第1章第8話悪の秘密結社に怪人はつきもの。
優理が美学道に入ってから一週間が経った。
「未来、一緒にキナクに行かない」
「優理先輩、キナクって何処ですか? 」
未来と優理が話をしていると、それを聴いて不思議に感じたのか、迫夜が未来に聴いてきた。
「未来、いつから優理を先輩扱いになったんだ。未来の方が(美学道に)入ったは先なんだが」
迫夜が聴くと、未来は答える。
「優理先輩は元ヒーロー何ですよ。ヒーローを目指してた人にとっては、憧れなんです。だから先輩って言うのが当たり前です。ヒーローって言うのは……」
未来が話しているが、迫夜は、――それ答えになってねぇような気が……。――などと思っていた。
「俺は少しコバトートに行ってくる。賢二と少し話がしたいからな。優理、未来の事、任せたぞ」
迫夜がそう言って立ち去ると、ずっと喋っていた未来が。
「……なんです。っていないじゃない。優理先輩、迫夜どこに行ったか知りませんか? 」
「迫夜さんならコバトートに行きました」
未来が聴くと優理がすぐ答える。
「未来、さっきの話覚えてる? 」
迫夜に少しムッとする未来だが優理が聴いてきたので。
「キナクって場所に先輩と行く話ですよね」
未来がさきほどの事を、覚えているのを確認した優理は。
「キナクっていう場所はコバトートの東にあって、ショッピングの町と呼ばれているの」
優理が説明すると未来が言う。
「ショッピングの町ですか、いいですね。一緒に行きましょう」
優理と未来の意見は一致しキナクに行くことになった。
「ここがキナクの町ですか」
キナクの町に到着した未来が言う。
「どう、気に入ったでしょ。これから私がよく行っていた店を案内するわ」
優理に案内され一軒のお店の前に来た未来。
「ここですか。あれ優理さん。ちょっと待って下さい」
未来が喋っている間に、店の入口に行く優理。
「ごめん、未来、今日休みみたいなんだ」
未来が店の入口に来ると入口の扉に休業日と書かれたプレートが掛けられていた。
「仕方ないですよ。他の場所に行きましょう」
未来の言葉で、優理は違う場所を案内する事にした。そして優理と未来は、町のあちこちの店で買い物をした。沢山、買い物をし、大量の袋を持った二人は、帰る支度をしていた。その時、近くから叫び声が聞こえた。
「きゃーーー」
二人が悲鳴を聞いて駆けつけて見ると若い女性が、蜘蛛の巣のような物に捕まっていた。そして8本腕を持った、化け物が立っていた。その化け物は人の姿をしてなく、まるで蜘蛛のような格好をしていた。それを見た二人は同時に喋る。
「「あれは、怪人」」
二人に気付いた怪人は。
「若い女性達がまた私の餌食となる」
怪人が喋っていた隙を見て、捕まっている女性の糸を愛刀で切る優理。助けられた女性は優理に感謝して逃げる。それを見ていた怪人が。
「ちょっと、今俺が喋っている途中だろうが」
無視されたのがそんなに悔しいのか、優理にぶちギレる怪人。女性が居なくなったのを確認した優理は。
「あなた見た目から蜘蛛怪人って所ね」
正体を見破られた蜘蛛怪人は。
「よく分かったな。俺はバナード様に忠誠を誓う蜘蛛男だ」
その言葉を聴いた二人は。
「いつも、いつも、同じような事言ってて飽きないのかしら」
「あんたみたいな奴、よくいるわよ」
二人の厳しい意見に更にぶちギレる怪人。
「調子乗ってるのも、今のうちだ。俺はお前らに恐怖を与えてブハァ」
怪人が喋っている時、突然この場に居ないはずの迫夜が現れて、怪人を攻撃する。攻撃に耐えた怪人は。
「普通、敵が喋っている時は攻撃しないのが常識だろうブベェ」
再び攻撃する迫夜。
「敵に喋らせる時間なんてねぇ」
突然迫夜が現れたのでびっくりした二人は聞く。
「迫夜、どうしてここに? 」
「迫夜さん。その攻撃は反則です」
二人は同時に喋るが迫夜は。
「俺が何故ここにいるのかって、それは二人がなかなか帰って来ないから、迎えに来た。後、俺はヒーローじゃないからそんなルール知らねぇ」
二人の言葉を同時に聴けていた迫夜に対し。
「きさま、俺を無視して女と喋るな」
怪人はまるでモテない男が、モテる男に抱く感情のような殺気を放ちながら迫夜に突撃してきた。しかし怪人は気付かなかった。これが愚かな行為だという事を。
怪人が突撃するが、迫夜達には簡単に避けられる。更に怪人の体にはいつの間にか斬り傷があった。
『雷中斬撃』
優理の手には刀があり、怪人が突撃した瞬間を狙って、優理は怪人を斬っていた。斬られた怪人は。
「アバババババババ」
怪人は優理から斬られた傷から入った電撃に痺れていた。電撃が止まると怪人は、その場に倒れていった。その様子を見ていた未来は。
「凄い、これがヒーローの力」
未来がその場で立ち尽くしていると、辺りに不穏な音が響く。
ピ、ピ、ピ、ピ、
不穏な音の正体に気付いた迫夜が大声で言う。
「未来・優理、怪人から離れろ」
そう言って迫夜は野球ボールみたいな物を取りだし、怪人へと投げた。怪人にぶつかると、怪人の周りを囲む結界が出現した。その数秒後、結界内でドコーンと爆発が起こる。三人が結界を見ると中には何もなくなっていた。
「まさか、自爆するなんて」
未来はそう呟いていたが、迫夜は違った意見を未来に言った。
「未来、違う、これは自爆じゃない。消されたんだ」
迫夜の発言を聴き、言葉を失う未来。
「これは、何かあるな。また俺達は巻き込まれそうだ」
迫夜達三人は、気分が悪いまま、家に帰って来た。その様子は風華にも伝わっていた。
「みんな、何があったかは知らないけど、今の状態じゃ、何も出来ないわよ。今は私の料理をよく食べて」
風華の励ましに三人の表情が良くなる。夕食を食べ終え、寝る時、迫夜は今日の出来事を思っていた。
――前回も今回もこんな胸糞悪い結果は何なんだ。俺は今のままではまた大切な物を失う。俺は自分を成長させなきゃいけない。もう風華だけじゃないんだから。――
迫夜はそう考えているうちに深い眠りへと落ちていった。