第4章第38話未来の平和なき冒険その6~未来の覚悟とジョンの決断(中編)~
(さて、どこから話せばいいかな。この雰囲気を早めに変えないと……)
再び無音な空気に包まれた場。隊長はその空気を切り裂き長くなるであろう話を始めた。
「今から三十年前の話だ。南歴に直すと千九百六十年代半ば。時は【デスインセクト】が猛威を奮っていた時代。俺の故郷であるこのタノマ地区では嬉しいことに【デスインセクト】による被害は最小限で、当時の俺もこの組織の名は知らなかったくらいだ。だからと言って平和だった訳じゃない。そいつらの代わりにヤクザ、ギャング、マフィア、荒くれもの集団といった奴らが裏社会に蔓延っていた。しかし、そいつらも年々勢力を衰えさせていった。この時、タノマ地区の人々は陰で喜んでいた。だが、俺達は気付くべきだった。タノマ地区は元々他の地区よりヒーローが少ない。なのに裏社会の支配者達はどんどん姿を消していった。なぜだか分かるか?」
隊長からそう聞かれた未来は、おそるおそるこう切り返した。
「それは……もしかして全員【ボーンレイド】の骨格標本に?」
「理解が早くて助かる。その通りだ。年々減り続ける裏組織に対し、一つだけ勢力を拡大させた裏組織があった。そう、それが【ボーンレイド】だ。あいつらは弱小組織から飲み込んで、少しずつ裏社会を制圧していった。恐ろしいのはそれだけじゃない。【ボーンレイド】によって骨格標本にされた者達は、プレイバーと呼ばれるリーダーとその部下である四幹の命令に絶対に背かない。骨格標本の外見を持つが故、民は畏れパニックになったものも少なくない。タノマ地区の民が気付いた時にはもう手遅れだった。その数、三十万。一人当たり大の大人八人と渡り合える戦闘力を持つ。そのため、タノマ地区の人工に換算すると、数だけなら3%程度だが、実質はこれよりも上なのは確かだ」
この時、未来は冷静に話を聞いていた。実は人が異形の化物になる話はサイカイ地区の住民はほとんど知っている。勿論、それはサイカイ地区で教育を受けた優理や理佐も知っている事実である。
それに比べ、タノマ地区では交通網の悪さから、タノマシティにある学校に通えない子供も多く、隊長は未来が学校に‘行っていない’という前提で話をしていた。
余談だが、隣接のテレイ地区ではこの話は一応伝えられてはいるが、三地区で一番治安が良いため忘れている人も少なくない。
「次にジョンと出会った時の話をしよう。あれは……」
この後、隊長は一時間ぶっ通しで喋り続けた。まるで、校長先生の長~いお話しレベルである。元来、人間の脳は人の話を三分以上聞くと、集中力がなくなることが分かっている。未来も例外なく、三分を過ぎた頃から、飽き始めていた。
ちなみに話の内容を詳しく説明すると、隊長がジョンと始めて会ったのは二十四年前、今は亡き北の港町の浅瀬で一隻の客船が座礁し、この際中に居た人の一人がジョンだったそうだ。隊長はその時漁師だった父に連れられ、その客船に行く。そしてジョンと出会った。これら以外の話しも沢山あるが、ここでは割愛させてもらう。
この様子を外から眺めている人物がいた。ジョンである。
「ばかやろう! こっちにまる聞こえだろうが」
ジョンはテントの外に特設されてある椅子に腰をかけながらそう言った。




