【中1編】第二話*馬鹿の放課後。*
「起立、礼!」
《さようならぁ~!》
ついにきた!
ウチの待っていた時間、放課後だぁ~! これで自由だぁーー!!
やっと束縛から解放される!
あとは、家に帰ってマンガとゲームとPCと……ケケケ…
っと、その前に海翔の部活でも見に行くか。
「あ、詩乃、今から海翔君見に行くの?」
話かけてきたのは隣のクラス、C組の友達の蜜。違う小学校出身だったけど、体育のサボり……見学の時話して、見事に意気投合! といった感じだ。
『ちゃんと友達もいたんだ?!』
失礼な! 幼馴染とパシりしかいないわけじゃないからね!?
「あぁ、うん。そうだけど、何で?」
「あのさ、これ渡しといてくれる、かな?」
ピンク色の封筒。そこに、封を閉じるためのハート型のシール。
ウチは決して鈍感ではない。見ただけでわかる。
「こ、これは……!」
「じゃ、よろしく! また明日ね!!」
走り去る蜜を見ながら、呆気にとられ、口が半開きになる。
そうか、蜜は……
テニス部だったな、うん。スコート萌え。
……って、うっわ、何あの女子の数。めっさ群れとる。何? 絶賛かみ殺すキャンペーンですかこんにゃろー。海翔全然みえねーよ。全員メガネ萌えか?! ちなみにウチはメガネ萌えだ!!
『誰も聞いてないよそんなこと。てか、どうでもいいし。』
何か急に冷たくなったなオイ!
《キャー!!!》女子の驚くほど高い声が響く。海翔がゴールでもきめたのだろう。ってか、これはさすがにうるさいんじゃないかな。モテ男乙。
『そして時は経ち、18:30』
「さて、詩乃、帰るか。」
「あ、ザキ! ……あり、寝てた?!」
声だけに聞き飽きた自分は、気がつくと日陰に避難し、木によりかかりながら立ったまま寝ていたらしい。
「あ、うん、帰ろう!」
「ザキと呼ぶな。」
とかいいながら、2人きりで歩いて帰る道。今日は曇りのため、夏の6時半なのにちょっと薄暗い。そんなところで2人きりだよ? 何かイベントでも起きないかな。
「あ、そうだ。」
そんなことを考えていたところで、さっきの蜜の手紙を思い出す。
「これ。」
「ん? あ……」
大分鈍感な海翔も、見てわかったようだ。ってか、もらいなれてるからか?
そういえば、海翔と仲がいいといわれているウチを通してラブレターを渡す女子も少なくはない。くそ、モテ男め……!!
『告白されたことなんてないもんね☆』
黙れぇぇっ!
「……えーと……大田蜜って誰だ?」
え、ってかそこから?
海翔はかなりの無関心で、その上結構目立つ存在なため、知らない人から告白されるのも初めてじゃないとかしょっちゅうとか。
「うーん……C組の……」
「さすがに、名前聞いても分かんない相手と付き合うわけにはなぁ……」
振った。まだ本人には言ってないけど、振ったも同然だ。
ってか、気まず……。
――――沈黙――――
「ねぇ、海翔。」
「何だ。」
「なんでもない。」
「じゃぁ呼ぶな。」
――――再び沈黙――――
『詩乃ちゃんは、何とか話題を切り出そうと頑張り続けたんだよ☆でも海翔君はイニシャルもKYだからそのまんま空気読めないで終わっちゃったんだ☆え?な』え? 何? 空気読め?どこにそんな本売ってんの? とかいうノリツッコミはいらないから。『ひでー!』
――結局、沈黙のまま帰宅。
「ほんじゃ、後で行くねー。」
夜、別れたあとに会う約束。
おぉ、ニュアンスとタイミング次第ではエロく聞こえなくもないかもしれない……!!
まぁ、何かというと、毎日海翔の家でテスト前補習授業をしているんだよ。
ウチ偉!
「お邪魔しまーす!」
「詩乃ちゃんいらっしゃーい。海翔部屋にいるわよー。」
海翔の部屋は2階の奥にある。何十回、もはや何百回もき続けているウチは、この家の常連(?)だ。
「おじゃしまー!」
「よぉ、詩乃。」
部屋に入ると、海翔は勉強机に向かって勉強をしていた。
そしてウチは、もう1つの特設机の方ではなく、本棚に向かった。
「ザキ、また新しい漫画買ったの?!」
「ん? おう。昨日な。」
テスト前補修授業といえど、ほとんど漫画読んで5分の4が終わっちゃうんだけどね☆
海翔は普段ウチの持っているようなヲタ系漫画はあんまり……というか読まないけど、サッカー漫画の冊数は、ヲタク並だ。どこからそんなサッカー漫画の情報を収集しているの? ともいわんばかりの量だ。
「やっぱり海翔の部屋って和むなー。」
「人の部屋で和むな。ベッドに寝転がりながら漫画を読むな。勉強をしに来た筈だろう。」
「あー、はいはい。そうでしたね。」
「で、今日は何をカンニングしにきたんだ?」
「カンニングではなくカンニングの仕方を教わりにきたんだっ! ……ではなく、普通に……えっとね、社会がもう、全くもって意味不なのと、数学の今日やっていたところの解説を願いたい。」
おっと、ちょっと本音がでちった☆
ただ、何気なく漫画読んで、勉強して、ちょっとした会話を交わすだけでもね、海翔と一緒なら楽しくてしょうがないんだよ。
まぁ、そんな乙女な台詞なんてウチにはありえないけど。ってか、漫画は1人で読んだ方が楽しいけど。
あ、ちなみにウチにも海翔にもお互いの恋愛的フラグは立ってないはず。
「はぁーっ。やっと宿題終わった~!」
「実際やったのなんて10分程度だけどな。」
「……。それじゃ、今日もお世話になりました! ば~い!」
「ん。じゃーな。」
そう挨拶を交わして、ウチは自分の家に戻った。それから、夕食を食べたり風呂入ったりと、色々終わらせた。
今日は、さっき昼寝したばっかりなはずなのに、やたら眠い。まだ、9時なのに。
「よっし! マンガでも読むか!!」
そんな、平凡な日。
――――まさか、次の日にあんな事件が起こるとも知らずに……