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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第5章何無荒野編~三地区編【壱】
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第5章第72話『回想編』冬の激突(2)


 「ーーまさか」


 「これは由々しき自体だぞ……」


 ガルツの発言に黒烏隊の面々は混乱する。【デスインセクト】と【野蛮地帯】の同盟。ヒーロー支援団体ならば卒倒しそうな出来事であるが、黒烏隊は別の懸念を示す。


 「……栄蔵様が危ない!」


 一人の黒烏隊がすぐにその場を離脱しようとする。


 「おい、俺から逃げられると思うのか」


 しかし、巨体とは思えない速さで接近してきたガルツが逃げる一人の横腹に金棒を叩きつける。衝撃で吹き飛ばされた一人は二軒の家を盛大にぶち壊し、ようやく止まる。即死ではないが、もう戦うことはできない傷であることは分かる。


 「次は誰の番だ?」


 仲間の一人が瞬殺された様子を見ていた他の黒烏隊の面々は、ガルツを排除する“敵”と認定し、臨戦態勢へと入った。


 数十分後、この廃墟の町で立っているのは一人だった。町の中心部では激しい戦闘が行われ、先ほどまで居た屋敷に至っては全壊し、今は瓦礫(がれき)と化している。


 勝者はガルツ。周りには黒烏隊の亡骸(なきがら)が九体と【ヴェノム】の首領(ドン)だったものが横たわっている。首領(ドン)はどさくさに紛れて逃げだしたが、ガルツから逃げられるはずがなく。捕まって、黒烏隊へと物理的に投げつけられた。なお、戦闘員レベルの力しかない首領(ドン)はすれ違いざまに首をはねられた。首領(ドン)の死によって【ヴェノム】は全滅したのだ。


 「ふう~、最後の奴の攻撃はなかなか良かったぞ。俺の部下に欲しかったくらいにな……」


 勝利したガルツの身体には生々しい傷跡が残っている。黒烏隊も捨て身で戦ったため、いくら戦闘能力の高いガルツであって、無傷とはいかない。


 戦いに満足したガルツは廃墟の町を立ち去る。黒烏隊【ヴェノム】襲撃部隊は十二人、全員がガルツによって殺された。その情報を栄蔵が知ることはない。彼の秘密基地には今、ヒーローとヒーロー支援団体が攻めこんでいるからだ。






 時は少し(さかのぼ)り……


 栄蔵博士の研究所の一室では、栄蔵博士と秀元が対峙(たいじ)していた。秀元は既に傷を負い、虫の息状態である。


 「どうだ裏切り者。最期に言い残すことはないか?」


 「いや、とくに何も……」


 秀元はもう全てを受けている覚悟した。少し前にナイトレッド率いるヒーローとヒーロー支援団体の戦闘部隊が研究所に接近してきたのである。総数50人。明らかに研究所の場所を把握している、そう考えた栄蔵博士は研究所に残っている黒烏隊の内、四人を迎撃に向かわせた。


 黒烏隊の大半が【ヴェノム】襲撃で不在というこのタイミングの中、ヒーロー達がここを襲撃する。相手側にとって絶好な機会。こんなタイミングよく襲撃できるのは、秀元が情報を流したに違いないと、予定していたよりも早い段階で秀元を消すことを決めた。


 秀元はある程度の戦闘能力を持っていたが、あくまである程度である。それに対して栄蔵博士は【ノーヒューマン】時代からいる古参兵。【デスインセクト】や【野蛮地帯】の幹部連中に比べれば弱いものの、それでもそこら辺の怪人よりは強いのである。呆気(あっけ)なく返り討ちにあった秀元は今、地面に伏している。完敗だった。


 しかし、栄蔵博士は一つ思い違いをしていた。実はヒーロー支援団体がこの場所を見つけられたのは秀元が情報を流したからではない。秀元がこの研究所に潜入したときから、黒烏隊により監視されている。そんな中で秀元が露骨に連絡など出来ないのである。


 ではなぜヒーロー支援団体はこの場所を見つけられたのか、それはある一つの匿名での情報であった。もちろん罠だと考えた上層部だったが、他に有力な情報がなかった。仕方なくではあったが、この情報の中で栄蔵博士の研究所とされたこの森林地帯にヒーロー達を派遣した。


 つまり、ヒーロー支援団体はまだここが栄蔵博士の研究所がある場所だと把握したわけではない。栄蔵博士が取った、黒烏隊の迎撃はここに研究所があると示している確固たる証拠になってしまう。定型的な悪手である。


 そうとも知らず、秀元から外にいるヒーローの情報を聞き出そうとするが、本当に知らない秀元が答えるわけがない。栄蔵博士は焦燥に駆られて、秀元を何発も殴った後、部屋を出ていく。本当ならば止めを差さなければいけないのに……。


 (すまない風華、こんな駄目な父親で。すまない郎、私は帰れそうにない)


 消えゆく意識の中、秀元が思ったのは娘や友に対する懺悔(ざんげ)の言葉であった。






 「ぐはぁぁぁ」


 ある任務についていた一人の黒烏隊のメンバーは膝から崩れ落ちた。


 「ちっ、早く白夜を取り返さないと」


 黒烏隊の一人を倒したのは、ひかりだった。この(たお)した黒烏隊のメンバーが受けおっていた任務は白夜の誘拐であった。今日も三人に遊んでいたが、突然やってきた黒烏隊の二人の内の一人に白夜を連れていかれてしまった。そして残りの一人は足止めとひかり達の殺害のため、ひかりに向かってきたのだ。


 「ひかりお姉ちゃん大丈夫?」


 ひかりはなんとか(たお)すことが出来たが、こちらも軽微でない傷を負っていた。そんなひかりに様子を心配した風華が声をかけてくる。


 「お姉ちゃんは大丈夫だ。だってお姉ちゃんはヒーローなんだからな。『聖癒(キュア)』」


 風華に対し、気丈に振る舞うひかり。やせ我慢して言っているのではなく、直後には傷が無くせるほどの力を持っているからだ言える言葉なのだ。


 ひかりは魔法少女を辞めてからも何故か魔物少女時代の能力を使える前例にない人物だ。【聖光(ホーリー)】と呼ばれるもっともの理由は自己回復能力にある。

 ひかりは気絶や致命傷でない限りすぐに回復し、戦闘に復帰してしまう。さらに、本人の運動神経の高さもあってか、味方からは頼られる存在だ。

 なお、回復能力は自身のみなので、たまに知らない一般人がそのことを知ると、がっくりしてしまうという出来事があった。


 「風華はここに……いや、私に背中に乗れ」


 ひかりは最初、風華を置いてこようとしたが、ここに置くのも危険と考え、背負っていくことにした。


 「乗ったな、じゃあ、振り落とされないようしっかり捕まってろ」


 風華を背負ったひかりは全速力で白夜を連れ去った黒烏隊を追いかけていく。






 

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