第3章第28話葛形 孝同情を買う。(少女達の覚醒)
「悪く言うなって言われても実際悪いんですしね……」
「くっ」
優理に止めを刺され何も言えなくなる葛形。
「えいっ、ならば、お前らに教えてやる。私の正体を」
「恐怖の時間の三大幹部の一人葛形 孝でしょ」
葛形が正体をばらす前に、台詞を奪って正体を見破る桃。大事な所を全て取られた葛形はあまりのショックを受け、その姿を迫夜達の前に晒してしまう。それによって葛形が時計台の上に立っていたことが判明した。
「ピエロの格好をして、かっこつけたつもりですか?」
「うぅぅ」
精神的に参っている葛形に容赦なく罵声を浴びせる優理。
「よ、よくも、わ私を、ぶ侮辱してくれたな」
「私は正論を言ったまでですよ」
「優理。もう止めろ。」
葛形は必死に粋がって反論するが、涙声によって全てを台無しにしていた。
一方、葛形に更なる(言葉の)追撃を浴びせようとした優理だったが、葛形に同情した迫夜によって止められていた。
「こ、こうなったら。とうぉ」
葛形は時計台の上から回転しながら飛び降りて、地面の上に華麗に着地した。先ほどまでと違い、かっこよく決めたことで迫夜達は感心していた。
「葛形孝。お前らを倒しに来た」
「ぷっ」
「ふふ」
葛形はかっこよく決めたつもりだったが、迫夜達は葛形の姿を見て、笑いをこらえるのに必死だった。
何しろ、葛形の今の格好は頭に左右で色が白黒に分かれたジェスターズキャップを被り、白塗りされた顔、帽子と同じ白黒に分かれた服、誰がどう見てもピエロにしか見えない姿で、真面目なことを言ったら周りが笑ってしまうのは当然のことだった。
「笑っていられるのを今のうちだ。出てこい。我が専属下僕勝てるぞくん一号」
葛形の後ろに突如、体長ニメートルの人体模型が現れる。
「勝てるぞくん一号あいつらを叩きのめせ」
「ピピピ」
葛形が指示すると人体模型は気味の悪い機械音を出しながら迫夜達に迫ってきた。
「ピーピピー」
「えっ、私?」
人体模型が最初に標的にしたのは琴美だった。人体模型は細長い腕を勢いよく琴美にぶつけようとした。
「そうはさせねーぞ。」
しかし、人体模型の攻撃は琴美には当たらず、理佐の大鎌に弾かれていた。
『弾射砲OP-1』(ダンシャホウ・オーピー・ワン)
琴美の銃から放たれた弾丸が理佐の横を通り、人体模型の方へと向かう。そして人体模型の額を貫くと思われたが、人体模型そのものが固い物質で出来ているのか、琴美の弾丸は額に傷をつけた程度だった。
「休憩してる場合じゃねぇだろ葛形孝『疾風拳』」
「普通なら私の下僕を倒してから私と戦うのが常識じゃないのか?」
迫夜は人体模型の相手を未来達に任せ、一人で葛形の所に行った。そして木陰で休憩していた葛形を見つけ、攻撃をしたが、あと一歩のところでかわされてしまう。
「桃、早くあの人体模型を倒して迫夜さんを援護しなきゃ」
「分かってるよ」
「ハァァァ、ハアアア」
「タァァァァー」
「ピピピピピ」
「うああああ」
「きゃああ」
桃と由奈はそれぞれ人体模型に攻撃を加えた。だが、人体模型に近づきすぎたため人体模型の腕の攻撃をまともに喰らってしまう。
「桃、由奈、『雷中斬撃』」
「ピピ」
傷ついて膝を地面につけた桃と由奈に、追撃をかけようとした人体模型だが、優理に後ろから斬られて注意を優理の方へと向けた。その間に桃と由奈が人体模型の攻撃範囲から離れる。
「ピピピ」
その時だった。人体模型の目が赤く光り、次の瞬間、空中に優理が吹き飛ばされていた。
「があっ」
「ピピピー」
「優理さん危ない〜」
『刈衣』
空中に居る無防備な優理に追い討ちをかけようとする人体模型。しかし、理佐のとっさの攻撃で優理はダメージを負うことはなかったが……
「ぐはぁぁぁぁ」
「理佐さん〜」
人体模型の攻撃対象が理佐に変わり、素早い攻撃が理佐に直撃し、理佐は吹き飛ばされ公園に植えられていた木に衝突して止まった。
