第5章第70話『回想編』写真
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白夜がひかりと出会ってから数ヶ月、年は明け、1982年となった。世間では三が日の最終日と呼ばれる一月三日、白夜はひかりに連れられて研究所の外に出ていた。
「おっ、白夜が一番びっけだな」
そういきなり声をかけてきたのはひかりである。周りを見渡すと、ひかりの他に風華と父である秀元がいた。
(う、風が冷たい……)
季節は冬であり、外は一桁の気温しかない。さらに今日は北風が吹いており、白夜は“早く終わればいいな”と思っていった。それとは対照的に風華は元気にそこら中を走り回っている。
「おーい、準備できたから集まってくれ~」
秀元の呼び掛けによって三人は同じ場所に集まる。
「ひか姉、みんなを集めてどうするの? あそこにカメラがあるけど……もしかして……」
「そりゃもちろん写真を撮るためだ。他に使い道があるわけないだろう? 」
白夜の質問に対し、帰ってきた答えはごくごく当たり前のことだった。確かにカメラに写真を撮る以外の機能はない。むしろ他にあったら聞いてみたくなる。
白夜がそう考えている内に他の二人はカメラがある方に体を向けていた。秀元は三脚の上に固定されたカメラをいじっている。どうやらそろそろ撮影するらしい。白夜の予想通り、秀元はいじるのをやめ、こちらに合図を送っている。
「じゃー撮るぞ。一+一は」
「「「 二~ 」」」
秀元は写真撮影のときに一番使うであろう台詞をいう。もちろんその台詞に対する答えは決まっており、三人は声を合わせて叫んだ。
「よし、撮れたぞ。次は俺も入るからもう少し内側に集まってくれ」
「了解した。白夜、風華、私の周りに少し近づいてこい」
二人が言われた通りにすると、秀元はカメラのシャッターを押した。今度はすぐには撮らず少しの時間差をもって撮影する、誰もが一度は経験したことのある方法だ。
秀元はすぐにひかり達の元に駆け込もうとするが、途中で何故か止まってしまった。その間に無慈悲にもシャッター音が鳴り、秀元は写真の中に入ること出来ずに終わってしまった。
「どうしたんだ? そんなに顔を強張らせて? 」
秀元の不審な動きにひかりが尋ねる。ひかり達から見た秀元は先ほどまで穏やかな顔とはうってかわり、何か不快なものでも見たかのような顔をしていた。その様子に娘である風華も少し怖がっていた。
「いや何でもない。すまないが、後片付けを頼む。急用が出来た」
秀元はすぐに表情を和らげたが、突然の急用に三人は驚く。
「……分かった。白夜、風華、今からかくれんぼだ」
「「え~」」
「最初は私が鬼だ。十数えるうちにーー」
ひかりは何かを察したようで、秀元をそのまま見送る。さらに気をつかい、白夜と風華の注意を逸らした。なお、この日ひかり達三人は秀元と再び会うことはなかった。
(すまん。感謝する)
秀元は心の中でそう思い、研究所の中に入っていった。あの時、秀元が見たのは研究所の隅からこちらを覗いていた栄蔵博士の姿であった。栄蔵博士はこちらが気付くと、すぐにその場を立ち去った。しかし、秀元にはある一抹の不安を覚えた。そのため、栄蔵博士を追いかけることにした。
(そろそろ私も潮時のようだ。郎、もし私がいなくなったらあとのことは任せたぞ)
秀元は近々、【狂悪】が【デスインセクト】に襲撃をかけることを栄蔵博士から聞かされてきた。もちろん自分を誘う罠でもあることも。秀元は逆に利用してやろうと考えていた。
この日から当日までいつもの日常が続いた。そしてとうとう運命の日がやって来た。1982年1月29日、【狂悪】が動き始める。
この回想編もこの話を境に後半となります。最後までお楽しみください。




