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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第5章何無荒野編~三地区編【壱】
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第5章第77話白夜対ナイトレッド前編 復讐の拳

前回の投稿から4ヶ月も過ぎてしまった。その間に年が明けてた……。今年もどうぞよろしくお願いします。


 何無荒野(なんぶこうや)、サイカイ地区の南東にあり、白夜達【美学道】の拠点がある場所。【美学道】の拠点よりやや北に進んだところ。そこで二人の男が対峙(たいじ)していた。


 「お前が鬼堂白夜だな」


 「ああ、そうだ」


 一人は【美学道】の首領(ボス)である鬼堂白夜。昨日まで髪を黒く染めていたが、今は真っ白である。人によっては別人に見えるだろう。もう一人は赤と白のコスチュームを着た男。サイカイ地区の住民から見ればこの男の名をこう呼ぶだろう。“四代目ナイトレッド”と。


 「ぶち殺す。『土片(つちへん)』」


 『二類疾風拳』


 ナイトレッドは目の前にいる男が白夜だと分かると、有無も言わさずに拳を振り上げて向かっていく。対する白夜も得意の風を(まと)った拳で迎え撃つ。


 「お前だけは許さねぇ」


 「絶対にここは通さない」


 両者の拳がぶつかる。白夜とナイトレッドの闘いが始まる瞬間だった。






 数刻前、白夜達の家の前。


 「俺はこれからけじめをつけてくるつもりだ。未来はどうする予定だ?」


 「……えっーと、とりあえず朝の修練を行い、その後は……」


 白夜はこれから横沢科学室やテレイ地区営第一学校に行き、ありのままの事実を伝える予定だ。琴美の母である莉佳はともかく、横沢科学室には行けなくなるはずだ。協力していた男が悪の組織の首領(ボス)と知ったら。最悪サイカイ地区で指名手配されることも白夜は覚悟していた。


 白夜と対称的に未来には特別行くところがあるわけではなかった。故に、言葉に詰まってしまった。


 「まあ、普段通りの……」


 白夜は未来をフォローしようとした瞬間、辺りにけたたましいサイレンの音が鳴り響く。


 「これは?」


 「誤作動でないなら、再びここに向かってくる連中がいる」


 このサイレンは白夜達の家に悪意をもって近づいてくる人物がいると鳴るように設定されている。数日前にも一度鳴り、その時は白夜達が倒した悪の秘密結社の怪人や関係者達が襲ってきた。そのとき、白夜達は分かれて彼らを倒した。


 「師匠」


 「まずは一旦中に戻ろう」


 「はい」


 対策を講じるため、二人は急いで家の中に入った。


 「これはマズイ……」


 白夜は向かってくる人物がヒーローであると判明し、動揺を隠せない。白夜の焦りは、この場にいた未来や精神的ショックで寝込んでいた風華にも伝わっていた。


 「未来、優理達とここを守れ」


 「いえ、師匠、私も戦います」


 「ここには戦えない春や万全でない風華がいるんだ。もし何か起こったらどうする? これは命令だ。ボスとして」


 「師匠、待ってください……」


 今の白夜はおかしい。未来含め、この場にいる誰もがそう思っていた。未来はこの状態で白夜を一人で戦わすことは危険だと考え、自分も着いていくという。しかし、白夜は(かたく)なに拒み、話を一方的に打ちきる。未来の言葉を届かず、一人で家を飛び出していった。


 (もし奴らが容赦ない連中ならば、未来達は全員…… 絶対にそうはさせない。もう二度とあんなことを繰り返してはいけない)


 白夜は心の隅に過去のあるヒーロー達の蛮行を思い出す。そして守れなかった友を。さっき、自分達についてくることを誓ったみんなを失う訳にはいかない。白夜は急いでこちらに来るヒーローの所に向かった。







 そして話は冒頭に戻る。


 「この程度か。生きる価値もないな。『胴構(どうがま)え・一乃型(いちのかた)』」


 「うっ……」


 ナイトレッドの拳が白夜の身体を襲う。白夜は痛みで後ろに下がるが、ナイトレッドは攻撃の手を緩めない。


 「『一脚(ひとあし)』・『二重脚(にじゅうあし)


 ナイトレッドの蹴りを白夜はジャンプしてかわす。ナイトレッドも予測していたのか、着地の瞬間を狙って、先ほどよりも重い蹴りを入れる。


 『爆風拳』


 白夜は前方に向けて風を(まと)った拳を振るう。しかし、これは攻撃するために行ったわけではない。風圧によって、ナイトレッドの身体を後方に下げるのが目的であった。不意を突かれたナイトレッドは白夜に思ったほどは後ろに下がらなかったが、自慢の蹴りを外してしまう。


 「少しはやるな」


 「そういうお前もな」


 ナイトレッドに軽口で返す白夜だが、正直なところ余裕がない状況だ。戦闘が始まってから白夜はずっと押されていた。つまり、ナイトレッドは白夜よりも強いということである。


