番外編クリスマスの過ごし方 伊縁・真由美編 (2/4)
一人でいたほうが楽でいい
それがボクの考え方だった。
仲間なんて作っても友達なんてできても信じるだけ無駄だから
何でも一人で考え、一人で悩み、一人で何でも背負ってきた。
でも、それが間違いだってことを知った。
ううん、教えてもらった。
彼はボクと同じ
小柄なボクと比べて背が高かったけど
学年もひとつ下だし、性格も大分違うけど・・・・・それでも彼はボクと同じだった。
どこが?と聞かれても答えられない。
言葉にできないような、そんなところだった。
学校で会うたびに話しをして、携帯の番号だって交換した。
他の人とだって話しはするけど、彼と話している時間、その時間は本当に楽しい。
短くても、つまらなくても、彼と話していることがうれしかった。
困った時は相談に乗ってくれるし、悲しいときは慰めてくれる。
何よりも楽しい時に一緒に笑ってくれた。
久しぶりに誰かと一緒にい対と思った。
一人は嫌だと、そう思えた。
毎年、誰もいない自分の家で過ごすクリスマス
でも、今年は一人でいることが寂しい
気がつくと彼に電話をかけていた。
彼が出るのをじっと待つ
コールが2、3回くらいなったあと彼が電話に出た。
『もしもし?』
彼・・・・青山伊縁の声が聞こえる。
少し、緊張してきた。
「もしもし、伊縁?」
『どうしたんです・・・・・真由美先輩』
伊縁の言葉に少しムッとする。
「もー先輩はやめてって言ってるじゃん。ボクとの約束忘れちゃったの?」
ボクが伊縁と同じだってことを知った日の約束
忘れてほしくない
「忘れてませんよ」
その言葉が嘘なんて思わない。
ちゃんと覚えてくれてるって信じてるから
『でも、いきなり呼び捨ては無理ですって』
「むー今は許すけどすぐに慣れてよね」
先輩をつけられるとそれだけで距離を置かれてる気がするから
距離を置かれるのは嫌だから
「はいはい」
そんな、あきれた風に言わなくてもいいじゃん!
『で、こんな日に初めて電話とはどうしたんですか?』
いきなり話を戻されて少しあわてる。
「こ、こんな日って・・・・まあ・・・その・・・・今日ってクリスマスだし・・・・」
言うと決めていたことを言い出せない。
「でね、ボク、困ってるんだ」
そんなのただの言い訳だけど
でも、困ってるのは本当
『彼氏さんのプレゼ』
「違う違う!」
伊縁の言葉をあわてて否定する。
彼氏なんかいない
ずっと一人で過ごしてきたんだから
『じゃあ、何に困ってるんです?僕ができることなら何でもやりますよ』
何でも
そんな言われたのは初めてかもしれない
やっぱり、やさしいな伊縁は
「・・・・・その・・・せっかくのクリスマスだし・・・・誰かと過ごしたいなって・・・」
最後のほうで声が小さくなったけど
内容、ちゃんと伝わったかな・
『え?それはどういう?』
やっぱり、聞こえてなかったか
今度はちゃんと伝えなきゃ
『だ、だから・・・・よかったら一緒にクリスマス過ごしてくれないかなって』
自分の言葉に伊縁が驚いたのが電話越しでもわかった。
そうだよね・・・いきなり言われても
『いいですよ』
「へ?」
自分の望んでいた答えだったが、あまりにも自然に言われた為
彼がなんと言ったのか理解が遅れた
『先輩が困っているときは助ける。それも約束ですから』
約束
伊縁の言葉に驚きながらもその言葉だけはしっかりと理解していた。
そうだったね。これも約束だった。
二人が会って最初にした約束
自分に彼を期待させた。これも大切な約束
『集合場所はどこにします?』
「・・・・商店街の前の公園」
混乱したままの頭で思いついたことを話していく
『時間は?』
「・・・・・一時間後くらいでいい?」
『もちろんです』
そういう伊縁ははしゃいでいるような気がしたが気のせいだろう
「・・・・じゃあ・・・それで・・・」
『了解です。楽しみにしてますね』
楽しみにしているか・・・・ほんとに楽しみだな
「・・・・・・うん」
『それじゃあ一時間後』
「・・・・・うん」
電話を切る
毎年の恒例だった一人のクリスマスじゃない
今までは気にしていなかったけど誰かと過ごせる
それがうれしい
時間はまだまだあるけど時間があっても無くても関係ない
ボクは鼻歌を歌いながら出かける準備を始めた。
一人でいるのは確かに楽かも知れない
でも、一人でいるのは寂しい
そんな当たり前のことをボクは教えてもらったんだ。
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