「ピピピ」
『ハートブレイド』
『炎氷球』(ファイブリザーボール)
桃と由奈が攻撃する。だが、人体模型は二人の攻撃を避け、
「ピピピピピピ」
「「きゃぁぁぁ」」
二人に向けて足蹴りをした。桃と由奈は人体模型の足蹴りをかわすことは出来ず、背部に当たりそのまま地面に伏してしまう。
「優理さん」
「……」
琴美は空中から落ちて倒れている優理に駆け寄り声をかけるが応答はない。
「ピピピ」
人体模型は周囲をキョロキョロし、立っているのが琴美だけだと確認にすると、琴美を標的としたのか琴美の方にじわじわ近づいていく。
(はっ! 琴美? 後ろから人体模型が……早く伝えないと――うっ体が……)
優理は意識を取り戻すが、人体模型から受けたダメージによって体が動けなくなり、更に声を出すことも出来なくなっていた。
(琴美、早く逃げて。私が不甲斐ないばっかりに……)
優理は頭の中で自分の非力さを呪った。
(そう言えば最近、春ちゃんと遊んでばっかりで修行怠けてたっけ。ちゃんと修行を怠らずにしていればこんなことには……。)
優理は更に前回のキューラ戦のときの自分、そしてヒーローだったあの日々を思い出す。
(あの時もそうだった。私は何も出来なかった。ヒーロー時代の私はリーダーを支えるため必死で特訓してたんだっけ。力が欲しい。誰かに助けて欲しい。私の物事が都合良くいこうさせるこの頭を直して欲しい。欲しいとしか思わない自分に嫌気が差す)
『力が欲しいか人間の少女よ?』
(誰? ――いや、ただの力なんて欲しくはない)
優理は頭の中に突然響いてくる謎の声に自分の思いを伝える。
『何故だ。あれほど欲しい欲しいと思っていたではないか?』
(確かに私は欲しい欲しいと思った。たが、それは人を守る力だ。ただの力に興味はない)
『人を守る力とただの力に何か違いがあるのか?』
謎の声の質問に優理は黙々と答える。
(違う。ただの力は人を傷つける力、人を守る力はその言葉の通り人を守る力よ)
『我にはどっちも同じにしか見えないがな。でも、少女よ。少女の思いは伝わった。人を守る力か……。我にはその力を与えることは出来ない。何故って? 我が与える力は少女次第によって人を守るか傷つけるか変わるのだからな。それでも欲しいか力が?』
優理は謎の声の質問に対し、迷うことなく言った。
(欲しい)
『ならば立つがよい。立てば、少女の人生は変わるだろう』
優理は謎の声を従い、動けなくなっていた体に鞭を打ってなんとか起き上がる。起き上がった瞬間、優理の体に変化が現れる。
まず優理が着ていた全ての衣服が消え、裸姿になる。
そしてどこから現れたのか分からないが、青のパンツを装着され、その上に青いワンピース風の戦闘服が着せられる。
更に黒いエナメルのロンググローブをはめられ、腰には黒を基調したベルトがつけられ、腕と同じ黒いエナメルでできたサイハイブーツを履かせられた所で変身が完了した。
「優理さん?」
「ピピピピピピ」
「えっ!」
琴美が人体模型が接近してくるのが分かったが、時既に遅し、人体模型が腕を広げて突撃していた。
『雷虎迅閃』(ライコジンセン)
その時、人体模型に青白い雷が流れた。この青白い雷の正体は優理が放ったものだった。よく見ると優理の剣に纏った電気は、通常の黄色い電気ではなく青白い稲妻のような色をしていた。
「ピピピ」
「まだ動けるのですか」
人体模型は全身が雷によって焼け焦げていたが、目の前に居る優理に次の攻撃を仕掛ける準備をしていた。
一方、時は少し遡り、理佐が人体模型の攻撃を受けて吹き飛ばされた直後のこと。
「頭がもうろうとするぜ。くっ、体が思うように……」
理佐は体を起こすが受けた傷が酷く、歩くことは出来ず、自分の意思とは関係なくうつ伏せに倒れてしまう。
(このまま死ぬのか? 頭の中に何かが?)
