第3章第31話【恐怖の時間】最期の抵抗 後編
第3章完結
「「「変身」」」
未来・優理・理佐は戦闘服にチェンジし、
『脚跳キック』
『雷中斬撃』
『刈衣』
必殺技を球体関節人形達にぶつけていった。
「未来、俺は隙をついて基地の中に入り込む。未来はこの事をみんなに伝えてくれ。いいか。絶対敵の耳には入れるなよ」
「はい」
三分後、未来達はキューラ以外の全ての敵を倒し、キューラの四方を囲んでいた。
「ウフフ、それで私も囲んだつもり」
迫夜はキューラが未来達に包囲されている間に、キューラが出てきた一軒屋の中に気付かれずに入るのに成功する。
中に入った迫夜は生活用品に偽装させていた基地へ通じる地下通路のボタンを発見し、スイッチを押した。そして、現れた地下通路を下りていった。
迫夜がアジトに侵入する少し前、アジトの最深部では【恐怖の時間】の首領が下僕の球体関節人形を護衛につけ、ある人物と会っていた。
「久しぶりだな。――」
「ああ、あの時以来だ」
「お前の顔の傷があの時の戦いを思い出させる」
「もう過ぎたことだ。いい加減忘れろ」
ある人物とは、バナードの基地でバナードとその一味を虐殺していた、顔に大きな傷跡があるあの男だった。
「お前からやってくるとは錦の差し金か?」
「そうだ。近々組織を復活させるらしい。だから廊餓も来てほしいとのことだ」
「そうか。残念ながら錦の所には行けないな」
「なぜだ?」
「もう錦の考えには賛同できない。」
「そうかい。なら……死んでくれ」
「!!!」
【恐怖の時間】の首領は体に強烈な痛みを覚えたあと、すぐ地に伏していった。その際、自分の体を確認した首領は心臓から溢れる大量の血とアジトの壁に刺さった血塗れの剣を見て、状況を察知した瞬間意識を失い、二度と目覚めることはなかった。
「悪いな。あの時代を知るものは少ない方がいい」
顔に大きな傷跡がある男は首領が死んだのを見届けると、どこかに行ってしまった。首領の傍らに無残に切り裂かれ、機能を停止した球体関節人形達を残して――。
「一人だけ変身出来ないなんて滑稽ね『恐怖の鞭』」
「ひっ」
キューラは一人変身しない琴美を狙い、得意の鞭で攻撃を仕掛ける。
『地烈』
「なにっ!」
しかし、キューラの鞭は理佐が地面から空中に放った大鎌によって防がれてしまった。それどころか大鎌が接触した部分から真っ二つに切断されていた。
「よくも私の愛用の鞭を駄目にしてくれたわね。もう容赦しないわ」
「最初から本気だっただろうが」
「あら、そうだったかしら」
キューラは使い物にならなくなった鞭を放り投げ、着ていた黒いブラウスの中から新しい鞭を取り出して、理佐へ飛びかかりながら鞭を振り落とした。
『惨殺の鞭』
「くっ」
「まだまだ攻め足りないわぁ~」
キューラの猛烈な攻撃の前に理佐は劣勢に立たされていたが、
「隙あり『雷虎迅閃』」
「隙あり『炎気拳』」
「ちっ」
横から割り込んできた未来と優理によって、形勢は次第に未来達へと傾いていた。
「面倒くさくなってきたわぁ~」
「じゃあ、どうするつもり」
「フフフ、こういうつもり『砂隠』」
「しまった!」
キューラは自分が不利なのを悟り、未来達を欺いて地面を攻撃し、舞い上がった砂煙の中に自分の姿を隠した。
『炎気拳』
『雷中斬撃』
『地烈』
「なっ、居ない」
未来達は砂煙の中に向かって攻撃を行うが、中はもぬけの殻になっていてキューラの姿はなかった。
『弾射』
「つぅぅぅぅ」
その時、未来達の後ろで銃弾の音が響いた。振り返ると秘密基地に繋がっている一軒家の出入口の前でキューラが肩を押さえてしゃがんでいた。
「もしかして琴美が撃ったの?」
「はい。家の中に逃げようとしていたので」
「琴美。でかした。後は」
キューラを撃ったのが琴美だと判明し、今がチャンスと捉えた理佐は即座に接近して大鎌で切りつける。しかし、理佐の攻撃は外れ、一軒家の外壁に大きな傷をつけた。キューラは間一髪でかわし、秘密基地へ足早に駆け込んだ。
「まてっ」
未来達もキューラの後を追い、【恐怖の時間】の秘密基地に入っていった。
先に秘密基地に入った迫夜は目の前の光景に驚き、ただただ茫然としていた。迫夜の目の前には五十代くらいの男が心臓から大量に出血し、絶命していた。男は半分白髪になり、顔には気味の悪い仮面をしていたことから、迫夜はこの男が【恐怖の時間】のボスだという結論を下した。
「致命傷になったのはあの剣で心臓を一突きにされたからか。状況を見る限り即死だな」
迫夜はボスの死因を推測して、先ほどまでボスが誰かと会っていて、その誰かに殺害されたと推理した。
