第4章第54話冒険の終わり
第4章本編ラスト
「ゴホッ、ゴホッ」
壁際で横になっていた次郎は突然咳き込んだ。慌てて、手を口に当てる。咳が止み、手を離すと、手のひらには大量の赤い血が付着していた。
「おい、大丈夫か。次郎」
すぐそばで目撃していたジョンが声がかける。
「ハアァ、ハアァ」
次郎は呼び掛けに答えようとするものの、既に声を出す力は残っていなかった。
プレイバーを倒した迫夜と未来。二人は未来を庇って負傷した次郎の元に向かって駆け寄る。しかし、途中で未来のネックレスが突然粉々に割れてしまった。ネックレスによって変身していた未来は元の姿に戻ってしまう。
未来はせっかく借りたネックレスが粉々に割れたことに申し訳なく思ったが、次郎の容態の方を優先したため、立ち止まったり、迫夜と会話するといった行為はしなかった。
(やはり、悪と名乗っている俺たちには聖との相性が悪いのか……)
ネックレスが壊れた瞬間を隣で見た迫夜はそう思った。
「次郎さん」
二人が次郎の元に着いたとき、既に次郎はジョンの呼び掛けにも応答せず、ハァ、ハァ、と荒い呼吸の音しか三人の耳には聞こえなかった。
次郎が負った傷は刃物で心臓を貫かれるというものだった。誰がどう見ても致命傷といえるものだ。一般人なら即死もあり得る傷だが、ここまで生きていられたのは、やはり半分改造されていたからであろう。
「次郎さん」
「次郎~」
「おい、次郎」
次郎は薄れゆく意識の中、必死に自分に向かい、呼び掛けている三人を姿を見ていた。
もう既に自分が助からないことは分かっている。一つ心残りがあるなら自分を想ってくれている三人に最期の別れを言えないことだ。
手足はもう動かないし、声も出せなくなった。三人にはまだまだ話したいことがあるが……もう諦めよう。
人は死ぬときに走馬灯を見ると聞くが、どうやら嘘のようだ。なぜなら今、自分は全く何も感じないからだ。いや、ちょっとまて……。そう言えば、この基地に乗り込む前の日に人生を振り返っていたからか……。たしかこういうのを死亡フラグっていうんだっけ……。
どうやらお迎えが来たらしい。別れの挨拶も言えなくてすまんな。最期に言わせてもらう。“俺は人のまま死ねて嬉しい” もちろん声には出せないけどな……。
次郎、享年36。【ボーンレイド】によって狂われた波乱万丈な人生は奇しくも【ボーンレイド】と共に幕を降ろす結末を迎えることになる。
ここはかつて悪の秘密結社に対抗したヒーロー側の秘密基地があった場所だ。それも昔の話。今は逆に悪の秘密結社の基地にされていた。過去形なのはもう既にその悪の秘密結社は滅んだためだ。その基地の最奥部、司令室には今なお、戦いの爪痕が残っている。しかし、もうそこに誰もおらず、ただ“静寂”という痕跡だけがその場を支配しているのである。
「じゃあ、俺はここでな」
ところ変わってここはガンバイトシティの町外れ。あの後、次郎の亡骸を供養したあと、三人は瞬間移動マシンでガンバイトシティに戻ってきたのであった。
なお、瞬間移動マシンが使えなかった原因は司令室の後ろにあった電源室の邪電波発生装置によって引き起こされており、それに気づいた迫夜が装置の電源を切ったことで解決した。
なぜ電源が付いていたかは定かではないが、【ボーンレイド】が襲撃した際、防衛のために電源を入れたのではという説が有力視されることになる。
ここでジョンと別れることになった。ジョンは初め、瞬間移動マシンの性能に驚いた。最初にこれを使えば次郎を助けられたのではないかと考えたが、あの時はまだ邪電波発生装置が作動していたことと、たとえ邪電波発生装置が無かったとしても次郎の怪我を治せる医者は居ないということに辿り着き、どうやっても次郎は助けられなかったと結論付けた。
「どうもありがとうございました」
頭を下げてお辞儀する未来。
「また会えるといいな」
それに対してフレンドリーな迫夜。未来とは違い、ジョンとは少ししか会ったないのとお世話にならなかった?点からあまり上下関係が無かったのが原因と思われる。
「そうだな。じゃ、あばよ」
ジョンを見送った二人は風華達のいる自宅に帰ることになる。二人が玄関の扉を開けると、心配していた風華達が駆け寄ってきた。その光景を見て、二人はやっと帰ってきたことを実感したのである。
ちなみに迫夜よりも未来が帰ってきたことにみんなが喜んでいる姿を見た迫夜が愚痴を溢したり、知らなかったとはいえ翠を敵扱いして風華に家を放り出されたりしていた。
次回予告
次回予告は第5章の中盤まではありません。閑話を挟んでから第5章に入ります。第5章は2016年2月から公開予定です。




