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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第5章何無荒野編~三地区編【壱】
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第5章第84話【聖光】救出戦その二 研究所の罠


 「ここが国立科学研究所か」


 白夜達はロボットの襲撃を避け、ついに国立科学研究所の前までやって来た。


 「でも敵がそうそう開けてくれるわけ……えっ」


 国立科学研究所側からしてみれば白夜達は招かれざる客。目の前にある強固な扉が閉まっており、そう簡単に空くはずはないのだが、なぜか白夜が押しただけで扉が動く。あまりにもあっけなく開いたので風華は思わず、口をポカーンとして唖然とする。


 「みんな気をつけろ。罠だ」


 さすがに簡単に事がとんとんと行き過ぎている。白夜はロボットの襲撃で既に自分達の存在がバレている。そうなると、この扉を開かせたのは油断をさせるため。白夜は全員に注意を呼びかけ、まず自分が研究所の中へ入る。


 「前にはエレベーターか。それ以外には特になしか」


 白夜が入ると、中は突き抜けの大広間になっている。目の前の通路を通った先にエレベーターがあり、それ以外の物はない。上を見渡しても、部屋らしきものはなく、研究所の全ての施設は地下にあるようだ。


 「うわぁー思ってたの違う」


 あとから来た未来も中の部屋を見て(つぶや)く。風華、理佐、琴美も研究所の中に入ってきた。


 「あのエレベーターは罠よね」


 「明らかにな」


 「じゃあ、どうやって行くんですか師匠。」


 「罠でもエレベーターに乗った方がいいんじゃねぇか? なぁ、琴美もそう思うよな」


 「えっ、ちょっと私に聞かないでよ。こ、こういうのはお母さんがどこかに隠し階段があるって前に言ってたよ」


 「隠し階段か。どこかにありそうだな」


 白夜達はエレベーターの前で話し出す。琴美の発言から白夜達はこの部屋にあると思われる隠し階段を探すことにした。さすがにエレベーターには乗らない。途中で止められ、毒ガスでも入れられたら一網打尽にされてしまう。白夜の判断は功を奏した。もし研究所の部外者だけでエレベーターで移動した場合、自動的に防衛ロボット達のいるフロアに移動させられ、そこでエレベーターは動かなくなる設定がなされていた。


 「ありました」


 隠し階段はすぐに見つかった。エレベーターのある壁のちょうど真後ろに隠し階段を出させるスイッチがあった。白夜達はそのスイッチを押す。すると、突如床が動き出し、下へ降りる階段が現れた。


 「よし、慎重に降りるぞ」


 白夜が先頭になって階段を降りる。今のところは特に罠らしきものはない。しかし、白夜達の第六感が危険だと警告する。第六感に従って、最大限の警戒を行う。


 「どうやら、一度に下までは降りられないようだ」


 「完全に侵入者が入ることを想定した作りになっているのね」


 このまま一番下のフロアまで行きたい一同であったが、階段は地下5階で終わっている。前にある看板には地下10階、所長室に行きたい方はこのフロアにある階段を使ってくださいと書いてある。これは一見するとここで働く研究員向けにも思えるが、研究員はエレベーターしか使わないので、完全に侵入者に向けて書かれている。丁寧に書かれているので余計、挑発しているように思えた。


 「扉を開けても不意討ちはなしか」


 白夜は皆を下がらせ、地下5階の扉を恐る恐る開ける。罠に備えてだ。特に何もないようなので白夜は部屋の中に一歩踏み出した。


 「っ!」


 白夜は嫌な気配を感じて、後ろに体を動かす。その直後、白夜が一歩踏み出した場所に重い鉄板が落ちてきたのだ。


 「師匠、大丈夫ですか?」


 「大丈夫だ」


 「開けて罠がないと安心ところにこれ。相当、ひねくれているわ。これを作った人は」


 上げて落とす。国立科学研究所の防衛を任された設計者は初代所長にこう答えたという。なお、この研究所に侵入者が入ったことは一度もなく、最初の侵入者が白夜達であることはもちろん彼らにとって知るよしもない。






 「はぁ、はぁ、精神に来るな」


 「ちっ、作った奴が顔をニヤニヤしてるのを思うと、イライラするぜ」


 白夜達は地下5階が歩いていく。白夜達は既に半分を越えている。ここであった罠は定番の落とし穴。落とし穴の中には大量の剣山。琴美が危うく落ちそうになったが、理佐が決しの行動で難を逃れる。他にも、壁に仕掛けられた高圧電流、人を簡単に潰すプレス、しまいにはいきなり天井がゆっくり迫ってくるという罠。白夜達はそれらを乗り越えていてここまで来た。


