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青春謳歌  作者: 人知らず
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番外編クリスマスの過ごし方 紳・鈴編 (2/2)

「黒田先輩!開けてください!まだ終わってない仕事があるんですって!!」


生徒会室の扉を叩きながら叫んでいるのは生徒会長の竹本紳

全校集会で「生徒諸君!」とか言っていたが普段はいたって普通である。

なお、今の状況は三年の生徒会書紀である黒田圭に生徒会室から追い出されてしまっている。


「クソッ!鍵まで閉めて何のつもりだよあのマスコットは!」


マスコットとは当然圭のことだ


「・・・・紳・・・怒ってる?」


廊下に座ったまま不安げにそういうのは生徒会副会長であり紳の幼馴染の白波鈴だ。

彼女の場合は普段は男勝りなところがあり荒々しいが紳の前では普通の女の子に戻ってしまう

こんなところから二人は学校公認のカップルといわれている。

紳は否定しているようだが


「何でお前に怒らなきゃいけないんだよ」


「だって・・・帰ろうとか言ったし・・・・」


「あれは先輩が言うから仕方なくだろ?結局悪いのはあのマスコットなんだよ」


「・・・・ごめん」


「だからなんでお前が謝るんだよ」


「・・・・・ごめん」


このままでは同じことの繰り返しであることを悟った紳は無言で生徒会室から歩き出す。


「どこ行くの?」


鈴が座ったままたずねる

紳からはちょうど上目遣いのようになる。


「職員室・・・鍵もらってくる」


鈴から顔をそらしながら呟く

鈴からは見えていなかったがそのときの紳の顔はほんのり赤く染まっていた。


「わたしも行く」


そう言って鈴は紳にぴったりと寄り添ったまま一緒に歩いていく

なお、鈴は紳と二人の時は一人称があたしからわたしになる。

本人曰く癖だそうだ


「腕を組むな」


「だめ?誰もいないから」


「誰かと会うかもしれないだろ?」


「・・・それならそれでいい」


「はぁ?何言ってんだよ」


このときの鈴は腕を組んでいることがうれしかった。

何と言われようとはずすつもりはなかった。

紳も口では否定しながらも腕を組んだままにしていることから嫌ではないのだろう

ちなみに同時刻に生徒会室では圭がブラックな空気を出していた。

二人はそんなことを知る由もない


しばらく歩くと前のほうから教頭が歩いてくるのが見えた。

急いで腕をはずすと二人は何事もなかったように歩き出す。

すれ違いざまに教頭が話しかけてきた。


「竹本、生徒会の仕事ははかどってるか?」


「・・・まあ・・・はい」


「そうか?ならいいんだが・・・お前も大変だろう」


「いえ、そんなことありませんよ」


「はは、お前はほんとにまじめだな、それに引き換え・・・・・」


教頭は紳から鈴へ目線を変える。

その目には見下しているように見えた。


「白波、お前は何だ?その服装といい態度といいそんなのでよく副会長が務まるな?」


「・・・・・」


教頭と鈴の仲が悪いのは前からだ

ただし、最近では鈴が言い返すことがなくなり一方的なものになっていた。


「他の会員はちゃんと仕事をしているのにやってないのはお前だけだぞ?恥ずかしくないのか?」


「・・・・・・」


「言い返せないのか?ん?」


鈴は言い返さずにいたが拳を固めて震えていたし瞳にはうっすら涙がたまっていた。


「ちょっと、教頭先生」


紳が冷静に止めに入るが


「竹本もこんなクズといるとダメになるぞ?」


という教頭の言葉に紳は冷静さを失いかける。


「大体、お前は勉強はできんし問題は起こすしとりえは運動だけじゃないかそんなのでこの先やっていけると思っているのか?」


「・・・・・」


そんなことを言われても鈴は我慢して言い返さない

ただたまっていた涙がこぼれ一筋の線になる。

それを見て紳の中で冷静さが完全にとんだ。


「教頭先生」


「ん?どうしグゥェ!!」


その瞬間、鈴は目の前で起こっていることがわからなかった。

教頭が倒れて紳が拳を前に出した状態で固まってる。

そこから考えられるのはただ一つ


紳が教頭を殴った?


