第5章第55話新たなる課題
今回から第5章です。初めなので少ないです。
コウチシティ決戦から数日。迫夜の家の近くでは未来が修行していた。これはいつもの光景である。
「はぁー、これはまずいな……」
そんな未来のことはさておき、迫夜は家の真横に置かれたあるものの残骸を見て、ため息をついてしまった。それは刃の部分が折れている大鎌だった。それも十本。
「迫夜さんもそう思いましたか」
迫夜に声をかけるのは、大鎌を使う理佐ではなく、理佐から頼まれた優理だ。聞くところによると、迫夜がタノマ地区に行っている間、理佐が修行用の鋼鉄ロボットを切ってるうちにこうなってしままったとの事だ。なお、当の本人は現在、琴美と遊んでいる。
「鋼鉄ロボットは優理用だったんだが……」
迫夜は再びため息をついた。本来ならば鋼鉄ロボットは優理が雷剣で壊せる用に作ってある。優理の持つ剣は名門の鍛冶屋が製作した名剣で、そこらの剣とは格が違うため、鋼鉄ロボットの強度も高くしても大丈夫である。
しかし、理佐の大鎌は迫夜が製作したものである。科学の知識には博識な迫夜だから大鎌の製作は出来るが、経験が乏しいので刃物としての性能は低い。そのため、鋼鉄ロボットを切断するほどの性能がなく、逆に大鎌の刃の部分が傷んでしまう。その結果が目の前にある大鎌の残骸だった。
「数日中には欲しいらしいです。……迫夜さん。大丈夫ですか」
優理は用件を続ける。しかし、迫夜のあまりにも頭を抱え、困っている姿を見て、心配になって声をかけた。
「……ああ。ちょっと聞いていいか」
「はい」
迫夜は落ち込みながら返答する。直後、優理に尋ねる。
「やっぱり、その剣を作った人はヒーロー支援団体に?」
「はい、そうです。……すいません。残念ですが作ってもらえないと思います」
「そうだよな……」
優理は迫夜の言葉の意図に気づき、遠回しに言う。それを聞いて、迫夜は密かに抱いていた希望を捨てることになる。
ヒーロー支援団体には沢山の鍛冶職人が在籍している。作っているものは武器であり、公認ヒーローの持つ武器はほぼ全てがヒーロー支援団体の鍛冶職人によって作られているのである。
しかし、この武器は民間人には買えないのである。理由は悪の秘密結社への流入を避けるためであり、もし破ると問答無用でヒーロー支援団体を追放されてしまうのである。
ヒーロー支援団体に所属することで受けられる利は喉から手が出るほど魅力的なもので、今まで追放された鍛冶職人がいない事実がそれを証明している。
「じゃあ、理佐に伝えておいて。数日中に作ると」
「はい。伝えておきます」
理佐に本当は名鎌を贈りたい迫夜だったが、知り合いに鍛冶職人はおらず、なおかつ、ヒーロー支援団体に所属していないものは信用度が低い故に諦めるしか他なかった。
その日の晩、迫夜は自室兼研究室の机で頭を抱えていた。理由は抱えている問題が山積みだったからだ。一つは春について、一つは理佐の大鎌について、一つはタノマ地区に行っている間に家にやって来た翠についてなど、片付けたい問題がたくさんあった。
「んっ?」
そんな迫夜は唐突に机の引き出しを開けていた。引き出しに入っているのは研究の書類が大半を占める。その中である一枚の写真を見つける。
「……」
その写真を見た迫夜は沈黙したまま、動かなかった。しばらくしてその写真を最初にあった引き出しとは異なる引き出しに入れた。普段なら、引き出しの奥に入れるのだが、今回ばかりは中の書類の上にボサッと置くだけだった。
「……」
疲れた様子の迫夜はそのまま一言も発せずに寝床まで行き、眠ってしまった。
次回は明日更新です。




