第5章第67話『回想編』αと風華とひかり
今年もよろしくお願いいたします。
まだまだ残暑の残る9月の始め頃、栄蔵の研究所では……。
「離せー、外には出たくなーい」
「離せって言われて離すやつがいるかよ。図書室ばかりに引きこもっていたら、身体に悪いぞ」
二十代ぐらいの女性に抱えられ、手足をバタバタさせて抵抗するαの姿があった。αがいくら抵抗しても女性は意にも介さずにαをそのままどこかに連れていったのだった。
「くそっ、太陽の光が目に…目に…」
αは太陽を見上げて、突然そう言い放った。
「太陽を直視するばそうなるだろ。それにわざとらしい演技までしてなぁ」
その様子を見ていた女性はやれやれと、ため息をつくのであった。
αが連れてこられた場所は研究所の外である。研究所の外は森で囲まれているが、研究所近くは切り開かれており、雑草が生い茂ってる場所を除けばα達が遊べるスペースはそこそこあるのだ。ちなみに栄蔵博士の研究所はサイカイ地区の南西に存在する。もちろんこれは極秘情報であり、ごく一部の人にしか知らない。
「ーー光お姉ちゃん。連れてきてくれた? 」
αが連れてこられた先には既に秀元の娘である風華が居た。風華は女性がαを連れてきたのを見て、顔を綻ばせた。
「だぁあ、お前の仕業か? 」
αは自分が連れだしたのが風華だと分かると、怒りの矛先を風華に変え、詰め寄っていく。
「おい、私に勝てないって自分より弱いやつに当たるのか? 」
しかし、風華に辿り着く前に、女性に首根っこを掴まれて、αは宙ぶらりんの状態になってしまう。
「なんだ……ひっ」
αは文句を言おうと後ろを向く。すると女性は鬼の形相でαを睨み付けていた。たまらずαは萎縮し、しゅんとなる。女性はそれを見て、もう抵抗しないと感じたのかαを地に下ろす。
「ーーで、誰だよ。あんた? 」
下ろされたαはずっと疑問になっていたことを尋ねる。
「そうだな。まだ名乗ったことはなかったな……。私の名前は近衛ひかりだ。よろしく」
尋ねられた女性は自分の名前をハキハキと答え、喋り終わるとαの方へ手を伸ばす。
「……よろしく」
αは少しの沈黙の後、ぶっきらぼうにそう言った。しかし、αの心の中では、物理的にひかりには勝てないし、早く終わせて帰るためにここは相づちしておけばいい、と思っていた。
「次はわたしの番。わたしの名前はふ……」
「風華だろ。何回も聞いた」
その光景を目の前で見ていた風華が、次は自分だとばかりに名乗ろうとするが、先にαに言われてしまう。それもそのはず、風華は父にここに連れてこられてから3ヶ月間、ずっとαにつきまとっていた。その際、何度か自ら名前を言ったことがあり、αはそのとき言ったことを覚えていた。
名前を言われた風華はムッとした表情である。
「まあまあ、落ちつけ。これから遊ぶんだから……」
そんな風華をなだめるひかり。
「じゃ、鬼ごっこしよ」
「……は? 」
機嫌を直した風華は3ヶ月間、αとやりたかったことを話す。そのやりたかったことに、αは思わず唖然とする。
次回は2月に投稿する予定でしたが多忙でできませんでした。毎度、毎度遅れてすみません。