生徒会長の紳が?

教頭を殴った?

何で?


「し、紳・・・?」


「あ、やばいなこれ」


さも今気づいたように言う紳


「うわーこれやっぱ停学とかなるのかな?」


一方の教頭は完全に伸びていた。


「もしもーし、教頭センセー生きてますか?」


当然のことながら答えがあるはずもない


「やばいな、とりあえず保健室連れて行くか。鈴、手伝ってくれ」


「何で・・・」


「ん?」


「何で教頭殴ったの?退学になるかもしれないんだよ?」


生徒会長とはいえ一人の生徒であることに代わりはない教頭を殴ったのだからただでは済まないだろう


「いや、俺の場合日ごろの行いがいいからそれはないだろ」


なんでもないように明るく言う目の前の幼馴染

それが眩しく見えた。

紳のそんなところに憧れた。


だから好きになった。


そんなことを考えていたがやっぱり今の行動の説明がつかない


「だからって何で殴ったの?」


教頭は鈴のことを悪く言っていたのだ。

紳のことはむしろ褒めていた。

なのに紳は教頭を殴った。

これではまるで


「何でってそりゃ・・・・お前が泣いてたからだよ」


「え・・・?」


いつの間にかうつむいていた顔を上げて紳の顔を見ると紳は笑っていた。


「だから、お前が泣いてたから・・・お前を泣かしたから教頭を殴った。それだけだ」


「それだけって・・・・」


鈴の顔は少し赤くなっていた。


「それだけで何で殴るの?わたしはクズなんだよ?ダメなやつなんだよ?それなのに」


「お前はクズなんかじゃないさ」


「・・・・」


「俺はクズなんか好きにならない」


「ッ!!!!」


鈴は耳まで真っ赤になってうつむいた。

今、紳はなんと言っただろう

クズは好きにならない?

お前はクズなんかじゃない?

・・・・つまり


「何度も言わせんなよ・・・俺だって恥ずかしいんだから」


たぶん紳の顔も赤くなってるんだろうな


「・・・・・ねぇ」


「・・・・何だよ」


「・・・・好き?」


「・・・何が」


「・・・・・・・・わたしは好きだよ・・・・紳のこと」


それは告白というには程遠かったが紳に伝えた本当の気持ちだった。


「・・・・・何言ってんだよ」


「・・・・・・」


そうだよね

紳はわたしがいたって困るだろうしさっきのもきっと何かの間違い


「俺達は学校公認のカップルなんだろ?」


その言葉の意味は


「・・・・俺もだよ・・・・俺も鈴が好き」


「ッ!!!」


その言葉を聞いた瞬間鈴の瞳から涙があふれた。

さっきのような悔し涙じゃなくてうれし涙だ。


「うぅぅぅぅ」


「何だ?また泣いてんのか?」


「だ・・・だってぇぇぇ」


「やっぱ、お前は昔から変わんないな」


「しぃん!!!」


鈴が紳に抱きつく

そして、紳は優しく鈴の頭を撫でてやる

昔から変わらないことだった。


「・・・・これからどうする?」


「・・・・・一緒に帰りたい」


「いつも一緒に帰ってるだろうが」


「・・・・それでも帰りたい」


「・・・・はぁ・・・まあ仕事はまた今度やればいいか」


紳はそういって立ち上がり泣き止んでいた鈴も立ち上がる。


「帰りにどっかよって行くか?」


「うん!」


そういう鈴はいつもどおりの鈴に戻っていた。


「駄菓子屋にするか・・・・いや、アイスもいいかも」


「紳!」


「ん?」


紳が振り向くと目の前に目をつぶった鈴の顔があってそして・・・・二人の唇が重なった。


「ッ!!!」


紳はいきなりのことに唖然としていた


「・・・・ありがとね・・・あと・・・・これからもよろしくね」


「・・・・お、おう」


二人とも顔は真っ赤になっていた。

ちなみにはじめてのキスはちょっぴりしょっぱかった。
















なお、その後教頭は伸びている間に生徒からわいろをもらっていたことがわかり紳に処分を下す前にクビになった。

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