第3章第24話魔法少女の喧嘩・中編
「倒す? 今はそんな事をしている場合じゃありません」
「黙りなさい。悪の手先め」
「悪の組織、人をだます、嫌い」
優理が二人に説得を試みるが、二人は聞く耳を持たない。それどころか更に状況が悪くなる。
「みんな、下にいる風華に何があったか聞いてこい。俺はここに残って、魔法少女達と話し合いをする」
「分かりました」
優理達は風華に状況を聞きにいく為、迫夜を置いて下に降りていった。
「で、どうすんだ? 俺達倒してさっきの奴追うのか?」
「あなたには関係ないわ」
「あなたは、ここで、倒れる。私たちによって」
(どうやら今は俺の話を聞いてくれる様子ではないな。この状況どうするべきか。ん、まてよ。あの失敗品を使えば……。でもそうすると相手の懐に潜り込まなくてはいけないか……)
迫夜は二人が説得を聞く様子はないと判断し、一か八かの賭けをする事にした。
「さっさと倒れなさい。『ハートブレイド』」
「桃、援護、『炎氷球』(ファイブリザーボール)」
桃は柄にハートがついた剣を取りだし、迫夜に斬りかかる。それを援護する由奈は、迫夜に向かって赤色と青色の混ざった球体状のものを放つ。
「これくらいじゃ、俺を倒す事は出来ないぞ。『突風拳』」
迫夜は由奈の放った攻撃を得意な風を纏った拳で打ち消し、更に近づいて来た桃の剣さばきをかわす。そして桃の防御が薄くなった所を、見逃さなかった。迫夜は、チャンスとばかりに桃の懐に入りこみ、
「なっ」
「すまんが、強制退場って事で勘弁してくれ」
桃に向かって金属製のチップを投げた。投げたチップは桃に当たり、当たった瞬間、チップから光が放たれた。
由奈はその光を見て、とっさに目を手で隠した。光がおさまると居たのは迫夜一人だった。
「!? 桃を、どこにやった」
「それは同じ体験をすれば分かるさ」
由奈は気づいた時には遅く、迫夜が由奈の懐に潜り込んでいた。
「しまった」
由奈が言葉を発した時にはもう遅く、迫夜の手からチップが投げられていた。そしてそのまま由奈に当たり、光に包まれていった。
「ふぅ、悪いが先に行っといてくれ。誤解はあとで解く」
迫夜は自分しか居なくなった部屋を後をした。
「師匠、大丈夫でしたか?」
「ああ、ん! 風華は落ち込んでいるのか?」
下に降りた迫夜は、心配していた未来に声をかけられた。応答している最中、遠くで肩を落として座っている風華を見て、未来に風華の心情を尋ねた。
「はい。自分のせいで春は捕まったと思いこんでいます。みんなが説得したんですが、あの状態で……」
「そうか、分かったこの件は俺が引き受ける。未来にはみんなに伝えておいてほしい事がある。それは戦う準備出来たら家の外で待っといてくれという事を伝えておいてほしい」
「分かりました」
風華の心情を聞いた迫夜は自分で説得する事を決め、未来に伝言を頼んだ。伝言を頼まれた未来は了承して、この場を離れていった。
迫夜が風華に近づいていくと、
「迫夜、私を励ましに来たの?」
「ああ、そうだ」
「だったら泣かせて」
風華が気付いて迫夜の顔を見ずに来た目的を尋ねる。迫夜はそれに答えると風華は迫夜の方を振り向き、そして迫夜に抱きついてきた。
「いくらでも泣いてろ」
「うあぁぁぁぁーん」
風華は号泣した。その悲しみの声は家中に響いていた。風華が泣き止むまでには少し時間がかかった。迫夜は泣いている風華をただ無言で見つめていた。
「ひっく、迫夜、私も行く、春を取り戻しに」
「……」
泣き顔で喋る風華に対し、迫夜は無言のままうなずいた。
「師匠、待ってました」
迫夜と風華が家の玄関を出ると、二人を除いた全員が集合していた。
「これからナガヤ湖の出発する」
迫夜が号令を取り、ナガヤ湖に出発しようとしていた。