 (しかし、この違和感は何だ)


 白夜はナイトレッドの姿を見て違和感を覚えている。しかしながら、その違和感が何なのか分からない。けれども、そこが唯一の勝機になると確信して、白夜はナイトレッドを迎え撃つ。


 「次は当てる。『石片(いしへん)』」


 「くっ、『二類豪風拳』」


 ナイトレッドの小石を(まと)わせた拳を避けようとする白夜。しかし、拳そのものは避けたものの周囲の小石が(ほお)(かす)める。瞬時に迎撃を試みるが、頬に受けた傷の痛みからかナイトレッドに(すんで)の所でかわされてしまう。


 『気構(きがま)え・二乃型(にのかた)


 『二類爆風拳』


 白夜の迎撃をナイトレッドはすぐさま体勢を整える。そして一瞬右腕を回したあと、白夜に向かって今までで一番の速さで右腕を突き出してきた。白夜もその攻撃を喰らえばまずいと考え、ナイトレッドのスピードにしがみつく拳を放った。


 「おぉぉぉぉ」


 「うぉぉぉぉ」


 お互いの拳が再びぶつかる。両者の拳の衝撃で近くの小石や土が吹き飛ばされる。


 (!)


 この拳のぶつかり合いも長くは続かない。先に勢いを無くしたのは白夜の方だった。徐々に白夜の拳が後ろに下がっていく。力を入れるが、押し返すことはできない。あっという間にナイトレッドの拳が白夜の懐に入り込んだ。白夜の最後に見た光景は自身の腹にナイトレッドの拳が当たったことだった。


 「あがっぁぁぁ」


 白夜は宙を舞った。そして地面にうつ伏せの状態で倒れた。


 「うっ、なぜ俺を、殺そうとする」


 白夜が次に目覚めた時、ナイトレッドは少し離れた所でこちらを向いて立っていた。今の状態がうつ伏せに倒れていることを知った白夜は、追撃を少しでも遅くするため、ナイトレッドに話を振った。だが、話の内容がいけなかった。ナイトレッドは顔を赤くし、大声で怒鳴(どな)る。

 

 「鬼堂白夜、または迫夜か……。俺はな、七歳のときにてめえの父に親父を殺された。残されたお袋は必死に俺を育てた。でも、疲労から重い病にかかった。入退院を繰り返して、今また入院している。俺は恨んだ。鬼道栄蔵を。でも奴は死んだ。俺の親父が殺してくれたんだろ。だから俺は自分の恨む心を必死で止めようとした。でもな、てめえという存在が俺の心に変えたんだ。てめえが生きてれば、また親父のように死に、残された家族は悲しむ。てめえが居なければ世の中は平和になるんだ」


 (ナイトレッドの親父か……。俺には全く誰だか分からない。だが、栄蔵のことだ。俺の知らない所でたくさんの人を不幸にしたんだろう。父を失い、母も失いかけている奴に俺が何も言っても無駄か……)


 白夜はこれ以上話を続けるのを(あきら)めた。そして体を起こそうとする。もちろんナイトレッドの攻撃にも備えられるようにして。

 

 「まだ立てるのか……。次こそ止めを……」


 ナイトレッドは立ち上がろうとする白夜を見て、拳を構える準備をする。しかし、何を思ったか突然、白夜の方から顔を背ける。


 (一体どうした。油断しているつもりか……。いや、あっちの方角は)


 白夜はナイトレッドの行動を不思議に思う。けれど、ナイトレッドの方角にあるものを知った白夜はいやな考えを立てていた。そして、そのいやな考えは当たる。ナイトレッドは再び、こちらを向いてニヤリと笑ったことで。


 「あそこにはてめえの大切なものがあるはずだ。鬼道白夜、俺はてめえの父に全てを奪われた。だから俺はてめえの全てを奪ってやるんだよ」


 「行かせな……くっ、体がふらついて」


 ナイトレッドが見ていた方向にあったのは白夜達の家だった。ナイトレッドはそう話した後、一瞬で白夜達の家の方向に走り出した。白夜も追いかけようとするが、先ほどのダメージからか体がふらつき、倒れてしまう。そうする間にナイトレッドの姿は小さくなる。


 「くっ、このままじゃ」


 「あなたが白夜さんですね?」


 体勢を立て直した白夜はナイトレッドを追いかけようとする。しかし、突然後ろから声をかけられる。振り向くと、そこにいたのはナイトレッドの赤色の部分を青色と黄色に変えた二人のヒーローだった。






 次回予告


 家の前で待つ未来と優理の前にナイトレッドが現れる。途中からきた理佐と共に戦うが、圧倒的な力で退けられてしまう。止めを差されそうになった彼女達の前に現れた人物とは? 次回第78話白夜対ナイトレッド中編 再戦




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