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1-1リトル・プリンセス

もしかしたらクオンさんが悪役ぽいかも。


―狐天―The reliveres storyes―


朝焼けに染まる広大な草原にぽつりと立つ、和洋の趣を混ぜ合わせたいびつな館。


-relive1-1-Little-Princess-


「ん、むぅ・・・」

記憶がはっきりしない、長い間眠っていた様だ、夢を見ていた気がする・・・

夢の中で私は・・・何を・・・していたのだろう。

上体を起こし辺りを見回す。

「ここ、何処?」

私は部屋の中央に置かれた天蓋(で、あってるかな?)付きのベッドで眠っていた様だ。

フローリングと白い壁、大きな窓から見える何処までも続く草原。

ふと、壁のむこうから声が聞こえて来た。

「だから俺は―――す気は――って言ってるだ――、おい!聞いてんのか!」

一人は男、

「―きに―――いいわ」

もう一人は女、

断片的にしか聞こえなかったが口論をしている様だ。

今更だが立ち上がろうとして寝間着を着ている事に気付く

「何、これ?」

空色の地にデフォルメされたキツネが無数にプリント・・・じゃない?手描き!?

(一つ一つ形が違うそれは、以前クオンが気まぐれで製作したハンドメイドだ)

「起きた様ですね」

「ひぁっ!?」

すぐ傍から声、驚いて変な声が出てしまった。

「着ていらした服はそこのクローゼットの中です」

「は・・・はい」

ベッドの傍に立っていたのは黒髪の女性、顔は帽子から垂れる布で隠れている。

「食事を用意しております、着替え終わりましたら大広間まで御越し下さい」

それだけ言うと彼女は踵を返し部屋を出て行った


・・・とりあえず着替えよう・・・

元々着ていた服に着替え、着ていた寝間着をハンガーに掛けておく。

此処が何処なのか、何故自分が此処にいるのか・・・


で・・・


(・・・・・・大広間って・・・何処?)



館の中央の奥、中庭に面した扉の中

「ふぁぁぁぁぁぁ〜・・・ぁふ」

大きなあくびが空に溶ける、そして鍋から長い箸で餅巾着を摘み上げ、ぱくり。

「ほむ、美味い」

しかし、大きな鍋で煮込まれたおでんは大人数で囲む様な量だ。

ガチャ

広間の扉が開く、

「あ、あの・・・大広間って此処で合ってますか?」

先程の少女だ、

「うむ・・・ほれ、食え」

おでんを用意していた碗によそってやる、

「ありがとう・・・ございます」

(・・・固いのう、まあ、無理もないかのう)

「いただきます」

おそるおそる、といった感じで食べ始める。

見馴れた光景だ。



見知らぬ場所、見知らぬ人・・・

少女は混乱していた、振る舞われた料理を食べる事すら躊躇う始末だ、吸い寄せられる様な食欲をそそる香り、本当にこれを食べて良いのか?そんな事を考える程、混乱していた。

これをくれた女性は、はむはむ、とお揚げを頬張っている。

不意に、ぐぅ〜、とお腹が鳴る。

「いただきます」

食欲には逆らえない、とりあえずひと口・・・



目の前の少女はまるで好物の缶詰を与えられた犬の様におでんを食べている。

「スズリの料理は次元を超えて好評じゃからのう」

少女の箸が一瞬止まったがまた食べ始める、

(かわいいのぅ・・・げふんげふん)


「ぷはーっ、ご馳走様でしたぁ・・・」

「うむ、ご馳走様じゃ」

暫く美食という幸せの余韻に浸っていた少女は、急にピシッと顔を引き締めると。

「美味しいおでんありがとうございました・・・それで・・・此処は何処ですか?」

その問いに対して、にやりと目を細めて答える。

「此処は狐天界、ヌシは一度死に、霊体として此処に落ちて来たのじゃ」

「へぇ・・・」

少女は生前、自殺志願者、もとい他殺志願者だったらしい。

大抵の霊は此処に来ると喚き散らすが、自ら命を絶ったり死ぬ覚悟を持って死んだ霊は妙に落ち着いている傾向がある。

「・・・あれ?、私が幽霊ならなんでおでん食べれたの?」

「此処は特殊な世界での、霊が実体を持つ世界なのじゃ」

「へぇ〜」


「クオン様、屍です」

私の真後ろ、大広間の扉の前に先程の黒髪の女性が立っていた

(い、いつ後ろに・・・)

