序章
メインキャラの紹介・・・かな?
ちなみにクオンさんとスズリさんがメインです
―狐天―The reliveres storyes―
朝焼けに染まる広大な草原にぽつりと立つ館、
和洋の趣を混ぜ合わせたいびつな館を背に佇む二つの影、
一つは黒々とした短髪で中華風の服装の少女、
一つは黄金色の長髪を気怠そうに弄り回しながらパイプをくゆらす和服の女性、
「時間です」
黒髪が告げる、
「うむ」
不意に空が暗くなる、しかし良く見れば、
それが空に現われた歪みが光を遮っていると気付くだろう。
暫くすると一人の人間が歪みから吐き出される。
ゴッ
「・・・あ、」
「おお、面白い落ち方じゃの・・・ん?死んだか?」
「それはないでしょう、クオン様、彼等は・・・」
「わかっておるわい、冗談じゃ、冗談」
そう言ってクオンは動かない男をふさふさとしたなにかでつつき始める。
「・・・起きませんね」
「・・・むぅ、朝食の時間じゃの、帰るぞ、スズリ」
飽きたらしい。
「良いのですか?」
「どうせ放っておいても害はあるまい?」
「害・・・ですか・・・はぁ」
暫くして、スズリは、それもそうか、と納得した様だ。
「まあ、どのみち館へと来るじゃろうて」
そう言って瓶を取り出し、中身を一気に飲み干すクオン、
「・・・朝から飲まないで下さい」
ちなみにラベルは・・・神殺し。
館の中は外観と同じく古今東西の様式をごちゃ混ぜにしたいびつな作りで、
壁一面に本棚が整然と並んでいる。
ちょうど中央にあたる部分は中庭になっていて、そこには小さな小屋が建っている、
いびつな館にひっそりと虹色が波打つ。
クオンは囲炉裏のある和室を選び、スズリが鍋を持ってくる、太い麺と出汁etc...
うどんである、スズリが鍋をセットすると、ひとりでに火が起こる。
暫くして、美味しそうな香りが周囲を満たした。
「・・・ん?・・・あれ?生きてる?」
男の名は卓也、自殺しようとした同僚を止めようとして、
ビルの14階から転落したはずなのだが・・・
「ここ・・・何処だ?」
見渡す限りの大草原、それ以外何も・・・いや、あった、
奇妙な館だ、他に建物はない。
「行くしかないか・・・」
歩き出す、が・・・
「・・・遠っ!?」
いかんせん遠すぎる、だが、不思議と体が軽い、死んだからか?
そう考えて笑い、軽やかに駆け出す。
「到着っと・・・ふぅ・・・」
たいして疲れた訳でもない、だが、かなりの距離を走ったはず、
門の周りを見回す・・・漂うほのかな香り、無人ではなさそうだ、
大きな扉には御丁寧にもインターホンとノッカーがなぜか複数付いている、
ボタンを押そうとした瞬間、扉が開く、出て来たのは・・・
「ふむ、ようやっと起きたか、若僧」
年下にしか見えない金髪の女だった。
「で、ここは、何処なんだ?」
それを聞いたのは囲炉裏を囲みうどんを食べ終った後だった、
「此処はキョウカイ、じゃ」
奥の部屋では料理をしているのだろう、黒髪の少女が黙々と作業している。
「へぇ・・・洒落てるね、お二人の他には誰か居ないのかい?」
「わしらだけじゃ」
さらっと言いつつ口元は笑っている、
「クオン様、そろそろ時間です」
奥から顔全体をターバンで隠した少女が出て来る。
「む、」
クオンは一瞬固まったが、最後におあげを幸せそうに咥えると、
「うむ、行くか」
「なにがあるんだ?」
おあげを咀嚼し飲み込んだ後、溜め息。
「まぁ、教えておくべきじゃからの・・・此処がどういう場所か」
「は?」
確かに何かがありそうな館だが・・・
部屋を出、廊下を進み、中庭へ。
「館の中とはの・・・珍しい事もあるものじゃのう」
「正確には屋根の上ですね」
「・・・何が?」
「黙って見ておれ・・・そら、始まったぞ」
不意に空が暗くなる、空に現われた歪みが光を遮り、
暫くすると一人の人間が歪みから吐き出される。
ガンッ・・・
「いづっ・・・って、うわっ、きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
連続した悲鳴と痛そうな音・・・
「屍です・・・クオン様」
「うむ、狩るぞ」
「え!?今の・・・人の声・・・」
「ふん、それとは別物じゃ」
ガタンッ
頭上で音、つられて見上げると・・・
「ぼふっ!?」
屋根から人が落ちて来た、俺はそこで気絶したらしい・・・
我ながら情けない話だ。
「ぼふっ!?」
少女は混乱していた、ヤの付く職業を親に持ち、
色々あって銃で自殺したはずなのに、気が付いたら屋根の上。
しかもバランスを崩して、転がり落ちた、ハズイ。
幸い何か軟らかい物がクッションになって、怪我は殆ど無い様だ。
ザシュ!バスッ!ズシャァッ!
すぐ傍で破壊的な音が響く、顔を上げると・・・
深淵を思わせる漆黒の刀が少女の目の前で灰色の化け物を切り飛ばしていた。
「つまらん、この程度か」
断面を見てようやく把握出来るほどの斬撃、ぶちまけられる臓物、
込み上げる生理的嫌悪感と悪臭に私の意識は闇に溶けた。
「これで終いじゃ」
ザンッ!
最後の屍が一瞬で四肢を切断され更にそれを両断する、
漆黒の刀、影薙を左右に払う、刀が黄金色に燃え上がり消失する。
「おみごとです」
「なに、相手は屑じゃ、屑・・・後始末、頼むぞ」
「はい」
これからの事を考えると、どうしても顔が緩む。
「さて、仕度しとくかの」




