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悪の首領(ボス)の世界征服術  作者: 黒牙 透
第3章テレイ地区編【壱】
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第3章第29話細雪自然公園の乱・完+莉佳、学校に行く

 優理達が覚醒して人体模型を撃破した頃、迫夜はというと。


 「どこに消えた」


 迫夜は戦闘中、隙を突いて逃走した葛形孝を追跡しに公園の奥部にやって来たが、途中で姿を見失ってしまう。

 それどころか周りは深い森の茂みに覆われ、現在地も分からなくなっていた。


 「残念ながら私の姿を見つけられて無いようだな。そして、ここは私のテリトリー。貴様の勝率は0だ」


 森のどこからか葛形の勝ち誇った声が聞こえ、迫夜は付近を見るものの、姿を捕らえることは出来ない。


 「よく集中して周りを見るんだ」


 迫夜は目を(つぶ)り神経を集中させながら、辺りを警戒する。


 「どうした? 素直に負けを認めたか? なら潔く散らせてやる」


 迫夜は接近してくる葛形に気付かない。しかし、葛形が迫夜の背後まで五十メートルに迫ったときだった。


 (見えた。背後を狙うつもりか)


 葛形の気配に気付いた迫夜は、敢えて気付かないふりをして、ぎりぎりまで接近してくるのを待った。


 (残念だったな。この勝負もらった)


 葛形が迫夜の背後に襲い掛かろうとしたとき、迫夜が急に後ろを振り向き、


 「見破ったぞ。葛形〜『豪風拳』(ゴウフウケン)」


 『チャンピオンビー


 渾身の一撃を叩き込んだ。迫夜の周囲の茂みの草花まで吹き飛ばすほどの拳は葛形の腹部を直撃し、直線上にぶっ飛んでいった。ぶっ飛んた葛形は姿を現しながら茂みの中に落ちていった。


 「いっ、さっき刺されたのか」


 迫夜は手に痛みを感じて見てみると、右手の甲に小型の剣が刺さっていた。迫夜はすぐに剣を抜き、その場にでも捨てようしたが、一般人の立ち入る場所に放置しておくのも危険なので、取り敢えず腰に差しておくにした。


 「あっ、師匠大丈夫ですか〜」


 数分後、迫夜が休憩していると遠くから未来達がやって来る。未来・優理・理佐・桃・由奈は既に変身を解除し、いつもの格好をしていた。合流した迫夜達は状況の確認をする。


 「それで二人は変身できるようになったと」


 「「はい」」


 「じゃ、桃・由奈そこに倒れている葛形を頼む。いつの間にかここを包囲されたようだ」


 「「「えっ」」」


 「未来は気付かなかったの?」


 迫夜の言うとおり、細雪自然公園の周辺には百人を越える、ヒーロー支援団体に所属する隊員が突入のチャンスを今か今かと待ち望んでいた。


 「もしかして私達の存在がばれたんですか?」


 「いや、それはない。多分、さっき操られて出ていった人達がヒーロー又はヒーロー支援団体に見つかっただな。」


 未来の心配する声に冷静に対応する迫夜。迫夜達は長居は危険と判断し、桃・由奈に別れを告げて細雪自然公園を去った。

 この時、森の茂みから迫夜達を見つめる何者かが居たが、迫夜を含め誰一人気付くことはなかった。


 「あれが鬼堂迫夜か。バナードの基地に居たときよりは強くなっているようだ」


 迫夜達を見ていた何者かは独り言をブツブツ言った後、どこかに姿を消してしまう。

 その後、ヒーロー支援団体の隊員が突入に気絶していた葛形を連行していった。更に、壊れてガラクタになった人体模型や球体人形を片付け始めていった。

 家に帰った迫夜達は戦闘で受けた傷や疲れで、迫夜を除いて全員がすぐに寝てしまう。迫夜も風華と雑談した後、自分の部屋に閉じこもって、そのまま朝まで出てくることはなかった。