「さて、これからどうするか」
迫夜はここに来た目的である【恐怖の時間】のボスの撃破が不可能になり、途方にくれていた。
「先にやってきたのはAMー1ではなく鬼堂の息子の方か」
「お前は」
迫夜は後方から声を掛けられ振り返ってみると、そこには前に一度遭遇した顔に大傷のある男だった。迫夜はその男の気配すら感じ取れなかったため警戒心を露にする。
「バナードの基地で会った以来だな」
「なっ、やっぱりバレていたか」
「当たり前だ。あの程度の技術で俺の脳は欺けんぞ」
迫夜はバナードの基地で出会った時のあの気迫を思い出し、男に対して何も出来ないでいた。二人の間にしばしの沈黙が流れた。
「俺はお前に会いに来たのでない。お前には聞こえないか。ここに向かってくる足音を」
男の言う通り、辺りには誰かがこっちに走って近付いてくるような音が響き渡っていた。迫夜はその足音が未来達だと分かったが、真正面に居る得体の知れない男から目を離すことが出来ず、その場に立ち尽くしたままだった。
「ここで来るまで待つか。俺もやることあるんでな。ここで待たせてもらう」
「……」
間もなくキューラ、そしてキューラを追いかけている未来達がやって来る。そして、倒れて既に息を引き取った【恐怖の時間】の首領の姿を目の当たりにした。
「首領、首領」
「残念だがそいつはもう死んでるよ」
まだぬくもりが温かい首領の体に駆け寄り、懸命に声を掛け起こそうとするキューラ。だが、首領の死を必死に認めようとしないキューラに冷酷に事実を伝える男。
「お前が殺ったのか?」
「ああ、そうだ」
「ぶち殺す」
形相を変え、男に向かって突撃していくキューラ。しかし、放った鞭はかわされ、男は背中に背負っていた剣で鞭を紙にようにズタズタに引き裂いてしまった。
「何っ」
キューラが一瞬呟いた瞬間、男の姿が視界から消えてしまう。
「ここだよ」
「後……うっっっっ」
キューラが後ろを覗いたと同時に男はキューラの首を絞め始めた。男はキューラの一瞬の隙を見逃さず、その間を使ってキューラの背後に移動していたのである。この男のやった行為は遠くで見物していた迫夜しか把握出来なかった。
「AM-1お前には破壊命令が出ている。」
「うっっ、私はキューラだ。AM-1なんかじゃない。」
男は右手でキューラの首を絞めて動きを封じ、左手で止めを刺そうとしていた。
「師匠!」
「おおぅ、思い通りにはさせねぇぞ。」
そこに迫夜が阻止しようと男に駆けよろうとしたが、突然迫夜の右手から血が吹き出し、あまりの痛さに地べたに座り込んでしまった
「がっ」
「えっ、一体何が起こったの?」
「あいつには指一本触れていないぞ」
理佐の言う通り、迫夜は男に指一本触ってもいなかった。しかし、迫夜の右手には剣による刺傷の跡があった。
「どうやら何があったか分からないようだな」
「……」
迫夜は顔をしかめながら男を睨み付けていた。
「それはさっきお前が扉を振り向いた時に俺が攻撃を仕掛けておいた。こういう状況に追い込まれた時を見込んでね」
「そんなぁぁ」
「ちっ、それで俺はお前の策略にはまってしまったということか」
男の説明を聞き、改めて自分の非力さを知った迫夜。迫夜及び未来達は、今の状況が最悪なものだと分かっていたが、形勢をひっくり返せるような手段は持っていなかった。
「あぁぁぁぁぁぁ」
更に男はキューラのみぞおちに一発入れる。するとキューラの体の中から薄い緑色のフワフワした物体が出現した。男はそれを確認した後、すぐに左手で掴んだ。そしてキューラの首から右手を離し、迫夜の方に向けてきた。その間、キューラは男の呪縛からは解放されたが、手を離された瞬間にボトッと倒れていってしまった。
「俺の仕事は終わった。じゃ、また会おう。運命の赴くままに」
「逃がしはしないぞ『二類突風拳』」
迫夜は負傷した右手ではなく左手を使って男に殴りかかるが……。
「まだ遅いな」
男には回避され、そのまま逃げられてしまった。
「くそぉぉぉぉぉ」
迫夜は悔しさを露にして拳を地面に叩きつけた。その光景に未来達は割って入ることなど出来なかった。
「まだ生きてますよ。この人」
突然、琴美が叫ぶ。内容を聞いた迫夜はすぐさまキューラの側に行き、脈を調べる。すると、琴美の言った通り脈は正常に動いていた。
「俺の早とちりだったようだ。でも……」
迫夜はそう言って立ち上がり、無言のまま瞬間移動マシンを起動させ帰っていってしまった。残った未来達もキューラに最低限の治療を施し、瞬間移動マシンで【恐怖の時間】の秘密基地を後にしたのであった。




