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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第4章タノマ地区編【壱】
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第4章第36話未来の平和なき冒険その4~次郎は見た。○○を~

 「ふぅ~、ふぅ~」


 未来が露天風呂に行った頃、深い山奥で次郎は怪我した左手を押さえながら、ふらふらと歩いていた。昨日の夜以降、下級の強化骨格標本(ハイスケルトン)と続けざまに五戦連続で戦い、身も心もボロボロになり、休息場所を探すために山奥を歩くことになった。


 「やっぱりあったか」


 歩き回っていると、前方に寂れた山小屋が建っていた。次郎は中に誰も居ないか、恐る恐るドアに近づいていく。静かにドアノブを握り、一気にドアを開けた。


 次郎は中の光景を見て、茫然としていた。ここの山小屋は扉を開けてすぐの場所に、木製の長方形のテーブルが置いてある構造になっている。そこに怪しい機械とテーブルに上体を倒して寝ている男が居た。


 ここは深い山奥であり、周辺に民家は一軒もない。さらに、登山にしてみれば男の格好は軽装で、登山用の荷物すら所持していなかった。そんな怪しい男を次郎は起こそうかと思ったが、途中で止めた。そして山小屋を出ていった。


 次郎が出ていった数分後、テーブルで寝ていた男が目を覚ました。もちろん、次郎は知らない。ここで寝ていた男が二日前に行動を共にした未来の探し人であることを。







 「フンフーン~♪」


 未来は鼻歌を歌いながら露天風呂に入っていた。ここの露天風呂は三つあり、その中でも一番グレードの高い松の湯に来ていた。流石に昼過ぎだったので、松の湯には誰も入っていなかった。


 「露天風呂は気持ち良かったか?」


 「はい」


 部屋に帰ると、ジョンは何か身支度をしてどこかに行こうとしていた。


 「どこかに行くんですか?」


 「ちょっと街を見に行く。未来ちゃんは待っていてくれ」


 そう言ってジョンは松の間を飛び出していった。一人になった未来は再度、瞬間移動マシンを使って家に帰還しようと試みるが、家に帰還することは叶わなかった。


 一時間後、突然、轟音が鳴り響いた。未来はすぐさま窓の外を見てみるが、兵士達が走って壁に向かっているのは察知したが、肝心の轟音の正体は不明。一時間前に出ていったジョンはまだ戻っていない。勝手に行動すれば、ジョンに怒られることは確実。未来はジョンの安否を心配しながら部屋で待機することを決断した。


 二時間後、轟音が止まり、街は静寂に包みこまれる。しかし、まだジョンは戻ってこなかった。その時、部屋の扉が開いた。


 「お客様、避難してください。こちらの誘導に従って下さい」


 部屋の扉を開けたのはジョンではなく、女将さんであった。未来はただならぬ雰囲気を察知し、女将さんの指示に従うことにした。


 未来が外に出たとき、轟音の正体が判明した。町の北側の壁上に並べられた複数の砲台が配置されていた。そして、壁の外側からは黒煙が上がっており、二時間の間に壁の外に向けて放っていた証拠になっていた。


 「お客様、こちらです」


 女将さんの誘導のため、未来は町の北部に行けず少し不満になりながらも避難先である地下シェルターに着いた。


 未来はその地下シェルターの中で一晩を過ごした。地下シェルターは何十ヶ所にも配置されているため、中はそこまで人が居なかった。そのためスペースが空いていて窮屈な印象は感じられなかった。


 一晩が経ち、情況が次々に分かってきた。第一に昨日の昼過ぎごろに北門の詰め所に一人の男が駆け込んできた。その男を追って、骨格標本(スケルトン)の群れがここ、ガンバイトシティになだれ込んで来たのだった。その数、数百。ただ事でないと勘づいた北門の兵士はすぐさま街の兵士達を呼び、門に設置してある大砲で骨格標本(スケルトン)を迎撃した。


 そこまでは想定の範囲内で済んだ。しかし、状況はとある強化骨格標本(ハイスケルトン)が来襲してから一変した。その強化骨格標本(ハイスケルトン)は飛んできた大砲の玉を持っていた大剣で斬っていき、ものすごい速さで移動し、門に大剣を叩きつけていった。


 その攻撃は苛烈なものだった。過去十八年間、無傷を保っていた特殊金属の壁に大きな傷跡を付けたのであった。その後、直角な壁を登り、頂上に居た兵士達を斬り始める。被害は死者三名、負傷者八名にも上った。


 それを起こした犯人、強化骨格標本(ハイスケルトン)は壮絶な死闘の末に倒された。倒された際、全身の骨は切断され、頭蓋骨は陥没し、大剣は折られ、それでも周りに居る兵士達に殺意を向けながら、最期を迎えた。


 次々に伝えられる情報の中に安否を心配していたジョンの情報もあった。ジョンは強化骨格標本(ハイスケルトン)の現場に居て、今も被害状況の確認に追われているらしい。未来は我慢してもう一日シェルターで過ごすことも考えたが、元来、未来の性格は考えるよりも行動するタイプの人間であり、今まで未来を引き留めていたのは迫夜の存在があったからである。


 しかし、この状況と迫夜の失踪によって、未来は迫夜に出会う前の未来に戻ってしまっていた。未来はシェルターに居た兵士の制止を振り切って、ジョンの居る街北部の方向に駆け出していった。





 その頃、未来のことも忘れるくらいジョンは物事に追われていた。まず、強化骨格標本(ハイスケルトン)の攻撃で亡くなった兵士三人の遺体に白い布をかけ弔う。亡くなった兵士の中にはまだ若い人も居て、周りの兵士達は沈痛な表情しながら、作業を続ける。もちろん、この現場に笑ったりしている人など居ない。


 「ジョンさん。隊長がお呼びです」


 「分かった」


 ジョンは後の作業をこの場に居る兵士達に任せ、隊長が居る対策本部のテントに向かう。


 「ジョン、もう一つ仕事を頼めるか?」


 ジョンがテントに到着すると、休憩する間もなく隊長に声をかけられる。それはジョンへの新たなる仕事だった。


 「その内容は?」


 「ここよりも北の町、セレンションに今すぐ行ってくれないか?」


 ジョンは隊長の言葉の意味をすぐに理解した。状況が最悪の方向に進んでいることを。


 「了解した」


 「恩に着る」


 ジョンがテントを立ち去ろうとした時、遠くの方から見知った声が聞こえた。


 「ここからは立ち入り禁止です」


 「ジョンさんに会わせてください」


 いつの間にか2万PV越えました。ありがとうございます。

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