「なんじゃ、最近やたら多いのう、どこぞで宇宙戦争でもおっ始めたのかえ?」

「う、宇宙戦争!?」

・・・もう、何がなんだか・・・


・・・まず、私は死んだ、霊体として此処、狐天界に落ちて来た、で、最近、カバネという(名前からして怪物の類かな?)物(者?)が多く出現し、(宇宙戦争が原因?)今、黒髪さんが言った事によれば、それがまた現われたらしい。

・・・わけわかんない。


「面白い位に訳わかんないって顔じゃの」

そう言ってくすくすと笑う。

「場所は?」

「館内です」

同時に聞こえる、ガン、ガンと扉を叩く音、深い溜め息・・・

「またか・・・蝕の時期でもないのにのぅ、面倒じゃの」

よっこらせ、と立ち上がると、どこからともなく漆黒の刀が現われる。

・・・今更驚く事もない、ようするになんでもありだ、と無理矢理自分を納得させる。

「スズリ、先の客人の様子を見てきておくれ」

スズリ(黒髪さん)は黙って一礼すると、扉に指先で触れる、指先から滲み出たのは黒、どこか無機質な色の墨。

「ヌシはこっちじゃ」

「え?、きゃっ!?」

クオン(金髪の女性)に後ろ、つまり部屋の奥に投げられる。

直後、扉に描かれた魔方陣(的な物)が淡く光を発する、爆音。

途端に灰色の化け物が溢れ出した。

いずれも明確に形容する名前は、異形としか言い表せない。

先程の爆発の影響だろうか?上半分が吹き飛び、灰色の中身がこぼれ・・・

グロい・・・

シャラン、と音、見ると漆黒が灰色の影を蹂躙し始めていた、

バスン、ザパァッ、ブシャァ、と漆黒が次々に灰色を塗り潰して行く。

ひと際大きな屍がクオンに殴りかかるが拳らしき先端から解体されていく。

「ふぬけが」

辛辣な一言、それを最後に、音が消える、スズリさんは既にこの場には居ない。

そして、ぽつりと、静寂の中に響く、


『のぅ、此処にいても奴等に喰われるだけじゃ、ヌシ、生き直す気はないかの?』


クオンの声、


『・・・え?』


生き・・・直す?


『此処はいうなれば、死者の世界じゃ、輪廻転生、リーンカーネイションじゃな』


転生・・・


『ヌシの望み、自らの死による変化・・・確かめて見る気はないかの?』


その言葉が、私を決断させた、


『私は・・・』


『逝くかどうかはヌシに任せるがの』


『私は、確かめたい・・・行かせて下さい!』


答えは、是


にい〜っとクオンの唇が弧を描く。


『契約、成立じゃ』




暫く後、中庭にて、

「クオン様、彼はまだ決心がつかない様です」

「無理もないの、あやつは事故死故に」

送魂の儀、なるものの準備らしい、漆黒の墨の入った壺をスズリが持って来た。

何に使うのだろう、また先程の様な魔方陣を書くのだろうか?

「さて、逝く覚悟は良いかの?」

唐突にクオンが問う、

「勿論」

もう、決まっている。

「うむ、結構」

ふわりと、舞う。

「行くぞ」

とん、と胸を押される。

横では、スズリが壺の前で印らしき物を切っている。


朗朗と、詠う、

槍を持ち、また舞う、墨が地を這い、陣を作る、私を中心に、幾重に重なり、

何処の物とも知らぬ、不思議な文字が描かれていく。


ゴウ、と風、墨が宙に浮き上がり、私と、巻物と装飾された槍を持ったクオンを囲む。


『此岸より彼岸へ、送れ、魂、響け、鼓動』


「!?」

巻物を広げ、槍で私ごと貫く、するとどういう事だろう?

何かが抜け出る感覚、視界に映る身体、槍は私を貫いたまま、背後の壁に突き立つ。

下には池、目の前の身体が黒く爆ぜ、宙に浮いたままの巻物に吸い込まれる。

クオンの手により槍が引き抜かれた時、私は、鏡の様に穏やかな水面に、落ちて逝った。


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