 「次は……これまた趣味の悪い」


 進む道には一本の細い平均台のようなもの。下は泥水で底が見えない沼。ここに何が居るのか分からない。考えられるのはワニだが、ここは研究所だ。やばい生物を人工的に作って放置してあるとも考えられる。白夜達は慎重に渡ることにした。


 「下は出来るだけ見るな」


 「師匠、見るなと言われると余計見てしまいます」


 「琴美、落ちても絶対俺が助けてやるからな」


 「私のことより自分のこと心配してよ」


 先頭はもちろん白夜、順に、未来、理佐、琴美、風華。風華が後ろにいるのは、背後から狙われないようにするためだ。


 「うっ、気をつけろ。風だ」


 「うわぁ、泥水の中にワニが居る」


 ちょうど全員が半分くらいに来たところで横から風が吹いてくる。さらに案の定、泥水には多数のワニが生息しているようだ。たまたま一匹を見た未来は早足で移動する。


 「やっと着いた。少し休憩する……なっ」


 風にあおられながらも五人はなんとか向こう岸まで辿(たど)り着く。一息、休憩を入れようとした直後、床が傾き出した。


 「うわぁぁ」


 「下にワニが」


 傾いた下には大量のワニが待ち構えている。白夜は即座に指示を出す。


 「風華、自分で上まで行けるか?」


 「私は行ける」


 「じゃあ、理佐。琴美を連れて上まで上がれ」


 「言われなくても分かってる」


 「未来、俺の手を掴め」


 「はい」


 床の傾きはどんどん増していく。この分だと九十度までいくだろう。早く脱出しなければならない。一番始めに抜けたのは風華、直後に琴美を引っ張って上がってくる理佐を引き上げる。最後に未来を引っ張って白夜が上がる。その直後、床の傾きが九十度に達した。一同は休憩したかったが、ここも安全地帯とは限られないので、疲れつつも先に進むことにした。


 「目の前に階段か」


 白夜達の目の前には下に降りる階段がある。ただ、こんな見え見えの階段、怪しく見えないわけがない。


 「師匠、また隠し階段があるかも」


 「探してみるか」


 一同は隠し階段を探す。前回同様、近くに巧妙に隠されていたスイッチを見つけ出し、押す。すると、壁の一部が開く。中には階段がある。


 「じゃあ、早速……」


 「ちょっと待て未来」


 隠し階段に行こうとした未来を白夜が止める。白夜はどうにもこの状況に違和感を覚えている。


 「もしかしたら、この階段の方が罠かもしれない」


 「えっ」


 「その可能性はあるわ」


 さっきまで仕掛けれていた罠は精根悪いものだった。なのにここは只の隠し階段だけ。もし自分が作るのならば、見え見えの方が正解で隠している方がダミーかもしれない。白夜は全員を説得し、見え見えの階段の方に進む。


 「どうやら正解だったみたい」


 風華が地下10階に辿(たど)り着いた地点でそう(つぶや)く。白夜の推測は正しかった。もし隠し階段に下りた場合、九階しか行けないようになっている。もちろん、全員入った瞬間、扉が閉まり、出られなくなる。九階には防衛ロボットが待機している。エレベーターの時と同じだ。


 「また罠が仕掛けられてないか確かめる」


 白夜が地下10階の扉を開ける。一歩踏み出してみるが、何も起きない。どうやら地下10階には性悪な罠は仕掛けられていなようだ。一行は警戒しながらも前に進む。いくつかの通路を通ったあと、とうとう目の前に所長室が見えてくる。そしてその所長室の前に誰か立っている。


 「えっ、(うそ)。ひかりお姉ちゃん。何で……」


 立っていた人物に風華は驚く。そう立っていたのは十四年前に行方不明になり、死んだと思われていた近衛ひかりだ。十四年前の姿と全く変わっていないものの、風華は実物を見て、その人物が近衛ひかり本人だと確信した。


 「おーい、ひか(ねぇ)。俺だ。白夜だ」


 白夜も喜びのあまり声をかけるが、ひかりから応答はない。さすがそんな様子に一同は違和感を覚える。近づいて声をかけようとした瞬間、目の前の扉が開いた。


 「お客さんですか? いや、その髪の色、人相。フフ、ようこそ国立科学研究所へ。私が所長の高屋です。あなたの目的は何ですか? いえ、言わなくて結構です。あなた達の大切なものを取り返しに来たのしょう? 」


 そこから現れた人物。それはここ、国立科学研究所所長の高屋だった。そして高屋は白夜達に対して不敵な笑みを浮かべていた。






 

 次回予告


 とうとうひかりに会えた白夜達。しかし、そのひかりは高屋によって操られていた。なし崩し的にひかりと戦うことになった一同。【聖光】としての強さを発揮するひかり。白夜達はひかりに勝てるのか、そしてひかりを正気に戻せるのか。 次回 第85話【聖光】救出戦その三 VS【聖光】


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