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青春謳歌  作者: 人知らず
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番外編クリスマスの過ごし方 勇樹・秋編

クリスマス

ほとんどの人はその日を静かに過ごす

それは龍と恐れられる坂元勇樹も例外ではない

商店街の真ん中にある大きなツリーの前で彼はある人と待ち合わせをしている

冷えた手に息をかけて暖めながらもじっと待つ

勇樹が何気なく顔を上げると遠くから走ってくる人影が見えた

待ち合わせの相手である秋だ


「ごめん、待ったか?」


「別に俺も今来たとこだけど?」


「そうか?ならいいけどさ」


嘘だ。実際は15分ほど前から待っていた

本当のことを言わないのは男の意地だ


「どこ行く?」


「どこでもいいさ」


秋ははっきり言って服装がダサい

今回だって明らかに大きすぎるマフラーやよくわからないような柄の服を着ている

だからといって一緒に歩いていて嫌になることはない

昔からの仲だけに慣れてしまっているのだろう


「こんなのに慣れても仕方ないけどな」


「ん?今何か言った?」


「別に何にも言ってねぇよ」


秋が不思議そうにしているのを見てふと思う

こいつ彼氏とかいないのか?

毎年、俺と二人で過ごしてるけど、彼氏とかいたらそいつと過ごすもんじゃないのか?

そう思いつつも幼馴染がいつまでも変わらないことに安心感のようなものを覚える

それでも気になり歩きながら聞いてみる


「なあ、お前って彼氏とかいないのか?」


「!!!」


なに驚いてんだ?こいつ


「い、いるわけないだろ!だ、だ、大体お前こそ彼女とかいないのかよ!」


顔を赤くしてそういう秋は明らかに動揺している


「俺?ないない、告白されたことならあるけどさ」


「そ、そっか」


「お前どうした?顔赤いぜ?」


「き、き、気のせいだろ!そんなことより早く行こうぜ!」


今度は勇樹が不思議そうにする

この男はどれだけ鈍感なのだろう

周りからは完全にカップルだと思われていることを二人は知る由もない

しばらくの間、学校であったことなんかを話したりしていたが不意に勇樹が疑問に思ったことを口にする


「なぁ」


「なんだよ」


「俺たちどこ向かってんの?」


「知るか!」


「知るかって・・・・お前なぁ」


大きくため息をつく

二人が歩いている商店街は円形につながっている

どこにも寄らずに歩き続ければ当然


「・・・・戻ってきたな」


「・・・そうだな」


最初にいたクリスマスツリーにたどり着く


「ツリーの下にベンチあったからそこ座ろうぜ」


「おう!」


二人がベンチの所まで行くとそこにいたのは


「おい、あれ龍の勇樹じゃね?」


「マジで?おお彼女連れじゃん!」


クリスマスのムードがまったくないヤンキー達がたむろっていた

勇樹は冷静に数を数えそして・・・


「秋、目閉じてろ」


「何で」


「いいから!」


「わ、わかったよ」


言われたとおりに目を閉じると当たり前のことだが何も見えなくなる

不安になるがちょっとドキドキしたりもする


「俺がいいって言うまで閉じとけよ」


「うん」


いつの間にか男言葉ではなくなっているが秋は気づかない


「さてと・・・・・ショータイム!!」


ベキッ!!

ガスッ!!

ゴキッ!!


何にも聞いてない、悲鳴も聞いてない


「・・・・・もういいぜ」


目を開けるとベンチにいたはずのヤンキー達がいなくなっていた


「・・・・・勇樹」


「ん?」


「なにした?」


ベンチの下くらいになんか赤いのがついてる気が・・・・


「別になにもしてないけど?」


「・・・・・・」


「いいから座ろうぜ」


「う、うん」


あたしがベンチに座るとベンチの冷たさが感じられる

勇樹は立ったまんまだ。


「す、座れば?」


「いいって」


「そう?」


勇樹と一緒にいると何かどドキドキしてくる

これが何なのかわからないけど

今、勇樹と一緒にいられる時間がすごく楽しいし、うれしい

これって何なのかな?

考えていると頬に温かいものが当たった


「ほい、コーヒー」


勇樹が買ってきてくれたらしい


「・・・ありがと」


「お!お前がお礼言うなんて珍しいな」


「じゃあ、雪でも降るんじゃない?」


「そうかもな」


勇樹が楽しげに笑う

その姿を見てまたドキドキする


「にしてもひまだな」


そういうと勇樹は音楽プレイヤーと取り出して聴きはじめる

自分にも何かないか探すが携帯くらいしかない

それを見てか勇樹がイヤホンを片方差し出してくる


「いいの?」


「いいから」


イヤホンを耳に入れると流れていたのは

円のバンドの曲だった

「この歌いいよね」というつもりで横を向くとすぐ隣に勇樹の顔があった。


「ッ!!」


思わず顔を背ける

たぶん顔がまた赤くなっているだろうな

などと思いながらまたドキドキしてくる

当の勇樹はそんな秋の様子に気づいていない


「寒くなってきたな」


「・・・・・」


「どうかしたか?」


「寒いんだったら・・・・マフラー使う?」


「いいよ、それじゃあお前が寒いだろ?」


「ならこうすればいいよ」


マフラーが大きかったため二人で一緒に巻くことができた

でも、二人の間はかなり近い

秋はドキドキが止まらない

勇樹はというとまったく気にしていないようだ

それでも何か話そうと秋は勇樹のほうへ顔を向ける

と同時に勇樹も顔を秋に向ける

タイミングが合い過ぎたことと二人が近かったこともあって二人の唇が・・・・・触れた


「「ッ!!!!」」


これにはさすがの勇樹も顔を赤くして顔を背けた

秋にいたっては放心状態になっている

本気ではなかったとしても結果そうなってしまったのは仕方ない

どちらも無言で顔を背けあっていた

不意に勇樹が口を開く


「・・・・秋」


「・・・なに?」


「・・・・・メリークリスマス」


「・・・・メリークリスマス」


いつの間にか雪が降り始めていた








そっか、あたしは勇樹が好きなのかもしれない

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