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以心伝心 ~冴えない二人の物語~  作者: ステルん。
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第一話 『如月テル』

予め言っておこう。俺はどうせこうなるならもっとファンタジーなカンジにして欲しかった。

まぁ、ファンタジーでなくともこうなんというか展開ものがあるじゃん?でも、それが叶えられなかった。


これでは分かりにくいですよね。じゃあはっきり言います・・・。


「どうせ死ぬのならもっと普通に死にたかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



俺の名前は「如月きさらぎテル」。

まぁー至って普通の男子校に通う高校生なわけですが、なんか男子校は下ネタばっか言ってるようなカンジするかもしれないですが、実は違う。いや、俺は違う。


「おいおい!聞いたか?テル!今度あの・・学校に転校生が来るんだとよ!で!話はこれからだ!なんとなぁ・・・その子はお金持ちでアメリカから来た超絶美少女なんだとさぁぁ!はぁぁん!」


このうるさいのが俺の数少ない友達(と向こうは思ってるらしいが俺は友達とは認めていない)の一人である、「むかいヒロト」だ。

ホントに女には目が無い。今だって、大きな川を挟んだ向こう側を歩く女子高生達に飛びついていきそうな勢いである。


「・・・で?なんだよ?お前も俺の友達もどきなら俺の体質知ってんだろ?」


そう、俺が女に興味が無いのはある理由があるからである。なので別にコイツの話を聞いて不快にはならないし、でもどちらかと言うと不快なのであるが、そんなことは置いといて・・・。


俺の体質というのは、とても考えもつかないもので、簡単に言ってしまえば女性と話せない。目も合わせれない。触るなどもってのほかである。こうしたことが出来るのは、世界中で母さんと妹ぐらいしかいない。触りはしないけどもね。


「あーそっかぁ・・・テルは女の子がダメだったな・・・勿体無い・・・。あと、いい加減その友達もどきってのやめてくれないか?俺ら友達だろっ!キリッ」


「勿体無くないし、何がキリッだよバカ」


特に内容もない話をしながら、学校につくのである。ここまではいつもと一緒。別になんら変わりなど無い。あっ、ここまでの話は登校するときの話でした。



キーンコーンカーンコーン・・・キーンコーンカーンコーン・・・



あぁ・・・やっぱチャイムってテンション下がるよな・・・。でも今流れたチャイムは今日聞く最後のチャイムだから、皆このチャイムだけはテンションが高い。俺も高い。

カバンに教科書やらなんやらを詰め、帰りの支度をしているところにヒロトが寄ってくる。


「おいテル!!帰りにレンタルビデオショップでも行ってアダ・・・」


「誰が行くか!んなとこ!!死ぬわ!」


「あっ・・・テルがビックリマーク使ってる・・・驚き・・・」


ばーか、会話にビックリマークもあるか。小説じゃねーんだから。

このあと、ホントに小説のようなことが起こることなど知る由も無い。


「あっそ。あー帰りのことだけど、俺ちょっと用事あっから先帰っていいよ」


「まぢかぁ・・・まぁいいや、また今度ジュースでも奢れよな!それじゃあな!!」


「あぁ・・・。悪いなヒロト、じゃあな」


足早に去っていくヒロト。元気だなーこれでもし共学なんかだったら大変なことになっていただろうな。とか思いながら俺もその用事を済ませに行くことにした。


「・・・失礼しました」


職員室を出る俺。用事というのはたいしたものではない。ただの提出である。


「・・・よし、帰ろうか・・・」


もう生徒は校舎には残ってない・・・よな・・・。


刹那。体中に電気が走った・・・。


「・・・し、視線・・・誰かいる・・・」


視線など感じる訳が無い。今学校に残っているのは、今日当番の先生と最後の生徒である俺ぐらいだ。しかもその先生は丁度さっき会っていたから、気づかないわけが無い。

じゃあ誰だ?きになる・・・。とてもきになる・・・。恐怖心まで芽生える始末だ。俺は振り返ることにした。


息を呑み・・・。そーっと後ろを振り向く・・・。鼓動が早まるのを感じながら・・・。


「ふぅ・・・・・」


もう、じれったくなってきたので、バッ!!っと振り返った。

そこにはなんと!!・・・何もいなかった・・・。


「ふぅ・・・良かったぁ・・・・」


その後は別に何も問題なく校門を出れたが、ここからが問題ありなのだ。

俺は歩き通学なので、いつもの道を歩いていた。

たいしたこともないいつもの道。そしていつもの信号・・・。


「あっ、赤か」


急いでるのに・・・こんなときにタイミングよく赤なんてどこまでツイてないのだろうか。

仕事の帰宅ラッシュで車通りも多い。

こんなときいつもなら他の事を考えて、そのまま信号が青に変わってなんでもない道を進み、日が落ちるのを横目に見ながら帰れたというのに・・・・・。


トラックが遠くから向かってくる。別になんとも思わない。勿論飛び出そうなど思うわけが無い。なのに、なのになんでか、気づいたら俺は背中を押されつんのめる形で車道に飛び出していた。


「・・・・・えっ・・・・」


どこまで俺はツイていないのだろうか。成績も良くも悪くも無い。友達もそんなにいない。別に女が嫌いなわけじゃない。出来ることなら彼女とか欲しかったな・・・。

俺の人生ってこんなもんで終わってくんだな・・・。笑えてくるな・・・。


トラックにぶち当たり、自分でも今頃体が大変なことになっているのだろうなとわかるぐらいの苦痛に、意識がもうろうとしながら、俺はさっきまで自分が信号を待っていた場所に立つ人影を眺めながら、ただゆっくりと瞼を閉じる・・・・・・。

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