「あのぅー、師匠、莉佳さんが、“風華さんが行くならこの家の防衛は私がするので私は残ります”と言っていますが……」
「そうだな。この家を守る人が居なかったな。分かった。家の防衛は莉佳に任せよう」
迫夜は莉佳に留守を任せる事にし、迫夜達は瞬間移動マシンを起動させ、光に包まれ消えていった。
side 桃と由奈
「うっ」
「あっ、由奈! 大丈夫?」
由奈は迫夜の攻撃で瞬間移動させられ、雑草が由奈の腰下まで生え、周りに湖と山々に囲まれた草原に移動させられていた。
そこで気がつくと、由奈よりも前に光に包まれ、消えていった桃に声をかけられた。
「うん。大丈夫」
「どうやら、ナガヤ湖に飛ばされたみたいね。由奈、これからの事だけど、キューラを探す? それともあの男を探す?」
桃に無事な事を伝える由奈。桃はこれからの事について由奈に尋ねた。
「選択肢は一つだけだと思う。だってあの男の居場所は私達には分からない。だからキューラを先に探す」
由奈の言葉でキューラをまず先に探す事にした二人は湖の周りを散策し始めた。
「由奈、ここの空間が変。もしかしたらキューラがいるかもしれない。ここのひずみに攻撃を加えてみて」
散策して数分後、桃が不自然な空間のひずみを見つけ、由奈に攻撃を頼みこむ。
『氷水亀裂球』(ブリザウォー・クラックボール)
由奈が放った攻撃は、氷の中に水が閉じこめてある球体状の物で、それは見事に空間のひずみに直撃した。
ピキ、ピキキキキ
空間のひずみには大きな音とともにひずみ全体に亀裂が走り、そして空間のひずみは亀裂が入った所から崩れていった。
「あらあらとうとう見抜かれてしまいましたわね。ようこそ私達の楽園へ」
「へへへ、今日こそ、けりをつけてやるぞ。ハートウォリアー・マジカルウォリアー」
「ふん。あれがハートウォリアーとマジカルウォリアーって奴らか。やはりただの子供だな」
中には二人を待ち望んでいたのは、キューラと、がたいの体格をしていて顔を鬼の仮面で隠した男と、バナードの基地に居た科学者の幹部三人と、科学者の近くのベットで寝かされている春、更に幹部の手下の顔のない球体関節人形が大量に居た。
「キューラ・オニマバヤ!!!」
「最近現れたマッドサイエンティストまで!!!」
「フハハ、いい驚きっぷりだな。まずは人形ども。かかれ」
「「「キーー」」」
桃と由奈が敵の大所帯に驚く中、オニマバヤが手下の球体関節人形達に命令を下す。命令を受けた球体関節人形達が独特のかけ声をしたあと、桃と由奈に近づいて襲いかかる。
「いくよ、由奈」
「分かったよ、桃」
「キーー」
カキン、カキン
「キーー」
ジャキン、ジャキン
「キーー」
ボォーー、カチコチ
桃と由奈は球体関節人形達を次々と倒していく。
「キーー」
シャキン
そして最後の球体関節人形を倒すと、桃はオニマバヤの居る方向に剣を向け、
「オニマバヤ、私達をこんなおもちゃで倒せるとは思わないでね」
高らかに宣言した。それに対してオニマバヤは、焦る様子もなく勝ち誇った顔で、近くの科学者に号令をかけた。
「今だ、科学者さんよ。」
「分かった。これで魔法少女達は対抗出来なくなる。フフフ。」
ピッ
命令を受けた科学者の男が、着ている白衣の胸ポケットから、猫の肉球状の形をしたリモコンを取りだし、スイッチを押した。その瞬間、桃と由奈の動きが止まった。
「なっ、体が動かない」
カシャーン
「何これ?」
桃と由奈は科学者の装置が起動した瞬間から体が動かなくなる。そのせいで桃は愛剣を落としてしまった。何が起こったか分からない二人に対し、
「フハハハハ、そんなことも分からんとは所詮子供だな。いいだろう。この俺が教えてやる。この肉球型装置は変身した時に出るエネルギーを察知して、そのエネルギーに静止という命令を出すんだ。静止という命令を受けたエネルギーは命令通り静止する。それは変身者も同様にな」
