第4章第41話未来の平和なき冒険その9~クレイバス攻防戦(後編)~
「守人怒りを収めろ。これより作戦を発表する。守人と堅はあの強化骨格標本を公司から離れさせてくれ。」
「分かったぜ」
「了解」
守人は隊長の言葉で強化骨格標本との戦いと一時止める。隊長は全員に作戦と配置を伝える。最初に指示を受けた守人と堅が強化骨格標本に近付いていく。
「ジョンと哲治は二人の援護を頼む」
「ああ」
「ふん」
次に指示を受けたジョンと哲治が二人の後を追う。
「俺と未来は公司の救出に向かう」
「分かりました」
最後に隊長が未来と共に公司の救出しに近くの瓦礫に隠れ隙を伺う。
作戦はこうだ。まず守人と堅が強化骨格標本を誘導し、公司から離れさせる。その間に公司を救出というのが今回の作戦である。
「喰らえ」
守人は強化骨格標本に向け、投げナイフを投げ続ける。しかし、強化骨格標本は全て槍先で弾いてしまう。
「コロス、コロス」
守人の攻撃を嫌と思ったのか、強化骨格標本は守人の方にじわじわ近づいてくる。そして十メートルくらいまで近づいた時、突如守人めがけて槍先を向け突っ込んできた。
「今だ。行くぞ未来」
「はい」
その隙を見逃さなかった隊長と未来はすぐさま倒れている公司の所に向かった。
「コロスコロス」
強化骨格標本は守人に突っ込んでいくが、守人は後ろに後退するため距離はなかなか縮めることができない。
「オラァァァ」
倒壊した建物の瓦礫に隠れていた堅が強化骨格標本の横から奇襲し、その体格を生かして突き飛ばす。思わぬ攻撃に強化骨格標本は回避出来ずに当たり、後ろに飛ばされる。しかし持っていた槍を落とすことはなく、すぐに起き上がってしまう。さらに、攻撃の対象を守人から堅に変え、槍を突き出してきた。
「そんな遅い槍、当たらねぇよ」
堅は体格に似つかない瞬時な動きで槍を回避する。しかもその動きで槍の柄の部分を掴むことに成功する。
「……ヒッ」
「なっあ、あちっ」
強化骨格標本が今までと違う奇声を上げた瞬間槍が炎に包まれる。堅は槍を掴んでいたため熱さで手を放してしまう。そこを強化骨格標本が狙う。
「援護を忘れるな」
たが、ジョンが銃を撃ち強化骨格標本の頭蓋骨を貫通する。普通の骨格標本ならこれで倒れる。しかし、そこは仮にも強化骨格標本。すぐに体勢を整える。その間に堅は強化骨格標本から距離を置き、次の攻撃に備える。
「公司?」
強化骨格標本の隙をついて倒れた公司の元に辿り着いた隊長と未来。しかし、現実は残酷であった。近くで見れば見るほど公司の傷は酷く、息があるとは思えなかった。
「……」
隊長は公司の脈を調べる。が、脈はなかった。つまり、公司は死んだ。享年二十三。まだ長かったであろう人生は今日、強化骨格標本によって永遠に失われた。その事実を理解した隊長は公司の遺品の一つである槍を回収する。
「……行くぞ、みんなの所に」
「はい」
そして隊長は弱々しい言葉で未来に言った。未来も普段とはかけ離れた小さな声で頷くと、二人は公司の遺体から離れていく。
一方、強化骨格標本と戦っている三人は徐々に強化骨格標本を追い詰めていた。
堅が強化骨格標本の槍をかわしながら、ジョンが正確に弾を急所に当てる。さらに、隙を見て守人も投げナイフで攻撃する。
「グァァ」
その繰り返しを受けて、強化骨格標本から発せられる奇声も弱々しいものとなる。
「おい、公司の容態は?」
瓦礫の後ろに隠れているジョンの所に隊長と未来がやって来る。ジョンは公司のことを尋ねるが、隊長は無言で首を横に振る。
「そうか……。こっちはもうすぐ終わる。見ろ。」
ジョンが強化骨格標本を指差した時、戦況ががらりと変わる。
「はぁっ」
