第4章第40話未来の平和なき冒険その8~クレイバス攻防戦(前編)~
早朝、まだ日を昇らない内にガンバイトシティを出ていく一つの集団があった。集団の先頭にはガンバイトシティの防衛第一隊隊長(隊長)。その後ろに男五人、そしてまだ二十歳にも満たない少女が一人。
その集団は背中に重いリュックを背負いながら、足早に北の方角に消えていく。ガンバイトシティの北門を出て三十分ほどで森林地帯があるため、ガンバイトの壁上から人が見えるのはここまである。
その集団はもうお分かりになる人も多いだろうが、未来達である。
「みんな止まれ。ここで飯をとる」
未来達は隊長の言葉で飯をとることになった。ガンバイトシティを出てから七時間弱、太陽がちょうど真上にある時間帯になる。つまり昼飯である。
未来達は休憩を挟みながら、ここまで来た。現在、未来達が居るのは大神山のガンバイトシティ側四号目付近である。
大神山は標高二千メートルちょいの山で剛雅山脈の一つ。剛雅山脈は無能の荒野からタノマ地区を通りテレイ地区まで続く大きな山脈だ。無能の荒野側の山々には動植物が一切存在していないが、タノマ、テレイ側では豊富な動植物を見ることができる。もちろん冬は大自然が猛威を奮うが……。
「みんなに報告がある。これから先は……」
隊長は食事の最中、改めてここにいる全員にガンバイトシティで起こった事件を伝え、これから先の危険性について語る。
「大丈夫だ。ここにいる連中はみな命を懸けて覚悟は出来てる。」
こう言うのはメンバーの中で一番体格のいい堅である。堅はガンバイトシティ一の怪力を持つ。年齢は三十一で身長が二メートル以上あり、体重はちょうど百キロ。その体格を生かした攻撃は並みの戦闘員なら一撃で全身骨折させ立てなくする。まさにメンバーの中では一二を争う力の持ち主だ。
「そうですよ。なんのために志願したのか分からなくなりますよ」
次に発言したのはメンバーの中では最年少(※未来は除く)の広司だ。公司は二十三歳という若さながら、ガンバイトシティ防衛第三隊副隊長を務めるほどの実力をもつ。公司が得意としているものは槍で、中距離から攻撃はガンバイト一の強さを誇る。
「では、早く飯を食べよう。つまらぬ話をしにきたのではないのだろう?」
この愛想のない人物の名は守人だ。守人は年がら年中黒装束に身に纏う、ガンバイトシティ屈指の変人である。元々ガンバイトシティ出身ではないせいか歳は不明だ。老けぐらいから四十代? という説が有力であるようだ。そんな容姿とは裏腹に戦闘能力は高い。
「……」
最後にこの無言の老齢の男性は哲治である。哲治は御歳七十になる爺さんで、典型的な頑固・融通の聞かない爺さんである。一言喋らない理由は未来及び公司をメンバーに入れたことに不満を覚えているからだ。本人曰く最低三十歳以上が(メンバーに入る)条件だったらしい。
「それもそうだ。じゃあ、みなさん手を合わせて……いただきます」
「「「いただきます」」」
食事を終えた七人は後片付けをし、出発した。今、進んでいるのは整備された山道である。とは言っても都会にあるようなアスファルトな道ではなく道の端に人工の杭と縄がつけられている、ほぼ自然のままの山道であるが……。
七人はひたすらその道を歩き続ける。途中で二手に分かれる場所があった。一番前に居る隊長は迷うことなく山頂に行く道ではなく、目的地の北の村に“早く”行ける道を選ぶ。
目的地の北の村とは名前をクレイバスといい、ガンバイトシティ側とは正反対のコウチシティ側の大神山五号目の場所に存在する。ちなみにコウチシティとは五年前まで人が住んでいた所で、今は誰も住んでいない無人の街である。
