第5章第65話『回想編』栄蔵の野望
久しぶりです。またゆっくりですがこれからも更新していきますので、よろしくお願いいたします。
サイカイ歴(南歴)1972年、栄蔵博士の秘密アジトではある計画が進んでいた。その計画の中身は栄蔵の遺伝子を後世に残すため子を作るというもの。
しかし、これはあくまで外面的なことに過ぎない。本当の栄蔵博士の目的は、もし自分が死んだときに乗り移れる器を作ることである。
なぜならば、それは“間接的な不死の実現”をさせたかったからである。
栄蔵博士は【ノーヒューマン】時代から今までに至るまで不死だけは叶えることが出来ずにいた。空間移動、不老、クローン、人と異物との融合、などあらゆるものを実現してきた博士であるが、ただ一つ出来なかったこと。それが“不死”である。
「これでとうとう……。ここまで長い道のりであった……」
栄蔵博士は研究所内にある自室の窓を見つめながらそう呟く。
博士が言うとおり、この計画までいくつもの失敗を繰り返してきたからだ。まずは不老であっても、元の寿命を伸ばすことは出来なかった。八十歳で寿命を迎える人は不老であっても八十歳で死んだ。クローンも同様であり、元の寿命が尽きると一斉にクローン達は動かなくなっていった。
その後もあの手この手で不死を実現しようとするが、叶えることは不可能だった。そのため栄蔵博士は“自らの体のままで”不死を得ることを諦めた。
「そろそろ母体の様子を見に行くか」
栄蔵博士は自室から計画が進んでいる第一研究室へと向かった。
“自らの体のままで”不死を諦めた栄蔵博士は数年後それに代わる案を思い付く。それが“魂の”不死である。つまり栄蔵博士は魂となって“体”を入れ換えるという形で不死を実現しようとしたのだ。
しかし、突如けたたましいサイレンの音が研究所内に鳴り響く。
「大変です。母体が逃げ出しました」
「んなことはこの警報音でわかってるわ。早く母体を確保しろと伝えとけ」
「は、はいぃぃぃ」
サイレンが鳴り響く中、栄蔵博士の元にやってきた例の黒装束の一人がそう報告する。報告を受けた栄蔵博士は黒装束の人物を叱責しながら次の指示を出した。栄蔵博士の苛立ち(いらだち)を見て、部下は慌ててその場を立ち去る。
「ここまできて、失敗など……失敗など……」
栄蔵博士は焦る気持ちを抑えながら、急いで第一研究室へと向かう。
「なんだっ、この状態は。」
第一研究室前に着いた栄蔵博士は目を疑った。なぜなら、目の前には部下である黒装束達や白衣を着た者達が全身から血を流し倒れているのである。
「これでは研究室内は……」
栄蔵博士は研究室内に足を踏み入れると、中も外同様に死屍累々の状態であった。さらに上を覗くと太陽が見えた。つまり、天井をぶち壊していったらしい。
「くっ、なぜだ。母体は人間の女であるはず……。部屋の中の惨状を見る限り、とても人間業とは思えん。……まさかデスインセクトか。」
栄蔵博士はこれを起こしたのは【デスインセクト】と結論付けた。栄蔵博士の中でこの時から【デスインセクト】は味方から敵という認識するようになる。
「またしても……不死という野望を叶えることは出来ないのか……」
栄蔵博士は放心し、床に座り込んでしまった。
「……んっ? 」
ふと部屋の隅を見た、栄蔵博士はあるものに気付いた。
「まさか……。はっはっは、まだ私は天に見放されてなかったのか……。まあ、天などありもしないが……」
栄蔵博士が部屋の隅で見つけたのは黒いケースに入った生後間もない赤ちゃんだった。このケースは防音の為、中にいた赤ちゃんは泣いていたが、外の栄蔵博士には聞こえなくなっていた。
この赤ちゃんを見た栄蔵は勝ち誇っていた。“【デスインセクト】の計画は失敗に終わったと” そう心の中で思った。
この日、栄蔵博士は部下を半分失うことになった。しかし、道徳心の欠如した栄蔵博士にはあまり堪える出来事ではなかった。逆に“不死”という計画が新しい段階へいけたことに嬉しさすら感じていた。
この日、産まれた赤ちゃんに栄蔵博士はαという名称を付ける。いつか自分の体になる赤ちゃんに名などいらないと考えたからであった。
後にこの赤ちゃんにある人物が“迫夜”という名前を付けるがそれはまた後の話……。
本来は『回想編』鬼堂迫夜誕生が最初のタイトルでしたが、ネタバレになるのでやめました。某カードアニメでも◯◯◯死すとかありましたしね……。
次回は11月に更新します。




