頂上まで道路建設って…
「おいおい、エミ・クーシ山、山頂まで道路建設って正気か?」うさちゃん国で何やら大騒ぎだ。
「まあ、そうだよね。普通はこんな場所にわざわざ道路を作ろうなんて考える奴はいないよねぇ」と男性の一人が言う。
「まあでも仕方がないだろ?だってヒミコ様が住み始めたんだもん。だったら行かなきゃダメでしょ?」と別な男性も諦めたような口調で言う。
「あーあ、工事はいいんだが今度は女がいねーんだろ?楽しくねえじゃん」別の男性がつまらなそうな表情をして言った。
「確かにな。でも、今回も女がいねえなんてことはないだろう。きっと何とかなるさ」
「そうそう!きっと大丈夫だよ!」
彼らはこれから始まるであろう苦労に備えて士気を高めていた。
だが士気はあんまり上がらないだろうと見越して玉兎はある秘策を用意することにした。
道路工事の現場でのテレビ中継だ。中継する番組は四女神連邦で行われている野球中継だ。しかもアバターなしの生中継だ。
この事を話した途端、さっきまでの沈鬱とした空気から一変し、歓喜の渦が起きたのだ。
「それ、本当ですか?」
「おー!本当に生中継できるんですね!」
「マジかよ!」
「お前ら!!絶対にやり遂げるぞ!!」
「「「「おー!!」」」」
こうして男たちの熱き戦いが始まったのである!
そして今回の工事については来るものを拒まず…と言いたいところだが肉体労働が苦手な体力のない男性だけは外されることとなった。
逆の言い方だと力になりそうな応募者はすべて採用したと言っていい。
彼らの目的は野球を見る、女性と仲良くなる、この二つだ。あとは金にありつくことぐらいだろう。
こうして三ヶ月が過ぎたころ、工事は最終局面に入っていた。
あと5キロ程でゴールだ。
「うぉぉぉぉおおおおお!!!!!!」
男性陣は気合を入れていた。
「おい!あと少しだ!気合入れて行くぞ!」
「おー!」
こうして彼らの努力の結果、ついに道路は完成したのであった。完成の報を受けた玉兎はさっそくヒミコに連絡した。
「ヒミコ様。道路が完成しましたので早速開通式を行いたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
ヒミコは電話越しに尋ねる。
「うん、いいけど……」
すると、すぐに電話を切り、車を用意させるとそのままエミ・クーシ山を降り始めたのだ。
山を降り始めるとすぐにオフロードカーに乗った玉兎が追い抜いて行きながら手を振ってくる。
それを横目に見つつ、ヒミコは車を走らせた。
数十分後、無事に山を下りきることができた。
そして、そのまま国道に入ると玉兎も並走しながら付いてきた。
そして、そのまま道なりに進んでいくと開通式の会場に辿り着いた。
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「やっと着きましたね!」と玉兎は笑顔で言った。
「ええ、まあね」
ヒミコは愛想のない返事をしながら車を停めた。
「(こいつ…本当に道路通しやがった…まいったね)」と内心思っていたからだ。道路の先には既に多くの人々が集まっていた。
「ヒミコ様の為に有志の男性のみで工事をしたようですよ」と玉兎は説明する。
「(この馬鹿は本当に……)」とヒミコは呆れながら思ったが、
「まあいいわ。とりあえず開通式を始めるわよ」と言い、そのままイベントの準備を始めるのであった。
そして数時間後、開通式が始まった。
「はい!それではこれより開通式を行います!まずはヒミコ様から挨拶があります。ヒミコ様、お願いします」と玉兎が呼びかけると、ステージの中央にヒミコが立った。
「えっと、今回はこのように盛大なイベントを開いてくださってありがとうございます。
そして、これだけの人数でここまでやってきて頂き本当に感謝しています」
ヒミコは深く頭を下げた。
「しかし、ここまでやるとは本当に予想外でした。
でもこれだけ多くの人が集まってくれたのでとても嬉しいです」