理佐の頭の中に何かが流れていた。それは人生の走馬灯だった。
(こんな所で死んでたまるか。もう一人じゃねぇ。私が死んだら誰が琴美を守るんだ)
理佐はもうろうとした頭で立ち上がろうとするが、立ち上がることは出来ない。
『ははは、無様だな』
理佐の頭に不意に謎の声が聞こえてくる。
(誰だ。貴様。私を笑うな)
『「私を笑うな」だって、ははは、ほんとお前は滑稽だ』
(貴様。どこに居る。切り刻んでやる)
『出来るのか? その体で』
謎の声のいうとおり、今の理佐は敵と戦えるような状態ではなかった。
(くっ、こいつを切り刻む力が欲しい)
『敵は僕か? 違うだろ。お前の敵は……分かってるだろ』
(つくづく頭にくる野郎だ。でも……私の敵はお前じゃねぇ)
『話は変わるが、お前はさっき力が欲しいと思ったな。力欲しいか?』
(ああ、あの野郎(人体模型)を一撃で葬るほどの力が欲しい)
『じゃあ、僕に跪け』
(てめぇ、調子に乗りやがって)
『いいのか? 僕に時間をとられている間に、お前の大切な人が酷い目に遭うぞ』
(大切な人? 未来か? 優理か? 桃か? 由奈? まさか琴美か?)
『さあ、自分の目で確かめればいいことだろ。もっとも、今のお前には無理だがな』
(ちっ、分かったよ。私に力を授けてください。お願いします)
『聞こえないなぁとか言って、何回もやらせる畜生とは違い、僕は優しいからな。いいぜ。力を与えてやるよ。立てればの話だがな』
(てめぇも充分、畜生じゃねぇか。意地でも立ってやるよ)
理佐は無理矢理体に力を入れ、体を起こし立ち上がった。
『約束通り与えてやる。受け取れ』
謎の声が理佐の頭の中に響き渡った後、理佐の体に変化が現れる。
未来や優理と同じように着ていた全ての服が消え、裸姿になる。そして、どこからきたのか不明だが、黄色いパンツを装着され、その上に黄色のワンピース風の戦闘服が着せられる。
更に黒いエナメルのロンググローブがはめられ、腰には黒を基調したベルトがつけられ、腕と同じ黒いエナメルでできたサイハイブーツを履かせられた所で変身が完了する。
「琴美待ってろ。今行くぞ」
理佐が人体模型に寄っていると、いきなり人体模型に青白い雷が落ちていった。しかし、人体模型はまだ倒れずにいた。
「あと一撃で葬れそうだな。『首狩り)』」
理佐は素早く人体模型の首もとに移動すると、勢いよく首を切り裂いていき、首が胴体と切り離されてしまった。
人体模型は首を切断され、何もしないまま地に落下して、そのまま動かなくなった。
「理佐!」
「理佐〜」
「優理、琴美、無事だったか」
理佐が地面に降りると、前方から優理と琴美が駆け寄ってきた。そして、優理と理佐は出会いがしらにハイタッチする。
「理佐〜」
「琴美〜」
ハイタッチした直後、理佐は優理から離れ、琴美のとこに直行し、すぐさま抱擁を交わしていた。
「うっ、はぁ、はぁ」
すると、今までどこに居たか不明だった未来が突如、何も無い空間から出現する。
「未来、どうしたの、その傷?」
優理が心配するように、未来は変身して戦闘服を着た状態であったが、体には何かに叩かれたような傷が幾つもあった。
「さっきまでキューラと戦ってて……。あれ! 優理先輩、理佐さん。もしかして変身したんですか?」
未来は二人の衣装が変化し、自分の戦闘服と色違いになっていることに気づいた。
「そのことはまた今度ゆっくり話しますので今は迫夜さんと合流しましょう。」
「はい」
未来達はまだ気絶して倒れていた桃と由奈を起こし、迫夜が居ると思われる公園の奥に向かった。




