閑話その時世界の人たちは6
side 迫夜
「これはやばいな」
これはまだ未来がタノマ地区に来る前日のこと。この俺、鬼堂迫夜は窮地に陥っていた。それは……家に帰れないことだった。
ガンバイトシティで一週間過ごし、その間に新しい必殺技は取得したが……まさか帰れなくなるとは思わなかった。
原因は何者かが、電波をジャミングしているせいだと考えているが、その所在を把握できなければ意味がない。そして今、俺はとある山小屋でジャミング装置を無効化させる機械を製作中だ。
もう約束の一週間はとっくに過ぎている。そろそろ帰らなければ未来あたりがやって来そうだ。そうなれば、最初にあの村に着くはず。あの惨劇を見て大丈夫だろうか……。
それから数日後、まったく成果が出ない。やはり材料が不足しているせいか。だめだ。二日も徹夜で意識が朦朧だ。意識が飛ぶ。
果たして何日くらい寝たのか寝起き早々にそう思ったが、すぐに一日も寝ていないと分かり安心する。テーブルの上の機械は俺が就寝中に触ったのか、全壊している。我ながら見事な腕である。
「グャャャャ」
「キュキャキャキャ」
その奇怪な音と同時に山小屋に骨格標本達が雪崩れ込む。手には半ば錆びている剣や槍を持ち、こちらに突撃してくる。
俺はまず、近付いてきた一体の骨格標本に疾風拳を浴びせ、ドアの外まで吹き飛ばす。途中、巻き込まれ一緒に吹き飛んだ骨格標本は三体。まだ二桁は居そうだ。
「グャャャャ」
「キシャシャシャ」
「ウャャャャ」
すると骨格標本達は全員で突撃を開始する。ならば新しい必殺技の糧にしようか。
「奥義、…………」
現在、目の前には山小屋の残骸がある。
(やべぇ、強すぎたか)
俺はそう思った。その様子を伺っていた人物が、この時居たがまたそれは別の話で……。
side ???
「ぐっ、こ、ここは?」
先程まで気絶していた若い女性が目を覚ます。牢獄から連れ出された若い女性は周囲の状況をキョロキョロし確認する。目の前には大の男でも破れそうもない鉄扉があり、壁一面には白く塗料が塗られ、床にはほこり一つ落ちていない部屋に居るのだと知る。
「手足が縛れているか!」
さらに自分が椅子に座らされ、手足を拘束されているのに気付く。よく見ると二の腕付近に注射の痕があり、その光景を直視した女性は強い不安感に陥って、顔を下に向けたまま黙りこくってしまった。
その時、女性の耳に渋く重い音が聞こえ、顔を上げると鉄扉が今に開こうとしていた。完全に扉が開くと、奥から一人の男が歩いてきた。
男の特徴は今にも眠ってしまいそうなほど大きい目の下のくまと着崩れした白衣を着衣していることだ。他は特になく、そこらへんにいそうなアラフォー世代な男性である。
「気分はどうです?【聖光】、いや、近衛ひかりさん」
「最悪の気分だ」
ひかりは暗い口調で答える。男はそれを気に止めずにさらに話を続ける。
「貴女の活躍はかねがね聞いていましたよ。例えばサイカイの癌と呼ばれた【雷電】を潰したとか、伝説のヒーロー【鉄】に弟子入りしたとかね。他にも…………」
男はひかりの過去の功績を次々と語りだす。その様子はまるで憧れているかのように。しかし、その中に憧れとは違う何かがあるのをひかりは感じ取っていた。
「ですが、十五年前突然の失踪。世間では死亡説が囁かれるくらいに」
「何が言いたい? 私をここに連れてきた目的は何だ?」
「これ以上はいいですね。まぁまぁ慌てないください。今からお話ししますから。……それはですね。貴女をーーするためですよ」
「はぁ~!?」
ひかりは男の目的に思わず口に出すほど仰天した。
「おっとそろそろ時間です。では準備が完了するまで再びお休みください。」
「やめろ。お前みたいな……」
男はひかりに注射器で眠らせようとする。ひかりも必死に抵抗するが、健闘虚しく再び眠りについてしまった。
※作者と時系列の都合により、本日予定していた話は次回へ持ち越しになりました。心からお詫び申し上げます。