今まで、傍観していた哲治が強化骨格標本に向け、網を投げつける。網は見事に強化骨格標本の体に絡みつき、その際強化骨格標本は炎槍を落としてしまう。
もちろん、その隙を見逃さない堅は全体重をこめた体当たりを食らわす。網に絡まって、身動きが取れない強化骨格標本はもろにくらい、そのまま堅と共に倒れこむ。
「グァア」
倒れた強化骨格標本は奇声を発する。その理由は衝撃によって全身の骨を折られ、苦痛を受けているからである。
堅は止めに頭蓋骨を粉砕し、強化骨格標本は永久に活動を停止させた。
「ぐあぁぁぁぁぁ」
それは堅が立ち上がり、守人の方に向かうときだった。突然の銃声と共に後ろを振り向くと、哲治が宙を舞っていた。体に何発の弾丸を受けて。
その光景は堅だけではなく、他の全員が目撃していた。堅は咄嗟に次の標的が自分であることを察知し、急いで守人の隠れる瓦礫の裏に飛び込んだ。
「一体、何が起こっているんだ?」
「ガトリング銃……まさか皆殺しの竜?」
堅はそばにいる守人に尋ねるが、守人は堅の話を聞いておらず、一方を見つめながら冷や汗をかいていた。尋常じゃないと思った堅は守人が見つめる先を見た。そこには一体の骨格標本が堅がさっきまで居た場所にガトリング銃の銃口を向けていた。
別の場所から見ていたジョン達は一部始終を目撃していた。堅が強化骨格標本を倒し、後ろを振いた瞬間に半壊した家の後ろから突如ガトリング銃を持った骨格標本が現れ、油断していた哲治に向かって乱射した。弾の多くは哲治には当たらなかったが、何発かが哲治の体に直撃して、哲治は宙を舞った。
「これより迎撃戦を開始する」
隊長は大声でこの場に居る全員に向けて言う。
「伏せろ」
ジョンの言葉で隊長と未来は身を屈める。その瞬間、瓦礫に耳が破裂しそうなぐらいの轟音と共にこれでもかというほどの銃弾が着弾した。
現場は膠着状態に陥っていた。ジョンが隙をついて攻撃するが、ガトリング銃で迎撃され、当てることはできない。対する骨格標本も瓦礫をどかすほどの攻撃は不可能だった。
そして、ただの骨格標本がガトリング銃を扱えるわけがなく、この個体は強化骨格標本であった。
「あ、あいつは、あいつは」
いまだに冷や汗をかきながら、体を震わせている守人。
「おい、どうしたってんだよ。おめぇがよ」
堅が守人の体を揺さぶって、守人に問いかけるが応答はなく。完全に心がいってしまっていた。堅は気づかなかったが、この強化骨格標本はかなり有名な人物である。もちろん、人間の時の話だが……。
その正体は【仁徳組】の若頭で通称【皆殺しの竜】と呼ばれていた。通称の名のとおり、敵は女子供だろうが皆殺しにする。守人もその光景を目の当たりにした一人であった。
守人が戦えない今、近距離戦が主流の堅は隠れることしか出来ないでいた。堅は隊長達の指示が欲しかったが、攻撃されるのを恐れて聞けなかった。
「このピンチ打開しないといけないな」
隊長達が居る瓦礫で突然、その言葉が囁かれた。三人がその声の方向を見ると、ある人物が立っていた。
「お前……一体今まで何を……」
「次郎さん」
それは未来がタノマ地区で初めて出会った次郎であった。ジョンも次郎の姿に目を見開きながらびっくりしていた。
「その話はまた後だ。あの上級強化骨格標本を片付ける。離れの人々は俺の味方に任せてくれ」
「次郎さんの味方?」
未来はふと離れを見ると、一人の男が骨格標本達を攻撃していた。
「し、師匠」
その男は未来が捜していた迫夜だった。とうとう未来は迫夜に再会したのであった。
次回予告
膠着した状況に現れた次郎。果たして、次郎は上級強化骨格標本相手にどう戦うのか? そして迫夜と再会した未来の運命は? 次回クレイバス攻防戦延長編+戦いの後で
次回の投稿は6月10日の22時(確定)となります