「えっ、そんなぁ~」
「うそだろ。まさか……」
「チッ、暖かい布団で寝れると思ったのによぉ」
「文句を言うな。みんな今日はもう日が落ちる。ここで野宿する。みんな配置についてくれ」
七人が今夜泊まる山小屋に辿り着いた。だが、そこにあったのは山小屋の残骸と骨格標本達の亡骸だった。
未来、ジョン、堅は口々に文句を言うが、隊長にたしなめられる。さらに隊長の判断で今日は野宿することになった。隊長はこういう想定もしていたのかちゃんと野営道具を自ら持ってきていた。
その夜、隊長の指示で骨格標本の奇襲を警戒しつつ、バラバラに仮眠を取り始める。その晩の食事は携帯食でなおかついつ骨格標本達が襲ってくるかもしれない状況下では、未来を含め談笑できるような無神経な人は居なかった。
見張りは堅・哲治がペアで二時間。その他がそれぞれ一時間づつである。未来は一番最後で午前四時から五時の間だ。
結局、夜中見張りを交代でしていたが、心配していた骨格標本の襲撃はなく、無事に朝を迎えた。
「これより、クレイバスに向け出発する。ジョン・守人は後ろを警戒し、その他は左右を警戒しろ。俺は前を見る」
明らかに昨日より遅いペースで歩く一同。六時間後、目的地のクレイバス村の正面入口に到着した。
「ひでぇな」
「……」
一言で言えば全滅。熊や猪から守るために作った村の周りを囲った柵は一部を残して木炭に。家や建物は良くて半壊、そのほとんどが原形を留めていなかった。そして村のあちこちには村人や村の自警団の遺体が散乱し、生存者は絶望的だった。
七人は全壊した村の中を慎重に進む。村人の遺体の他にも骨格標本達の残骸も散らばっている。村人や自警団が必死に抵抗した跡だった。
「ウャャャャ」
「グャャャャ」
「みんな気を付けろ。敵が近くに居る」
骨格標本の独特の鳴き声を聞き、すぐさま全員に指示を出す隊長。ここに全員が辺りを見渡し、警戒する。
「見てくださいあそこ。まだ生存者が居ます」
公司がこう言いながら指差す所をみると、外観はボロボロな一軒の家に数十体という骨格標本達が取り囲んでいた。そしてその骨格標本に向け、中から物を投げる人達を見えた。
「今、救出に向かいます」
「おい、勝手に一人で行くな」
公司は隊長の制止を振り切り、生存者が居る家に向かっていく。しかし、半壊した家の横を通り過ぎようとしていた時だった。突然、家から一本の槍が突き出してきた。あまりに突然でかわせぬまま直撃した。
「がぁっ」
槍は公司の心臓を貫き、そして燃えた。槍はすぐに引き抜かれたが、公司はその場に前向きに倒れていった。
「公司~」
隊長は名前を呼ぶが、応答はない。すぐさま駆け寄りたいが、公司の二の舞になるのを避けるため近寄れずにいた。
「コロス、コロス、コロスコロス」
半壊した家をさらに破壊して一体の骨格標本が出てきた。その骨格標本の手には公司を刺した槍が握られていた。つまり公司を刺したのはこいつである。
「強化骨格標本か!」
ジョンの一言に場がざわつく。強化骨格標本。それは先日ガンバイトシティで三人の命を奪った大剣の骨格標本。そいつも強化骨格標本だったからだ。
「化物がぁぁぁぁぁぁ」
守人が口と同時に投げたナイフが強化骨格標本の槍によって弾かれた。これが戦闘開始の合図だった。
次回予告
炎槍の強化骨格標本に立ち向かう六人。しかし、強化骨格標本の攻撃によって苦戦してしまう。さらに場には新たな敵が。そこに現れる意外な人物。果たして未来達は生存者を救出することはできるのか? 次週~クレイバス攻防戦(後編)~
※この作品は不定期連載です。