科学者の男が高笑いしながら二人に説明する。
「どうやら形勢逆転のようだな。今までのお返しをあげないとな」
オニマバヤは動けない桃と由奈に全速力で向かってくる。そして桃を攻撃の射程圏内に入ると、右手を挙げて、
「まずはお前からだ」
「くっ」
「桃ー」
桃に向かって振り落とした。
『二類疾風拳』
しかしオニマバヤの振り落とした拳は桃には当たらなかった。なぜなら、オニマバヤの拳は迫夜の拳とぶつかって押し戻されていたからだった。
「なっ、誰だきさまは?」
「あなたは!」
「悪の組織の……」
「誰かって? これから倒される奴に教える必要はねぇよ」
オニマバヤは驚き、とっさに名前を尋ねていた。それに対し、迫夜は名前を教える事はなかった。その後ろ姿を見た桃と由奈は、迫夜がたくましく見えた。
時は、迫夜達がナガヤ湖に出発した頃に遡り、
「よし、ナガヤ湖に着いたな」
迫夜達がちょうどナガヤ湖に着いた時だった。
「大変です。あっちで桃さんと由奈さんが誰かと戦っています」
「急いで救援するぞ」
優理が遠くで桃達が戦っているのを発見し、迫夜に伝える。そして迫夜の決断で桃達の救援をする事になった。
「ん、何だか様子がおかしい」
「確かにそうですね。たぶん体が誰かに動けなくされているのでは?」
「早く助けないと危険だな」
「はい。えー!」
迫夜は桃達がピンチだと分かると、優理達を置いて全速力で桃達の元に向かった。迫夜の姿はオニマバヤの後ろに居たキューラに発見される。
「あいつは、おい……」
しかしキューラがオニマバヤに迫夜の事を伝える事は出来なかった。
「まずはお前からだ」
「くっ」
「桃ー」
「間に合ってくれ『二類疾風拳』」
ガシィィィ
迫夜の渾身の拳はオニマバヤの拳に当たり、そのままオニマバヤへ押し戻すほどの威力があった。
「なっ、誰だきさまは?」
「あなたは!」
「悪の組織の……」
「誰かって? これから倒される奴に教える必要はねぇよ」
そして時は今に戻る。
「生意気な青二才が俺に楯突こうって訳か?」
「お前みたいな馬鹿には何一つ教えてやる義理はねぇな」
迫夜はオニマバヤを挑発する。それに対し周りは何やっているんだ? と思っているが、迫夜の頭の中は違っていた。
(来いよ。お前みたいな奴は挑発に乗せられると冷静に物事を考えなくなるのが弱点だ)
「俺の機嫌を悪くしてただで済むと思ってんのかー」
案の定、オニマバヤは迫夜の調子に乗り、迫夜に正面から襲いかかる。
「うりゃーーー」
シュッ
『強拳』
「ブハァァ」
オニマバヤの拳は迫夜に簡単に避けられ、逆に腹に重いパンチをもらい、その衝撃で後ろに下がる。
「なかなかのパンチだ。俺には及ばないけどな」
「敵に褒められても嬉しくねぇよ」
この二人の会話が二人の勝負の幕開けとなった。
side 風華達五人
風華達五人は迫夜が、オニマバヤの拳から桃を守った瞬間を、迫夜から少し離れた所から見ていた。
「師匠、速いです」
「私達は魔法少女達を助けに行きましょう」
「そうはいきませんわ。あなた達の相手はわ・た・し」
五人は桃と由奈を助けに行こうとしたが、前にキューラが現れて五人を桃と由奈の所に行くのを邪魔した。
「くっ、みんなあいつを倒して魔法少女達と春を助けに行くよ」
「「「「はい」」」」
side 謎の科学者
「ふん。愚か者め、こちらには人質がい……居ない!」
科学者の男は人質の春が居なくなっている事に気付く。科学者の男が春を探しに周りを見渡すと、春が迫夜や風華達の居る方向とは正反対の方向に走っているのが見えた。
「ガキめ。こしゃくなまねしやがって」
科学者の男は春を捕まえに春を追っていった。