 翌日、一番早く起きたのは優理だった。優理は起床してすぐ愛剣を取り出し、家の外に出る。そして、剣を両手に持って素振りを始めた。

 次に起きたのは理佐だった。理佐も優理と同様に大鎌を持って、外に飛び出して素振りをやり始めた。


 「優理先輩、理佐さんこんな早くから修行ですか? 感心します」


 未来が朝の修行のため外に出ると、素振りを行っている優理と理佐を発見する。未来も二人の横で朝の修行を始める。


 二時間経ち、朝のトレーニングを終えた未来達は家の中に入る。風華が朝食の用意をしている中、三人はお風呂場にあるシャワーで汗を流す。そのあと、すぐに体を拭き、リビングに行くと未来達を除く全員が集まっていた。


 「おはよう♪」


 「「「おはよう」」」


 未来達に向かって挨拶をした琴美は気分がいいのか上機嫌だった。なぜ

機嫌がいいか分からない三人は琴美に聞いてみることにした。


 「琴美、何かあったの」


 「えっ、特にないよ〜」


 「どう見ても何かあった顔をしてますよ」


 「顔に出てるの?」


 「琴美のことは何でも知ってる私から見て……うん何か嬉しいことがあったという顔をしている」


 ((何でも知ってるって……))


 理佐に一抹の危険を感じた未来と優理。それはさておき琴美は上機嫌な理由を三人に話す。


 「お母さんが明日から先生になるんだよ」


 「「「???」」」


 「あれ?」


 「琴美。それはどういうことですか」


 「それは私が教えよう」


 三人は突然声をかけられて振り向くと、そこには三人を指差して仁王立ちした莉佳が居た。


 「私は明日からテレイシティのテレイ地区営第一学校の教師になるということだ」


 「「「えーーーー」」」


 莉佳の突然の吐露に三人の驚愕の声が家中に響き渡った。


 「じゃあ、莉佳さんはここを出ていくんですか?」


 「どうしてそうなったのですか?」


 「琴美も連れて行くんですか?」


 「三人で一斉に話されても聞き取れないぞ。一人ずつ話してくれ。」


 未来・優理・理佐は同時に莉佳に質問するが、到底莉佳が聞き取れるはずもなく、一人ずつ話すことになった。


 「莉佳さんはここを出ていくんですか?」


 まず、莉佳に質問権があったのは未来だった。


 「いや、学生は全員寮に入らなくてはいけない校則があるようだが、先生は寮に入らなくてもいいそうだ。私は自宅(ここ)通いだから出ていかない」


 「良かった」


 莉佳から直接「出ていかない」と言われ、ここを出てもう会えないんじゃないかと、考えていた未来はホッと胸を()で下ろした。


 「では次の質問いいですか。どうしてそういう状況になったのですか?」


 次に質問権を得たのは優理だった。


 「経緯か……。迫夜には悪いと思うが、ここの設備じゃ私の研究は満足に行えないのだよ。だから設備が整ったテレイ地区営第一学校で研究を再会したいという訳だ」


 「そういうことでしたか」


 莉佳に事情を説明され、頭を頷いて納得する優理。


 「最後になりますが、琴美も連れて行くんですか?」


 最後に理佐が質問する。


 「私のことじゃないか。――琴美は連れて行かない」


 「良かった」


 的外れな質問に苦笑しながら答える莉佳。それに対し、「琴美を連れて行かない」と言った瞬間、ガッツポーズをしながら喜ぶ理佐。


 「他に聞きたいことはある?」


 「特にありません。」


 「もう何も」


 「琴美と別れなく済む」


 「ではこれから準備があるのでな。私は失礼するよ。あっ、あと学校内では男の方だから莉佳と呼ばないでくれ」


 莉佳はこう言って、階段の方へ行ってしまった。未来達も別の世界に消えた一人を除いてバラバラに去った。

 数分後、別の世界から帰ってきた理佐が周りに誰も居ないことに気付き、琴美を探しに二階に上がった。

 その後、未来達はいつも通りの生活を送り、今日という一日を終えた。




 次の日の早朝、迫夜達は今日から教職員になる莉佳を見送るため玄関に集合した。


 「見送りありがとうございます。それでは行ってきます」


 「「「行ってらっしゃい」」」


 迫夜達は瞬間移動マシンで消えていく莉佳に手を振り続けた。莉佳が居なくなるを確認した迫夜は、


 「見送ったのはいいが、今日の夜には戻ってくるんだよな……」


 誰にも聞こえない小さな声でブツブツ言った。

 テレイ地区営第一学校に行った莉佳はこのあと、この学校に桃と由奈が在籍しているを知り、驚いたことはまた別の話である。





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