第2章第9話波乱というのは、いつも突然やってくる。
第2章です。
キナクで怪人を倒してから一晩立ち迫夜達は朝の訓練をしていた。
「今日も3km走るぞ。」
迫夜の号令で走り始める三人、3km走りきった三人は風華が作った朝食を食べる。食べきると迫夜が。
「未来・優理、今日どうするんだ?」
二人の今日の用事を聞く迫夜。
「私は特に予定はありません。」
「先輩もですか、私もです。」
二人の予定が無い事を知った迫夜は。
「そうだ。今日は、俺がこの秘密基地を案内しよう。」
迫夜の突然の思いつきに、二人は。
「そうですね。私もまだここに日が短いですしね。」
「私もやる事ないし。いいですよ。」
二人が許諾すると、迫夜が喋りだす。
「まずは一階だが、ここは口で説明する。一階には、玄関・30畳の居間 ・洋式トイレ2つ・風呂2つ(男湯と女湯)・台所 ・風華の部屋(14畳)・二階への階段があるな。次は二階だ。二階に行くぞ。」
未来と優理が二階に行くと再び喋りだす迫夜。
「二階ある部屋は、未来の部屋(8畳)・優理の部屋(8畳)・他は、8畳の部屋3つと6畳の部屋1つだ。自分の部屋があるから分かると思う。次は三階だ。」
未来と優理は三階に行くと迫夜がまた喋り始めた。
「三階は俺の部屋(24畳)・8畳の部屋2つがある。これで秘密基地の説明は終わりだ。」
迫夜の説明が終わるが、大事な事に気づいた未来が言う。
「まだ一階から移動して10分も経っていないんだけど。」
未来の質問に対する迫夜の言葉は一言だった。
「俺の部屋入ってみな。」
今まで未来・優理は迫夜の部屋に入れなかった。入れない部屋に初めて入れる事(風華は除く)に二人は興味津々だった。
二人が迫夜の部屋に入ると部屋には沢山の発明品があり、意外にも片付けられていた。その光景を見た二人は。
「意外と綺麗何ですね。」
「見た事もない物が沢山ありますね。」
二人の言葉を聴いた迫夜は。
「未来、俺を何だと思ってるんだ。優理、知りたいなら俺が教えるぞ。」
優理がすぐそこに棚にあったイヤホンを持って迫夜に尋ねる。
「これは何ですか?」
優理に聴かれた迫夜は。
「それは動物感情通訳イヤホン。簡単に説明すると、動物の言葉が分かる。だが、こちらの声は動物には通訳されない。だからそれはまだ未完成品だ。」
優理が感心していると、未来がベッドと傍にある怪しい装置を持って迫夜に尋ねてきた。
「それは、俺の自信作の人間戻し機、簡単に言うと、異形の姿や怪物の姿にされた人間を元の姿に戻す機械だ。」
人間戻し機の説明を聴いた未来は感激している。更に近くに居た優理まで驚愕していた。
「二人ともどうしたんだ。自信作って言っても、使用する機会は少ないと思うが。」
迫夜は、この機械の重要性を分からなかった事に、二人は開いた口がふさがらなかった。少し経って、優理が口を開く。
「迫夜さん。一般社会には[怪人にされたら殺されろ]っていうことわざがあるんです。ヒーローや一般人が敵に捕まったりして怪人にされたら、元に戻す事は出来ない為、死ぬまでヒーローとして戦うか、それが嫌なら人に迷惑かける前に殺されろっていう意味です。迫夜さん、常識のはずなんですが。」
優理だけでなく未来も口を開く。
「小さい時、言われてませんでした?悪い子は怪人にされるぞって、私なんかいつも言われていました。」
二人の様子を見た迫夜は。
「そんな重要な物を作っていたのか、IQが10違うと話が合わないって聞いた事あるけど、こういう事をいうのか。」
迫夜の言葉に、疑問を感じた優理が迫夜に尋ねる。
「迫夜さん。迫夜さんのIQはいくつですか?」
優理の問いかけに迫夜は平然と答えた。
「俺のか、俺のIQは200だったはずだが。」
迫夜の言葉に二人は再び、開いた口がふさがらなかった。その後、迫夜の部屋の発明品を二人が、迫夜に聞く状態が夕方まで続いた。夕食の時、未来と風華が話す。
「迫夜って普通じゃないですよね。」
「未来もですか。昔から傍に居ますが、私もいつも思いますよ。」
更に優理まで加わり、話が盛り上がっていた。その後、風呂に入ったりして(残念ながら別湯)、寝床についた。
side ???
まだ日が昇る前、迫夜の家の周辺に一つの影が現れた。
「はぁ、はぁ、ここまで来れば大丈夫かな。」
それは、息が上がりながら喋っていた。しかし、その姿は、人の姿ではなく頭は逆三角、目が複眼、更に腕が大鎌になっていた。その姿を見た者はみなこう言うだろう。――蟷螂怪人――
しかし、蟷螂怪人の姿はボロボロになっていた。背中の羽はちぎれ、左腕の大鎌は無くなっていた。傷だらけの怪人は、疲れで前が見えなくなっていた。
怪人はある事に気付いた。怪人の墓場みたいな場所に一軒の家が建っている事を。
「何でこんな所に家があるの?早く離れなきゃ。」
怪人は向かう方向を換えようとした。しかし、怪人の足は疲労で動かなくなっていた。
「何で、足が動かないの?ここに居たら、そこの家に住んでいる人が私の中の爆弾で死んでしまう。」
怪人の体力はもう限界だった。地面に倒れこむ怪人。意識が遠のいていく中、怪人は思っていた。
――私のせいで罪も無い人が死んじゃう。――
そして怪人の意識は遠のいていった。
珍しく迫夜は日が昇る前に起きていた。
「まだ夜明け前かよ、二度寝でもするか。」
二度寝をしようとした迫夜だが、外から妙な音が聞こえた。――ドサァ――迫夜は不思議に思い、外に確認する事にした。階段を下りた所で風華に出会う。
「風華、起きていたのか、風華も外の音が気になったのか。」
迫夜が聞くと頷く風華。迫夜と風華が外に出てみると、傷だらけの怪人が倒れていた。それを見た二人は。
「怪人、何故こんな所に?迫夜どうする。」
「罠かもな、俺が近づいてみる。風華はここに居ろ。」
迫夜がそう言って怪人に近づいていく。近づいていくと前に聞いた事がある音が鳴る。
ピ、ピ、ピ、ピ、
前回とは違い、冷静に判断した迫夜はズボンの左ポケットからピンポン玉くらいのボールを取りだし、怪人へ投げる。怪人へ当たるとあの不穏な音が消える。
迫夜が考えていた原理は怪人の意識がなくなり、尚且つ、他の人が倒れた怪人に近づくと、それに反応して音が鳴り、爆発するという仕組み。風華が近づき迫夜に聞く。
「この怪人どうするの?」
風華の言葉に対し迫夜は。
「聴きたいことがある。俺の部屋の人間戻し機を使って、人間に戻す。風華、俺の部屋まで、運んでくれ。」
風華は迫夜の頼みをうけ、二人は傷だらけの怪人を迫夜の部屋に運ぶ。運んだ後、迫夜は人間戻し機を発動させた。
「人間戻し機は4時間かかる。それまで待つしかないな。風華、二人にこの事伝えといてくれ。」
迫夜の言葉で風華は迫夜の部屋を立ち去る。風華が居なくなった後、迫夜は呟く。
「波乱っていうのは、いつも突然やって来るな。」