ヒミコは笑顔を浮かべて答える。
「皆様のご協力に感謝しつつもこれからも頑張って行きたいと思います。それでは開通式を始めさせて頂きます!」
「高山に住むって本当に女神様らしくなられたので私は感激です!」と玉兎は泣き崩れそうになりながら喋った。
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その後、ヒミコの嫌な予感は的中し等身大フィギアが並びお守りを売る店が出始め、山の頂上という事もあり景色も最高だったのでお土産屋などが増え始めた。さらにはキャンプ場も出来始めて観光地として賑わいだした。
ヒミコは絶望していた。自分の住まいがどんどん荒らされていく……
いや、もっと正確に言えばヒミコが住んでいるのは山頂付近にある神殿のような建物なので直接被害は被っていないが……
「ねぇ、どうしてこんなことになっているの?私はただ静かに暮らしたいだけなのに……」
ヒミコは涙目になりながら嘆く。
「仕方がないですよ。皆さんはヒミコ様の事を慕っていますから、こうやってお参りに来てくれるんですよ」と玉兎は優しく慰める。
「そんなの知らないわよ。とにかくここは私だけの場所にするから勝手に入ってこないようにしてよね!」
ヒミコは怒りを露わにして言った。
「いや、それは難しいかと……」と玉兎は冷静にツッコミを入れる。
「どうして?私はここで暮らしたいの。その為なら多少の犠牲はしょうがないの」
ヒミコは必死に訴えるが玉兎は首を縦に振ることはなかった。
「ヒミコ様、貴方はもう立派な女神様なんですよ。皆があなたを求めているのです。それなのにこんな僻地に引き籠っていてはいけませんよ」と諭すように言う。
「何言ってんの!全部あんたのせいじゃない!」
ヒミコは逆ギレし始めた。
「あー、そう言えば……私がこのあたりに来た頃に偶然にも温泉が湧いてましたねぇ」と玉兎はニヤッと笑いながら言った。
「温泉があったらなに?」
ヒミコは怪訝そうな顔をする。
「温泉でもっとお客を呼べますね」と玉兎は自信満々に答える。
「あー、もうどうなっても知らないから!」
ヒミコは諦めたのか肩を落として歩いていった。
そしてそのまま階段を上ってどこかへ行ってしまった。
「(ふぅ、危なかった)」玉兎はほっと胸を撫で下ろす。
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だが、玉兎の計算違いだったのは、温泉が非常に良いものでそれを求めて世界各国から人が訪れるようになってしまい観光地化してしまったことだ。
それが原因でここがヒミコ様の住居であると広がり、観光客は減ることなく増え続けていった。
「またこれでヒミコ様に嫌味を言われてしまうわね…」
と玉兎は苦笑する。
ヒミコ様が静かに暮らせるようになればと思い開発を続けた結果、ここは一大観光地として賑わうようになったのであった。
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「やれやれ、せっかく逃げてきたのにまた騒がしくなっちゃったわ」とヒミコは溜息を吐く。
「あはは、すみません。でもこれは全てヒミコ様のせいでもありますからね」
「えっ!?どういうこと?」
ヒミコは驚いた表情で聞き返す。
「だって、あの温泉がなければこんな事にはなっていませんでしたよ。それに温泉があるってことはヒミコ様が気に入った証拠ですし」
玉兎は得意気に言う。
「ちがうわよ!あれは偶然出ただけで……」
「でもヒミコ様の加護があったからこそ素晴らしい温泉が湧いたんですよね?そう信じておりますよ」
「そ、それは……そうかもしれないけど」
「でしょう?ですからヒミコ様も諦めてくださいね」
玉兎は笑顔で言うが、その笑顔からは有無を言わせぬ圧力を感じた。
「はぁ……わかったわよ」
結局、ヒミコは何も反論できずに折れてしまったのだった。




