瞬にして、理佐の懐に移動。そして、高速で拳や蹴りを繰り出した。懐まで来られるとさすがに大鎌は振れない。従って、理佐はまともに食らうことになる。攻撃を受け、後ろに吹き飛ぶ理佐。


 「ハハ、どうです。知り合いを相手にするのは」


高屋は右手をおでこに当て、高笑いする。後ろでずっと傍観しているこの男にとってはひどくご満悦のようだ。


 「理佐~」


 「このままでは理佐さんが壁に」


 吹き飛ばされる理佐の先には壁がある。このまま壁に激突するかに思えたが、横から現れた影、それは白夜だった。白夜は吹き飛ばされてきた理佐を受け止める。


 「ひか(ねぇ)、覚えていないなら今から思い出させてやる」


 白夜の顔はさっきまでの精彩を欠いていたときと違っていた。何を決意したようなキリッとした顔だ。


 「未来、理佐、琴美、お前らはひか(ねぇ)の後ろにある白衣の男を相手にしろ。ひか(ねぇ)、いや、【聖光(ホーリー)】は俺と風華で相手する」


 「ほほぅ、私を見くびっているご様子。ならば、その勘違いを正してくれよう」


 理佐を下ろした白夜は全員に指示を出す。後ろの高屋は自分を楽を見くびってと見て、白衣を脱ぎ捨てた。そして、体を一回り大きくさせた。


 「へっ、少しは戦えるようだな」


 「理佐、援護は任せてね」


 「琴美はいつも優しいな」


 「理佐先輩、琴美。私が先陣を切ります」


 未来、理佐、琴美は高屋の前に集まった。高屋も準備体操とばかりに身体の関節を鳴らす。そして未来が駆け抜けるのと同時に戦闘が始まる。







 「風華、懐かしいな。この三人が(そろ)うのも」


 「そうね。久々に楽しくなりそう」


 「さっきから、知った顔で話しているが、私は貴様らを知らない。私は国立科学研究所で働く秘書の近衛ひかりだぁぁぁ」


 今まで反応すらしなかったひかりは初めて白夜達に反応する。ずっと我慢してきた怒りを(あらわ)にして。


 「くっ、ちょこまかと」


 怒りのまま突撃してきたひかりを二人は上手くかわしていく。自分が翻弄されていく姿にひかりはどんどん苛立(いらだ)ちを積もらせていく。


 「昔、三人で鬼ごっこしたよな。ひか(ねぇ)が鬼で。でもすぐに捕まって鬼をやらされたな」


 「そうそう。あんときの白夜はダメダメだったからね。楽しくて日が落ちるまでやったよね」


 こうして間にもひかりは必死に二人に攻撃を当てようとする。鬼ごっこ、捕まる、日が落ちるまで、訳の分からない出来事にひかりは戸惑う。しかも、それを深く考えると、頭の中に突然、ある憧憬(どうけい)が映るのだ。白い髪の十歳くらいの男女二人と自分が仲良く遊んでいる姿だ。


 「違う。違う。これは」


 ひかりは全力で否定する。この憧憬(どうけい)を見させるようになった元凶である二人を早くなんとかしようと、さらに攻撃を加える。しかし、体が思うように動かない。まるで体が自動的にセーブしているかのように。


 「白夜、この世界に夜でも明るい国があるって言ったのもひか(ねぇ)だった」


 「あと三人で写真も撮ったよね。あのときは本当に楽しかった」


 白夜、名前、写真、二人から飛び出す単語にひかりの頭はどんどんそれらの記憶を思い出す。その度にひかりは苦しむ。そして、とうとうひかりの足は止まる。


 「一体、私の記憶は何だ。私は一体?」


 目の前に居る二人が憧憬(どうけい)に出てきた少年少女が成長した姿にしか見えない。これは(うそ)だ。頭で否定すればするほど胸が苦しくなる。身体が動かなくなる。


 なぜだ! 私は! いったい!


 いつの間にか【聖光(ホーリー)】は変身を解いていた。白夜と風華はひかりにそっと近づいていく。


 「見てくれ、ひか(ねぇ)


 「あと、これも」


 そう言ってひかりに渡したもの、それは三人が映った写真とずっと大切に保管していた壊れた変身デバイスだ。


 「……なんで、涙が」


 これを見た瞬間、ひかりの目から涙がこぼれた。ひかりが手で涙を拭くが、拭いても拭いても涙は止まらない。そして、ひかりは全てを思い出した。あの日、あのとき、何があったのか、そして自分がどうなったかを。


 「大きくなったな白夜、風華」


 目の前にいる義弟、義妹の姿は心身共に(たくま)しく見える。ひかりはそっと白夜と風華を抱きしめた。






 「どうやら、私の負けですね」


 「はっ、何いってるんだこいつは」


 未来、理佐、琴美の三人相手に善戦していた国立科学研究所所長の高屋は突如、負けを宣言した。あまりにも唐突なため、劣勢でいた理佐は思わず口に出した。


 「なら、後ろを見てください。そんなに(にら)まなくても、後ろから襲ったりはしませんよ」


 高屋に言われて、はい、そうですかと振り向くほど馬鹿ではない。しかし、なぜこうもあっさり降参したのか気になる。罠と思いつつも後ろを振り返る。すると、そこに居たのは泣いているひかりと風華の姿としんみりとする白夜の姿だった。







 次回予告


 ひかりを正気に戻した白夜達。降参した高屋をとっちめようとした矢先、所長室から(うな)り声が上がる。所長室に入るとそこに居たのは化け物と化した柵の姿だった。 次回 第86話【聖光】救出戦その四 食人鬼(グール)



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